ボルボS40 ノルディックスペシャル&V40 ノルディックスペシャル(5AT)【試乗記】
円熟味の成せる技 2002.09.07 試乗記 ボルボS40 ノルディックスペシャル&V40 ノルディックスペシャル(5AT)……353.5万円/368.5万円 ボルボのエントリーモデル「40シリーズ」の2003年モデルが、2002年7月11日からわが国に導入された。アメリカ空軍と航空自衛隊の基地がある、青森県は三沢市を基点に開かれたプレス向け試乗会で、上級グレード「NORDIC Special」にwebCG記者が乗った。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
■2003年モデルの概要
「ボルボ2003年モデルのなかで、最初に40シリーズが導入されたから」というワケで開かれたプレス向け試乗会は、青森県三沢市を基点に行われた。折しも三沢空港に併設される、米軍&航空自衛隊の三沢基地のお祭りが開かれる時期。空港上空ではショー向けの「展示飛行」の練習をする米空軍のF-16戦闘機が、爆音轟かせながら飛び交っていた。
ボルボのエントリーモデル「40シリーズ」の世界デビューは1995年。オランダにある、三菱、オランダ政府との合弁会社(当時)にて生産される。いうまでもなく、セダンが「S40」、ワゴンは「V40」である。
日本への導入は、1997年から始まった。2001年には1500点以上の改良を受けるなど進化を続け、誕生から7年目に突入した成熟モデルである。購入者の約8割が他メーカー、さらにその半分以上が国産車からの乗り換えだというから、ボルボへお客様を誘導する重要なポジションのクルマでもあるのだ。特にワゴンのV40は、ボルボブランドで第2位の販売台数を誇り、他社からの乗り換えが最も多い車種。45歳以下の若い(?)ユーザーや、女性ユーザーの多さが特徴である。
2003年モデルの40シリーズは、セダン、ワゴンとも従来通り、2リッターNA(136ps、19.4kgm)を積むベーシックグレードと、「ノルディックスペシャル」というサブネームを持つ、2リッター低圧ターボ(163ps、24.5kgm)を積む上級グレードの2種類。価格は、ベーシックモデルのS40が295.0万円、V40は310.0万円。ノルディックスペシャルは、S40が330.0万円、V40は345.0万円だ。本国には1.6リッターNA(109ps)や1.8リッターNA(122ps)も設定されるが、日本には輸入されない。
試乗車は、セダン、ワゴンとも、2リッターライトプレッシャーターボを搭載する、売れ筋の「ノルディックスペシャル」。ボディのリア右側に、北欧=スカンジナビア半島を意味する「NORDIC」の文字が光る。テスト車は、パッケージオプション「ラグジュアリーパッケージ」(NORDIC専用)と「ファミリーパッケージ」を装着する。ラグジュアリーパッケージは、本革シートや電動ガラスサンルーフ、助手席パワーシート、16インチアルミホイールをセットにして20.0万円。単品合計で約70.0万円という金額を聞くと、お買い得感が高い。
■戦闘機の爆音を聞きながら
2003年型の昨年からの変更点は、ごく少ない。外観では、フロントグリルを黒塗りの格子模様に変更。トランクゲートスイッチをメッキにしたほか、ワゴンのリアスポイラー(NORDICのみ装着)形状を、やや大型の新デザインとした。インテリアは、メーターデザインを上級モデルと同じ4連ダイヤルメーターの採用、つまり水温系と燃料系を左右にわけたことや、3本スポークステアリングホイールの装着などである。
クルマの走行性能に関わる、唯一ともいえる変更点は、リアショックアブソーバーの上部マウントを一新したこと。ラバーサポートの厚みが増し、静粛性や快適性が向上したという。「変わったのはこれだけ?」ではなく、これだけしか手を入れるところがないくらい、でき上がった代物なのだろう。ボルボも「円熟の完成度を味わっていただきたい」といっていたし。
2日間にわたって開催されたプレス向け試乗会の初日は、三沢空港から下北半島の首のあたりに位置するむつ市まで、約80kmあまりのドライブ。V40ノルディックスペシャルに乗って、頭上に戦闘機の爆音を聞きつつ、その夜泊まるむつ市内のホテルを目指す。
2リッター低圧ターボは過給が早いので、低回転域からトルクが豊か。1500rpmあたりからチカラを発揮してくれるので、一般道ではアクセルペダルにそっと足を乗せる程度で十分だ。100km/h巡航を2200rpmでこなし、静粛性が高いこともウレシイ。
フルスケールまわすと5段ATは6000rpmでシフトアップ。スポーティとは感じなかったが、なかなかの俊足ぶりを発揮する。追い越しなどでヤキモキすることはないはずだ。3500rpm以上ではノイジーだが、そこまでエンジンを使うケースはあまりない。ホワンとした乗り心地のおかげか、飛ばす気にもならないのがボルボっぽい。ちなみに、テスト走行のほとんどは、3000rpm以下ですんでしまった。
■75%はワゴンだけれど
一夜開けて2日目、今度はセダンに乗って、下北半島右上の尻屋崎を目指した。絶壁の上に灯台が建ち、まわりは緑の草花に囲まれた、ボルボのスタッフが「撮影にピッタリ」と勧める場所だ。
セダンはワゴンより車重が20kg軽い。特にワゴンとの差を感じることはなかったが、上り坂だろうが撮影機材を積んでいようが、シレっとクルージングをこなす。
シフトゲートに関しては、上位機種「S60」のターボモデルはシーケンシャルモードを持つが、40シリーズはNA、ターボを問わず、すべてストレートゲート。しかし、不満はない。「シーケンシャルモードがあれば」という気が起きない。ボルボっぽいトコロだ。そもそも「D」レンジの完成度が高く、低圧ターボによる低回転クルージングでは、ちょっとイジワルに神経をギアチェンジに集中していないと、いつシフトしたのかわからない。スムーズである。
ホテルを出発してからしばらくは、緩いアップダウンのある真っ直ぐな道を走る。岸辺にアシ(だと思う)が生い茂る田名部川や、トウモロコシを生け垣にした広大な牧草地を眺めつつのドライブを、コンパクトさに似合わぬ、ドッシリと落ち着いた直進安定性がサポートしてくれる。さらに進んだ山道で、連続したカーブでの切り返しでは、セダンの方がワゴンよりピタっときまる、と思った。ボディ形状と剛性を考えると、当たり前かもしれないが……。
40シリーズのうち、75%を占めるのはワゴンである。やはりいまでも「ボルボといえばエステート」のイメージが強いようだ。しかし、セダンも捨てたモノではない。両モデルとも、乗員を緊張させたり、ドライバーをむやみに煽ることがない。安心して乗っていられる“ボルボらしさ”に満ちている。このへんが、40シリーズの“円熟味”が成せる技なのかもしれない。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2002年9月)

大澤 俊博
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。









