トヨタ・プリウスSツーリングセレクション(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プリウスSツーリングセレクション(CVT) 2003.10.19 試乗記 ……267.8万円 総合評価……★★★★★ 2代目になって、順当に大きく、スタイリッシュに育った「トヨタ・プリウス」。ハイブリッドカーの本格普及を目指す野心作に、『webCG』記者が乗った。
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忍び寄る未来
ひとまわり大きく、わかりやすく“カッコいい”ボディをまとって登場した2代目プリウス。初代のような「革命的な斬新さ」はないけれど、ハイブリッドシステムを洗練させる一方、「加速性能」「室内空間」「搭載能力」それぞれをバランスよくステップアップして、ハイブリッド車の本格普及を目指す。
楕円形のステアリングホイールを握って走り始めれば、“純”内燃機関モデル、つまり“普通のクルマ”と比較しての違和感は大幅に減じた。というより、ハイブリッドカーのドライブフィールの「新しい基準をつくった」といえる。ニュープリウスを運転して、ときに感じる“違和感”が、むしろ今後のスタンダードになるのかもしれない。
注目ポイントは数あれど、出色の装置は「EV」モード。バッテリーに余裕があるかぎり、エンジンを回さずにモーターだけでプリウスを動かすことができる。一見、単なる“おもしろ装置”、オーナーを喜ばすギミックと思われるが、実際に使ってみると、これほどプリウスの近未来性を実感させるものはない。早朝の車庫出し、深夜の車庫入れでも近所の住民に迷惑をかけないで済む。不思議なことに、商店街などの人混みでもEVモードで走っていると、歩行者への心理的インパクトが少ない、ように感じる。かつてGMの電気“アドバルーン”自動車「EV1」は、「パコッ」「パコッ」とのんきな警告音を発しながら走行したが、プリウスは、音もなく忍び寄る。こうして“トヨタの未来”は、人々の意識に刺さることなく浸透していくわけだ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」がフルモデルチェンジを受け、2003年9月1日に2代目が発売された。新型は、北米市場での本格的な普及を目指し、ボディサイズがひとまわり大きくなった。また、ラゲッジスペースを重視したため、車型は「3ボックス」から「ハッチバック」に。
パワートレインは、1.5リッター直4エンジン(77ps)と68ps相当の出力を得る電気モーターを組み合わせ、巧妙な動力分配装置によって、駆動力を前輪(と発電機)に伝える。改良された新世代トヨタ・ハイブリッドシステム「THS-II」の恩恵で、リッター当たりのカタログ燃費はなんと「35.5km」! 効率のよさのみならず、モーター出力を上げ、2リッター車なみの動力性能を獲得したこともジマンだ。
(グレード概要)
プリウスは、ベーシックな「S」と、ちょっと贅沢な「G」に分かれる。乱れた挙動を安定させる「S−VSC」「クルーズコントロール」「スマートエントリー&スタート」の有無が、両者の主な違い。ステアリングホイールは、Sが「ウレタン」、Gが「本革」である。
スポーティに装いたい向きには、「S」「G」ともに「ツーリングセレクション」が用意される。タイヤサイズはひとまわり大きな「195/55」の16インチとなり、専用「ユーロチューンドサスペンション」が奢られる。また、アンダーカバー、リアスポイラーといった空力パーツが付与されるほか、ヘッドランプが「ディスチャージ式」になり、「フロントフォグランプ」が追加される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ショーモデルのモックアップをそのまま実現したかのインストゥルメントパネル。デザインのみならず、「メタル調パネル」「トランスルーセントな黒いプラスチック」「ごく滑らかな梨地仕上げを採る樹脂」と、素材にも工夫が凝らされ、ことさら声高に主張することなく、未来を表現することに成功した。家電のようなスターターボタン(もちろんレーシィな演出ではない)、小さく奇抜な電制ATシフターとセットになったボタン式パーキングポジシションが新しい。
惜しむらくは、センターコンソール上部の、ディスプレイまわりの処理に“冴え”が感じられないことか。画面両サイドに並ぶ「エアコン」「オーディオ」「情報(G-BOOK)」などと日本語表記されたボタンは、わかりやすく、使いやすい。タッチパネル式のナビゲーションシステム(23.0万円のオプション)は初心者向けでありがたいが、ディスプレイに指の跡が残るのが気になるヒトがいるかも。
ステアリングホイールには、電話、オーディオ、エアコン類のボタンが装備される。ドアポケット、トンネルコンソールには大きなフタ付きのモノ入れと2人分のカップホルダー、オーディオの下に薄いモノ置き、そしてインパネ左側には上下別々のフタを備えたクローブボックスと、モノ入れは十分に用意される。
(前席)……★★★
2代目プリウスには、グレーとベージュ(アイボリー)2種類のインテリアカラーが用意される。どちらもシート地はスウェード調のファブリックとなる。
シートは、ほどほど余裕のサイズがとられ、あたりが柔らかく、平凡な形状のわりに座り心地はいい。ドライバーズシートにのみ、レバー式のハイトコントロールが備わる。テーブル式インストゥルメントパネルのおかげで、左右席間の移動は楽だ。
(後席)……★★★
座面がやや短く、着座位置は低めだが、大人用として実用的なリアシート。空気抵抗を減ずる流麗なルーフラインのせいで、ヘッドクリアランスが犠牲になったのは残念。長身の乗員だと、頭上が窮屈だろう。センターシートにも、しっかり伸びるヘッドレストと3点式シートベルトが備わるので、比較的小柄な人ならシートとして使用することができる。
ISOFIX対応チャイルドシート用アンカーおよび、北米市場を睨んでのチャイルドシート用テザーアンカーが、シート背面に設けられる。
(荷室)……★★★
新型プリウスの戦略的重要事項が、ラゲッジスペースの拡大。先代ではキャビンとトランクの間に立っていたバッテリーが、ニューモデルでは床下に収められた。ハッチゲイトを開けると、大きな開口部の下に460リッターの荷室が広がる。先代比70リッター増し。
床面最大幅は145cmだが、すぐにホイールハウスが左右から膨らむので、実際の実用幅は94cm。パーセルシェルフまでの高さは35cmと、少々物足りない。たくさん積むときは、カバーを巻き取って、ガラスハッチまで使えということか。
奥行きは90cmだが、分割可倒式のリアシートを倒せば、170cm前後の長尺モノも搭載できる。フロア下には、深さ14cmのかなり大きな収納スペースあり。なお、「ツーリングセレクション」はスペアタイヤを積まず、パンク修理剤でこれに代える。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ニュープリウス動力系の改良を乱暴にまとめると、「モーターの出力アップ」に尽きる。新型は、(たいてい)モーターのみで力強く発進し、あとを追って1.5リッターユニットが始動、速度域によって相互に補完しあう。動力の受け渡しはみごとでスムーズ。エンジン単体のパワーソースに慣れた身には、依然として不思議な加速感であるが、今後、ハイブリッドカーの“電気自動車率”は上がる一方だろう。意外に速い。速度域にかかわらずプリウスは全体に静かだから、車内で音楽を聴くのが好きなヒトにはうれしい。
減速の際にモーターを発電機として働かせてエネルギーを回収する「回生ブレーキ」は、フィールが一般のクルマに近づいたが、それでも停車直前に制動力が二次曲線的に立ち上がるので、カックンと止まりがち。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
“省エネターゲット”のイメージを避けるためか、ブリヂストンのポテンザを履く足まわり。街乗りでは路面への当たりが硬く、舗装が悪いと、鋭い入力を許すことがある。
とはいえ、基本的にフラットな乗り心地で、特に高速道路では電車のようなドライブフィールを楽しめる。ハンドリングは、いまひとつ曲がりにくく、電動パワステのフィールもデッドだが、プリウスの「ファン・トゥ・ドライブ」は、暑苦しい内燃機関オンリーのクルマとは別のところにある。近未来の乗り物を手にしたヨロコビ。トヨタ開発陣の意向とは合致しないが、プリウスを、ことさら従来型自動車と同列に論ずる必要はないと思う。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:webCGアオキ
テスト日:2003年10月9-10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:4209km
タイヤ:(前)195/55R16 87W/(後)同じ(いずれもブリヂストン Potenza RE050)
オプション装備:SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(6.0万円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付EMV+インテリジェントパーキングアシスト(23.0万円)/6連奏CDチェンジャー+MD/AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオ(4.8万円)/ホワイトパールクリスタルシャイン(3.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:120.3km
使用燃料:6.8リッター
参考燃費:18.0km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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