ボルボS40 2.4i(5AT)/S40 T5(5AT)【海外試乗記】
人気者の予感 2004.01.31 試乗記 ボルボS40 2.4i(5AT)/S40 T5(5AT) フォードグループ内でのコンポーネンツ共用化が本格的にすすんだ、ボルボの新型「S40」。「マツダ・アクセラ」と基本骨格を同じくする、ボルボの末っ子はどうなのか? 自動車ジャーナリストの河村康彦が、スペインはマラガで乗った。ルックスで商売できる
「フォードCマックス」(及び次期フォーカス)、そして「マツダ・アクセラ」と基本骨格を共有するという、フォード・グループ内でのコラボレーション効果を最大限に活用したことで話題なのが、ボルボの末っ子セダン「S40」。従来型は、三菱自動車とオランダ政府との3社合弁による、オランダ工場で生産されてきたが、フルモデルチェンジを受けた今度のモデルは、ボルボ純正(?)のベルギー工場で生産される。ちなみに、ベルギー工場での今後の年間生産台数は、ニューS40の年間7万台を含め、およそ27万台をもくろむという。北欧スウェーデンの作品として知られるボルボ車だが、いまやその最大の生産拠点はベルギーに移っているのだ。
装いを新たにしたS40のルックスは、ご覧のように兄貴分「S80」や「S60」と共通のイメージをもつ。かつてのボルボ車は、安全イメージの高さと、煉瓦ばりのボクシーなデザインが売り物だった。が、時代は変わったのだ。S80が出た時には、あまりのイメージチェンジぶりに反発の声も大きかった。その後、V70やS60、そしてこのS40と、新しいイメージの定着を図ってきた成果が、実を結んだように思える。“煉瓦ルック”と訣別した新世代ボルボのイメージは、完全に世のなかに定着したといってよいだろう。継続は力なり、である。
フォード・グループ内の“PAG”(プレミアオートモーティブグループ)の一員として、このところプレミアム・メーカーとしての道を強く模索するボルボ。一方、“プレミアム”を標榜するメーカーが生み出す作品としては、これまでのS40のスタイリングは、どうにも“押し”が弱い感じが否めなかった。
けれども、フルモデルチェンジによって生まれ変わったS40は、「ルックスだけでも商売できるクルマになった」とぼくは思う。むしろ、前述の兄貴分よりもさらに個性的で、存在感が強くなった感じさえする。前後のオーバーハングを切り詰め、アーチ型のルーフ形状をより強調することによるデフォルメのお陰ではないだろうか。
典型的なスカンジナビアン・デザイン
インテリアも、なみいるライバルに負けじと頑張る。そのハイライトは有機的に湾曲し、背後を大胆にも空洞化して両サイドからアクセス可能な収納スペースとした、北欧製の椅子を連想させるセンターパネル部のデザインだ。ボルボが「フリーフローティング・センターコンソール」と呼ぶこのセンターパネル、「アーネ・ヤコブセンのプレスモールド・チェアや、アルヴァ・アアルトの家具など、典型的なスカンジナビアン・デザインの伝統の影響を受けた」と、担当デザイナーのガイ・ヴァーゴン氏は語る。このあたりも、ボルボがプレミアム・メーカーとしての地位を確固たるものとしたいという、意識の表われだろう。
そんなS40の国際試乗会は、スペインはマラガ近郊をベースに開催された。
冬なお温暖であることから、ヨーロッパの多くの自動車メーカーがイベントに用いるこの地。そこはテストされるクルマにとって、なかなかの試練の場でもある。海岸沿いからちょっと内陸部に入れば、起伏に富んだタイトなワインディングロードが数多く点在。しかも多くの場合、その路面は滑らかとはいいがたいのだ。S40イベント用のルートマップも、まさにそうしたコースを指し示すものだった。
刺激的な「T5」、マイルドな「2.4i」
そんなタフなコースでまず感じさせられたのは、ボディの剛性感がこれまでとは比較にならないほどに高いことだ。
新型S40の開発にあたっては、まず「S80と同等のクラッシュセーフティ・レベルを達成する」という目標が掲げられたという。全長が4468mmのS40でそれを達成するには、当然、綿密な計算に基づいたボディ設計が必要。前述の印象は、そうしたボルボらしいクルマづくりが生み出した、ひとつの結果といえる。ちなみにねじり剛性値は、従来型比で68%の向上を見たという。
動力性能は、最高出力220psのターボ付き直列5気筒エンジンを搭載した「T5」のそれがなかなか刺激的。ただし、同じく170psの自然吸気エンジンを積む「2.4i」でも、不足はまったく感じない。いずれもアイシンAW製の5段ATと組み合わされるが、そのシフトプログラムも違和感を抱かずに済むものだ。
フットワークの印象だが、やはり「T5」は多少硬い。不快というほどではないが、205/50サイズの17インチシューズは、特に低速域で路面の凹凸を素直に伝えてくる。一方、「2.4i」はそのあたりが多少マイルドな印象。とはいえ、ピッチモーションを封じ込めた高速時のフラット感や、直進性の高さは「T5」と同様だった。
1770mmという、従来型比50mmプラスの全幅が、日本のせせこましい都市部で乗るには、ちょっとばかりネックになりそうな新型S40。だが、4人の大人に十分な室内空間とトランクスペースを備えた実用性の高さ、新世代の“ボルボネス”を強く連想させるデザイン。日本でも人気者になりそうな予感がする。
(文=河村康彦/写真=ボルボカーズジャパン/2004年1月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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