ホンダ・MDXエクスクルーシブ(5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・MDXエクスクルーシブ(5AT) 2003.05.16 試乗記 ……485.0万円 総合評価……★★★
|
“オールラウンダー”
日本ではブームが落ち着いたものの、北米やヨーロッパでは依然盛り上がりを見せているSUV市場。なかでも、ラクシュリーSUVカテゴリーは、ポルシェ「カイエン」やフォルクスワーゲン「トゥアレグ」などの参入により勢いづいている。この「MDX」もそのラクシュリーSUVに分類されるモデルである。オンロードでの快適性が重視される一方、乗用車ベースのSUV以上にオフロード走破性も求められる、まさに“オールラウンダー”カテゴリーである。
その点、MDXは乗用車並みの快適性と日常の使用にこと足りる走破性を備えているのだが、肝心の豪華さや高級感がいまひとつというのが、試乗後の正直な感想である。また、ウリのひとつである3列シートもあくまで“プラス2”という存在。かといって、5人乗りとして使うには、日本では大きすぎる。もちろん、それを撥ねのけるような強いアピールがあればいいわけだから、なろうことなら、その気にさせる演出を考えてほしい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年2月にデビューした、3列シートをもつ7人乗りの大型SUV。カナダはオンタリオ州アリストンにある「Honda of Canada Manufacturing」で生産される。北米ではホンダの高級販売チャネル「アキュラ」の名を冠し、先行発売された。日本へは、初年度1700台のみ“輸入”される。
コンセプトは、あらゆる路面状況での高いコントロール性能と、上質なゆとりと快適性をあわせもつ“プレミアムSUV”。北米生まれのミニバン「ラグレイト」をベースとしたボディは、全長×全幅×全高=4790×1955×1820mm、ホイールベース2700mm。心臓部は3.5リッターV6 SOHCで、形式は「J35A」とラグレイトと同じながら、可変吸気システムの採用などにより、20psと2.2kgmそれぞれアップ。260ps/5800rpmの最高出力と35.2kgm/3500rpmの最大トルクを発生する。トランスミッションは、5段ATのみ。駆動方式は、新開発の電子制御可変トルク配分4WD「VTM-4」(バリアブル・トルク・マネージメント4WDシステム)を備える。電子制御可変トルクツインクラッチ機構が、センターLSDとリアLSD機能を兼ね備え、前後トルク配分を100:0(前輪駆動)から50:50まで無段階に制御する。
(グレード概要)
日本に導入されるMDXは、「エクスクルーシブ」のみのモノグレード。シートは本革、左右独立式のデュアルエアコンやバックモニター付きDVDナビゲーションシステムナビゲーションシステムを標準装備。後席用に、液晶モニターとコードレスヘッドフォンを備えるなど、ラクシャリーSUVらしく装備は充実する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
独立3連メーターやセンターパネルなど、シンプルで見やすいデザインは乗用車的だ。本格オフローダーと違って、副変速機のレバーなどがないのも、すっきりとした印象に一役買っている。ただ、485.0万円のクルマとしての高級感不足は否めない。“高級SUV”を声高に謳うのであれば、せめてパネルぐらいは本物のウッドを使ってほしいと思う。
(前席)……★★★
モノグレードのMDXには、標準でメモリー付本革パワーシートが装着される。アメリカンSUVらしく、シートのサイズはたっぷりだ。ただ、小柄な日本人には座面がすこし長いかもしれない。モノコック構造を採用したおかげでフロアや着座ポイントがそれほど高くなく、乗り降りが苦にならないのはうれしい。大型のセンターコンソールやドリンクホルダーなど、運転席まわりの収納スペースは充実している。
(後席)……★★★
2列目3名、3列目2名のシート構成がウリのMDX。全長4790mm、ホイールベース2700mmという余裕のサイズのおかげで、2列目は足元も頭上も大人がゆったり座れるスペースが確保される。一方の3列目は、大人でも天井に頭があたることはないが、膝を抱えるように座らなくてはならず、あくまでプラス2と考えたほうがよさそうだ。
(荷室)……★★★★
3列目を起こした状態でも、奥行40cmほどのスペースが確保される荷室は、3列目を床下に収納することで110cm、さらに2列目を倒せば190cmという巨大な空間に変身する。実際には“ふだんは2列シートで”という使い方が多いだろうから、大人4人がたくさんの荷物を持って移動する場面でも、困ることはめったにないはずだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
3.5リッターV6SOHCエンジンは、クルマの性格にあわせた低中速重視のセッティング。常用域のトルクは2トンの巨体を加速させるに十分なもので、5段オートマチックとの相性もよく、一般道、高速道路のいずれでも物足りなさを感じることはない。5速、100km/h走行時のエンジン回転数は1800rpmと低く、静粛性も優れる。フルタイム4WDシステム「VTM-4」は、平常時には前輪にほぼすべてのトルクを配分し、路面や走行状況よってその配分を変更するタイプだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
オンロードでの性能を重視していると見えて、身のこなしにSUV臭さはなく、どちらかといえば硬めの乗り心地を示す。高速走行時もSUVとしてはフラットな印象。首都高速の目地段差では、235/65R17のオールシーズンタイヤがドタバタするが、それでも直接的なショックが伝わることはない。ワインディングロードでも、ロールそのものは大きいものの、安定感があるので、ふつうのペースで走るかぎり不安はない。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年3月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2203km
タイヤ:(前)235/65R17 104S(後)同じ(いずれもミシュランCross Terrain)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:290.7km
使用燃料:46.3リッター
参考燃費:6.3km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。


