日産・キューブキュービックEX(CVT)/キューブキュービックSX(4AT)【試乗記】
熱い市場の尖兵 2003.09.27 試乗記 日産・キューブキュービックEX(CVT)/キューブキュービックSX(4AT) ……182.4万円/154.3万円 「マーチ」ベースのハイトワゴン「キューブ」に、3列シートを備えるミニミニバン「キューブ³」(キュービック)が追加された。神奈川県は横浜で開かれたプレス向け試乗会で、『webCG』記者が乗った。実車はどこ?
パっと見て新型とわかったら、かなりのマニア……だと思う。リポーターは、リアドアの「cube³」エンブレムを見ないと区別できなかった。2003年9月3日に発表された「cube³」(キューブ・キュービック)は、2列シートキューブのホイールベースを170mm延長し、3列シートを備える。20代の団塊ジュニアをターゲットにするノーマル(?)に対し、キュービックは、小さなお子さんをもつヤングファミリーを想定してつくられた。トヨタ「スパシオ」(と、間もなくデビューするニューミニ・ミニバン)ホンダ「モビリオ」などがライバルだ。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=3900×1670×1645mmと、ノーマルより170mm長く、5mm高い。延長されたのはホイールベースで、2600mmと中小型セダン並になった。グレードは、ベーシックな「SX」と上級「EX」の2種類。エンジンはキューブと同じ、1.4リッター直4を搭載する。それぞれに、4段ATと、ステアリングスイッチでシフトできる、6段MTモード付き「エクストロニックCVT」仕様を設定。駆動方式はすべてFF(前輪駆動)で、価格はいずれも2列版の15.0万高。SXが154.3万円、EX164.0万円となる。モーターで後輪をオンデマンド駆動する「e・4WD」仕様は、現在開発中だという。
「(キュービックを)取締役に見せたら、クルマが目の前にあるのに『実車はどこにあるんだ?』って」
笑いながら説明するのは、02年10月にフルモデルチェンジした2代目からキューブの開発に携わる、商品企画本部の國見真志さん。モビリオと「モビリオ・スパイク」のようにイメージを変える案もあったというが、2列シートキューブの販売台数、1万台/月(平均)は、兄貴分の「マーチ」(約7000台/月)を超えている。角を丸めた四角いボディ、部屋のようなインテリアのコンセプトとキャラクターがウケた結果と考えれば、3列モデルをつくるにあたり、あえてデザインを変える必要はない。そう判断された。
もっとも、キューブのデザインについては、
「デビュー前は、デザインが受け入れられるかどうか不安でした。ご好評いただいてホっとしてます」
気苦労も、あったようです。
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近所のファミレスまで
キューブのデザインを殺さず延ばすほうが「苦労したかも」と語るのは、プロダクトチーフデザイナーの秋山芳久さん。
「キューブは、真上から見るとボディサイドが微妙にふくらんだタル型。リアドア部を170mm延ばすだけでは、デザインがおかしくなってしまう。リアドア前端からDピラーまで、同じ曲面で構成する必要がありました」
2列モデルと同じに見えるキュービックだが、リアドアとC、Dピラー間のボディパネル、つまりボディ後半のパネルを一新し、長いボディを完成させた。ほかに、格子型フロントグリルを横桟型にして幅広感を出し、全長と見た目のバランスを図るなど、細かい工夫が施されている。
“部屋のようなインテリア”もノーマルを踏襲するが、ファミリーカーの要素が強まったぶん、ドアトリムをクロス地に変更して暖かみを演出した。従来型ではオプションのオーディオを標準装備するなど、ちょっと豪華に仕立てられる。
新型のキモは、なんといってもサードシート。簡単に引き出せる操作性を追求し、荷室床のヒモを引っ張ると、シートバックに座面が連動して持ち上がり、シートがあらわれる。たたむときも同じ要領。操作は片手でできるから、ラクチンだ。
「フクザツなシートアレンジは、結局、使われないことが多い。キュービックの3列目は、近所に住むおじいちゃん、おばあちゃんと、30分圏内のファミレスに行くような使い方を想定しています」(國見さん)
全長3.9mのコンパクトボディと、回転半径4.7mの取りまわしがウリでもあるキュービックのサードシートは、ある程度、割り切ってつくられたということだ。176cmのリポーターが座ると、座面と床面の高さが近く、膝を抱え込むようになる。
でも、一家(一族?)が合法的に7人乗れるのはメリット。収納時は、奥行き約1mの広い荷室が使えるのも便利だし、セカンドシートをフルフラットにすれば、約150cmにまで拡大できる。
フィットに勝てたら……
まず、EXのCVT仕様に乗った。運転席からの視界は、バックミラーに映るリアウィンドウが心なし遠いこと以外は変わりなく、ボンネット前端が目に入るので、相変わらず見切がよい。撮影のため赴いた狭い路地の入り組む横浜・元町もスイスイ走れる。約100kgの車重増加により、キビキビとはいかないものの、回転数を引っ張りぎみに、かつ早めにキックダウンする、中低速重視のトランスミッション制御によって、イラつくようなことはなかった。
次に試乗した4AT仕様も不満はないが、CVTの方が、シフトは当然なめらか。7人乗車や広い荷室に荷物を載せれば、4ATは頻繁にキックダウンすることだろう。ミニミニバンのキュービックには、効率のいいCVTが合っているのではないかと思った。
重くなった恩恵として、乗り心地がユッタリしたことが挙げられる。コイルを硬めに、スタビライザー径を太くしてロールを抑えるセッティングが施されたが、カメラマンとの二人乗車でも(つまり軽くても)バンプでリアが跳ねたり、ゴツゴツした感触もない。15.0万円高で便利&快適なキュービックが、キューブと食い合いになったりしないのかが、心配……。
「最近のお客様は、いる、いらないの区別がハッキリしています。コンパクトカーで15.0万円は大きいですし」
8月〜9月半ばまでの販売台数をうかがったところ、キューブが約1万台。先行予約を含め、キュービックは5千台を超え、9月イッパイではシリーズ合計2万台近くに達するという。
「フィットに勝てたら……」(秋山さん)
のセリフも飛び出すほど、キューブに勢いをつけたキュービック。近々、トヨタが同クラスの新型を投入するともウワサされるホットな市場の、尖兵であることは間違いない。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2003年9月)

大澤 俊博
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