【スペック】全長×全幅×全高=4100×1695×1670mm/ホイールベース=2700mm/車重=1220kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブ(110ps/6000rpm、14.4kgm/4400rpm)/車両本体価格=149.0万円(テスト車=186.1万円)

トヨタ・シエンタX(FF/CVT)【ブリーフテスト】

トヨタ・シエンタX(FF/CVT) 2003.10.21 試乗記 阪 和明 ……186.1万円 総合評価……★★★ 主にヤングファミリーに向けた、トヨタの新型ミニ・ミニバン「シエンタ」は、4.1mのコンパクトボディに、3列シート7人乗りを実現したことがウリ。しかし、ベーシックなXグレードに試乗した『Car Graphic』編集局長の阪和明は、サードシートにこだわるあまり犠牲になった部分もあるという。


あまり欲張っては……

子供のいるヤングファミリー層がターゲット、という小型ミニバンのシエンタ。丸いヘッドライトと横長のグリルで構成される顔つき、ボディ全体のカタチからして、ファニーな印象が強い。それだけに若い女性、ヤングミセスに好まれそうなクルマである。
セリングポイントのひとつである、シートアレンジはよく考えられている。省力化が図られ、スペースユーティリティも高い。しかし、かぎられたサイズのボディで7人乗りに仕立てようとしたあまり、快適性がそがれた部分もある。本当の意味での快適性を求めるなら、3列目シートにこだわる必要はないのではないか、と思った。あまり欲張ってはいけないのである。



【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
2003年9月にデビューした、3列シート7人乗りのミニ・ミニバン。日産「キューブ キュービック」やホンダ「モビリオ」の対抗車種である。エンジンは、1.5リッター直4DOHCのみ。トランスミッションは、FFがCVT、4WDには4段ATが組み合わされる。「片手でポン!」をキーワードに、簡単操作を追求したシートアレンジや、両側スライドドアなどがセリングポイントだ。
(グレード概要)
グレードは、ベーシックな「X」と、上級「G」の2種類に大別され、Xグレードに一部装備を省いた廉価版「Eパッケージ」が用意される。XとGの違いは、パワースライドドアや前席アームレストの有無など。

写真をクリックすると、シートアレンジが見られます。

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写真をクリックすると、サードシートの折り畳みが見られます。

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写真をクリックすると、シートアレンジが見られます。

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【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★
いかにもプラスチック然とした質感のインストルメントパネルだが、ポップで遊び心のあるデザインに救われて、安っぽく感じないから不思議だ。コンパクトな実用車はヘタに背伸びなんかせず、分相応がいいという見本である。丸っこい、女性受けしそうなスイッチや、ダイヤル類の操作性も悪くない。
実用車とはいえ、装備は必要にして充分どころか、かなりの充実ぶりである。運転席/助手席エアバッグ、ABS等々、安全面は当然のこと。パワースライドドア(助手席側)をはじめとする、快適装備には事欠かない。
テスト車は、光軸調整機能付きディスチャージヘッドランプ、サイドエアバッグ、セカンドシートセンターヘッドレスト+盗難防止システム、G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション+音声ガイダンス機能付きバックガイドモニターと、総額31万1000円のオプションが組み込まれていた。
(前席)……★★★
床が低く全高があるボディなので、ドア開口部は広い。乗り降りはとても楽だ。センターメーターの視認性は上々、インパネから生えるATセレクターの位置も良好である。
ファブリック地のシートは可もなく不可もなく、このクラスのクルマの標準といったところか。ドライビングポジションはやや高めで視界はよい。ヘッドクリアランスは充分すぎるほど、たっぷりとられて圧迫感とは無縁だ。ただし、Aピラーが太めなため、着座位置によっては斜め左前方視界を遮られることがあった。
小物入れの場所と数に不満はない。インパネ中央の下側には、本来灰皿だった部分が小物入れになっており、その下に大きめの収納ボックスが備わる。左右シートのあいだには、縦に細長いトレイまでつく。ドアポケットやステアリングコラムの根元にある、3つの小さな収納スペースは、アクセスしやすいので重宝した。
(2列目シート)……★★★
日常での使い勝手向上を目指したクルマだけのことはあり、2列目シートには工夫が凝らされている。3列目へアクセスしやすいよう、シート肩のレバーワンアクションで前方へスライドし、クッションが同時に畳まれるので便利だ。子供を抱いたママが、片手でも容易に操作できるように配慮されたのだが、誰が使うにもありがたい機構である。座面を跳ね上げたまま後方にもスライドさせられるので、前席とのあいだに折り畳んだベビーカーを立てて置くことも可能。
ただし、シートバックのリクライニングはやりづらい。座った状態で角度を変えるためのレバーは、シートをワンタッチで前後させるレバーと共通なのだ。どう考えても人間工学的に無理がある。加えて、クッションにそれほど厚みがないから、快適性は前席より劣る。3人並んで座れることになってはいるものの、中央に座らされた人からは、不満の声が聞こえそうだ。あくまで、ここは短時間座る場所以外のなにものでもない。
(3列目シート)……★★
全長4100mmのコンパクトなボディに、左右独立したサードシートを備えることが、シエンタの売りのひとつだ。足元には必要なだけのスペース、天井までの空間もある。たしかにオトナでも、物理的に座れるだけの空間が確保されており、この点は大いに感心できる。だが、3列目を2列目シート下側にすっぽり収納できるようにしたことで、シートは全体に小ぶりで、クッションは驚くほど薄い。長時間座る気分にはならない。すくなくとも快適とはいえない。
(荷室)……★★★
3列目シートを利用した場合の荷室は、ミニマムというかかなり狭い。このクルマで荷室をそれらしく使うには、サードシートを畳む必要がある。そうすれば、かなり広い。嵩の大きな荷物を運ぶにも、まったく困らないはずである。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★
車重が1210kgもあるため、1.5リッター4気筒エンジンはけっしてパワフルに感じない。けれど、低速域で充分なトルクがあり、日常使うには問題のない力の持ち主だ。CVTとのマッチングもよく、鈍重な感覚は皆無だった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
きわめてソフトな乗り心地である。ハーシュネスは軽微で、街なかでの使用はじつに快適だ。ただ、ひとつ気になったのがタイヤのパターンノイズが大きいこと。ざらついた路面ではかなり耳障りだった。パワートレーンからのノイズや、風切り音がうまく抑え込まれているだけに残念だ。
やわらかい設定のサスペンションであるにもかかわらず、操縦性はミニバンとしては合格点だろう。高速道路のジャンクションにあるような中速コーナーにおいても、それほどペースを落とさず安心して走れる。もっとも、いうまでもなく、ワインディングロードで楽しむクルマとはいえないから、無理は禁物である。

(写真=清水健太)



【テストデータ】

報告者:阪和明(CG編集局長)
テスト日:2003年10月6日〜7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1067km
タイヤ:(前)175/70R14 84S(後)同じ(いずれもトーヨー J36)
オプション装備:ディスチャージヘッドランプ(4.5万円)/SRSサイドエアバッグ+セカンドシートセンターヘッドレスト+盗難防止システム(4.0万円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション+音声ガイダンス機能付きバックガイドモニター(28.6万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:538.3km
使用燃料:41.8リッター
参考燃費:12.9リッター

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