トヨタ・アベンシス セダンLi(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アベンシス セダンLi(4AT) 2003.11.12 試乗記 ……275.0万円 総合評価……★★★★ 2003年10月6日に発売された欧州製トヨタ車「アベンシス」。英国から、2リッターのセダンとワゴンが入れられる。「ビスタ/ビスタアルデオ」に替わる輸入モデルに、『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。
|
中堅は助っ人
「アベンシス」とは、つまり欧州版「コロナ/カリーナ」である。いつの間にか「アベンシス」なる名前になっていて、知らないうちに彼の地で2代目に進化していて、このたび、わが国に紹介されることになった。名実ともミニバンに主役の座を譲ったニッポンのセダン/ワゴン市場、縮小一方のマーケットに投入された海外からの助っ人。ヨーロッパでの好調な滑り出しを伝え聞くと、“強力”の枕詞もつけたくなる。
「予想以上によくできたので、ぜひ日本のお客さまにも乗ってほしい」と、開発陣は胸を張る。そこでニューモデルを叩いてみれば、ドメスティックな「ビスタ/ビスタアルデオ」をフルモデルチェンジするよりも……と、ソロバンを弾く音が聞こえた、ような気が。アベンシス、英国生まれだけど。
いざステアリングホイールを握って走り始めれば、「やっぱりクルマはセダンが正調」との意識が抜けきれない守旧派を驚喜(狂喜には至らない)させるデキのよさ。「走る」「止まる」「曲がる」なんてカビくさい3要素を口にしてホメたい感じ。セダンがミニバンに歩み寄る日本市場と、まだまだセダンが力をもつマーケットの違い、といったら大袈裟に過ぎましょうか。
アベンシスは、「アリスト」「ヴェロッサ」と「ラウム」「ファンカーゴ」の間を埋める国際派。輸入車にして、フォルクスワーゲンよりも、オペルよりも、プジョーよりも安いのがポイント。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アベンシスは、英国TMUK(Toyota Motor Manufacturing UK)で生産される英国車。「アベンシス」の名を使ったモデルとしては2代目になる。2003年10月6日に、日本国内でのデビューを果たした。セダンとワゴンが用意され、わが国では、いずれも「2リッター+4AT」モデルが販売される。FF(前輪駆動)ほか、ビスカスカプリングを用いた「Vフレックスフルタイム4WD」モデルもカタログに載る。
(グレード概要)
アベンシスは、セダン、ワゴンとも、ベーシックな「Xi」と、装備を充実した「Li」に大別される。Liは、室内のトリムレベルが上がるほか、ひとまわりスポーティな「215/45R17」のタイヤを履き、「ブレーキアシスト」「VSC」「カーテンエアバッグ」などを標準で装備する。Xiに、カーテンエアバッグのオプション設定はない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
そこはかとなく“廉価版フォルクスワーゲン”といった趣のあるインパネまわり。テスト車の「Li」は上級グレードで、室内をブラックと濃い茶、シルバーで渋めにキメる。全体に、シンプルにそつなくまとめられた。質感の価格対効果は高い。
装備は充実。「オプティトロンメーター」「クルーズコントロール」「オーディオコントロール用スイッチ付きステアリングホイール」「左右独立式オートエアコン」、さらに「Li」では、DVDナビゲーションシステムまで標準で付いてくる!
(前席)……★★★★
シートは「Li」「Xi」ともファブリックとなるが、表皮柄で差別化される。シート形状は、一部の欧州車のように長めの座面が印象的だ。とはいえ、あたりが柔らかく、クッションも優しいのが、剛健な民族系ドイツ車との違い。クルマの性格からか、ホールド性はあまり重視されない。背もたれの角度を、ラチェット式のレバーで自在に決められるのが新しい。運転席側のみ、やはりレバーでシート全体の上下を調整することができる。
(後席)……★★★★
ちょっと驚く広い後席。やや低めの着座位置ながら、姿勢よく座ることができる。膝前、肩まわり、頭上空間とも文句ない。センターシートにも3点式シートベルト、ヘッドレストが備わり、身長170cmくらいまでの乗員なら、真ん中でも実用に耐えよう。左右乗員の体格が、大幅に横に広くないかぎり。
アームレストを引き出すと、先端に2人分のカップホルダーが備わる。トンネルコンソール後端に、12Vの電源ソケットあり。アベンシスのリアシートは、Liのみ、6:4の分割可倒式となる。
(荷室)……★★★★
ラゲッジ容量520リッター(VDA方式)と、このクラスにして十二分の広さを誇る。トランクリッドを支えるヒンジの通り道には樹脂製のカバーが用意され、積んだ荷物との干渉を防ぐ配慮がなされる。床面最大幅は152cm。ただ、ホイールハウスが張り出すので、実際に有効な幅は120cmほどか。奥行き114cm。高さは50cm。両脇には、モノ入れがある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
欧州市場では1.6、1.8、それにディーゼルターボもラインナップされるが、日本に入るのは「2リッター直4+4段AT」仕様のみ。実はコレ、日本で生産される「ウィッシュ」のパワーパックである。“ガイシャ”を一販売チャネルに加えるにあたり、パーツ、アフターサービスに関する不安を払拭したかったのだろう。
可変バルブタイミング機構を備えた2リッター直噴エンジンは、おとなしく街乗りをするぶんには、静かで、過不足ないアウトプットを発生する。フルスケール回しても、劇的なサウンドが弾けたり、パワーがほとばしることはないけれど、黒子に徹して、黙々と働く。「平成12年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆)」をパスし、「2010年燃費基準」を先行して達成した。
トランスミッションはシーケンシャルシフトも可能だが、通常「D」、すこし機敏に走りたいときは「S」モードにシフターを入れておけば、不満を感じることはない。4段で十分。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
欧州仕様をそのまま入れたアベンシスの足まわりは、総じて硬め。しかし、峠を飛ばしていると、そこはかとなく感じる“トヨタ車的軟体感”。ハッキリした「ハンドリング」と、突き上げの角を丸める「乗り心地」の妥協点が、同社の場合、ココなのだろう。
カーブでのロールは少なく、“曲がり”の連続もシッカリこなす。すぐに顎を出す“旦那セダン”からの脱却は果たしたが、ステアリングホイールを操作していて、ことさら楽しいというわけではない。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年10月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:557km
タイヤ:(前)215/45R17 87W(後)同じ(いずれもDunlop SP Sport3000)
オプション装備:−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):山岳路(5)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。