ボルボC30 2.0e パワーシフト(FF/6AT)/V50 2.0e パワーシフト(FF/6AT)【試乗速報】
安くなっても高級車 2009.02.20 試乗記 ボルボC30 2.0e パワーシフト(FF/6AT)/V50 2.0e パワーシフト(FF/6AT)……279.0万円/299.0万円
ボルボのコンパクトな3モデルに、新たなエンジンとトランスミッションを得た「2.0e パワーシフト」が登場。300万円を切るエントリーグレードの実力や、いかに?
ボルボも2ペダルMT化
ボルボはC30/S40/V50シリーズに新ラインナップを加え、思い切った戦略を打ち出した。
(1)2リッター4気筒エンジンと2ペダル式の6段MT「パワーシフト」の組み合わせをそれぞれに用意
(2)3モデルとも、エントリーグレードの価格を300万円以下に設定
というのが、そのポイントだ。
そもそもボルボは、わが国で高価格なクルマというイメージもある。日本市場では5気筒モデルが下限で、本国に存在する4気筒2リッターのモデルは販売されていない。ATとの組み合わせが無かったからである。今回ゲトラク社との共同開発でオートマ走行ができる「パワーシフト」が組み合わされた。これはフォルクスワーゲンのDSGやポルシェのPDKのような、ツインクラッチ式の油圧作動シーケンシャルシフトという、最新にして流行の形式だ。
この手のギアボックスは、パワーの流れが途切れないことから、スポーティなクルマ専用というイメージがあるが、チューンの仕方によっては普通の実用車にこそ最適といえる。もっとシンプルなフィアット系のデュアロジックや、ルノーのクイックシフトのように、単に従来のクラッチ動作を油圧化しただけのものは、変速のたびに船の櫓を漕ぐがごとく加速に波を生じてしまうが、コチラは2つのクラッチと3軸の歯車の組み合わせで、前のギアを断つと同時に次のギアへ繋いでしまうから、パワーの流れが途切れない。滑らかな変速が可能だ。
またトルクコンバーター式のATと違って、スリップによるパワーロスがない。アクセルペダルを踏んでもエンジン回転とダイレクトに繋がっていないズルズルした間接感があるATに比べ、はるかに精度の高さを感じさせる、しっとりした高級感あふれる走行感覚を提供してくれる。燃費効率の点で有利なのも美点である。
旨味あるダウンサイジング
4気筒エンジンは、確かに排気量なりのパワーでしかないが、145psはこれまでの2.4リッター5気筒よりも5ps大きくチューンされている。このノーズの軽さは得難いものだし、6段に細分化されたギアボックスにより、ステップアップ比も小さくなって、よりきめ細かいパワーの使い方ができる。
なお、パドルシフトは付かない。ステアリングホイールのまわりでチャカチャカやるのも面白かろうが、今回のモデルにはさして重要な機能ではないと判断されたようだ。フロアのレバーでのアップダウンは可能ながら、それもレスポンスよりも滑らかで落ちついた感触、そして耐久性なども考慮した実用本位のチューンとなっている。パワー不足のような感覚は皆無だ。
さて、ユニークな5気筒は特有の微振動があったが、4気筒は比較的ゆったりしたのどかな感覚でアイドルし、いっぽうで吹け上がりは軽いがゆえに、かえってシャープな印象を受ける。エンジン音が静かに感じられるのは、今までのATはトルコンのストール時の音が大きく、しかも実際の速度とは無関係にエンジンが過回転で発進していたため。ブンブン回っていても動きがともなわないから余計やかましく思えた。
今回、音の高まりが素直に速度変化に結びついたため、おしとやかに感じられるところもあるだろう。スーッとリニアに慎ましく加速するマナーには、高級感さえ感じられる。
一方では、きっちり上まで回して次のギアへアップしても、グンッと段差のある繋がりはなく、そのままグイグイ速度を上げてくれるから、まるで同じギアを継続するような力強さもある。減速時には、もちろん左足でブレーキを踏んでも、フォルクスワーゲンのようにエンジンが失速することはないから、リズミカルでスムーズな加減速が繰り返せる。
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オススメは「C30」
車体側はデザインの変更もなく、これまで通りでアルミホイールもそのまま、タイヤは205/55R16を6.5Jに履く。
ワゴンのV50で1430kgと、車両重量は軽めにおさまっている。エンジンとギアボックスで約40kgの軽量化を果たし、前輪荷重は850kg。ノーズの重さが軽減された恩恵は、コーナーでのアンダーステアが軽くなったことで体感できる。
サスペンションもそのままだから、軽量化はダンピングを強化したような印象もあり、姿勢変化の少ないフラットで快適な乗り心地を提供してくれる。ことさらスポーティな仕様ではないけれども、スポーティなドライビングにも耐えるところがボルボの素性の素晴らしさでもある。
C30/S40/V50のラインナップ三兄弟のうち、売れ筋はV50かもしれないが、注目したいのはC30だ。幅は同じだから室内の広々とした感覚は他2モデルのままに、全長の短さは軽快なフットワークにも通じる。駐車スペースを選ばず、身軽な振る舞いができるのだから、シティコミューターとしても最適だ。
ガラスハッチはちょっとした買い物にも便利。さらにフル4シーターとしてのリアシートも実用につかえ、老若男女を問わず新感覚のアシ車として、生活をリフレッシュしてくれて……数えだしたらキリがない。
そんなC30が279万円。新しいエントリーグレードは、大いに魅力的といわざるをえない。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
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