ルノー・ラグナ5ドアV6(5AT) 【試乗記】
大人の勝手 2003.01.24 試乗記 ルノー・ラグナ5ドアV6(5AT) ……365.0万円 日本市場において、ドイツ御三家に迫る勢いのフランス車メーカー「プジョー」を横目に、販売台数が伸び悩むかつての国営メーカー「ルノー」。ラインナップを拡充し、ライバルを追う。前衛的なミニバン「アヴァンタイム」に続いて、ハンサムなミドルサルーン「ラグナ」が投入された!5ドアとワゴン
アナタは「ルノー・ラグナ」のオーナー。買ったばかりのラグナで短いドライブ。目的地についてクルマから降りる際、ステアリングコラムの右側に手を伸ばして苦笑いする。そう、ラグナのエンジンは、「START STOP」と書かれた左側のボタンを押すと切れるのだ。エンジンを止めるとセンターコンソールからカードキーを引き出して、車外からリモコンボタンを押して、ロック。厚さわずか4mmのキーをオシリのポケットに差す瞬間、アナタはクールな自分を感じる……。
2003年1月28日から、日本での販売が始まるラグナ。2000年に受けたフルモデルチェンジを反映して、「ラグナII」と通称されるルノーのミドルサルーンは、なかなかハンサムなクルマだ。薄いグリルの上に、アルミの削り出しを思わせるガーニッシュを備え、オーソドクスながら、上手に“新しさ”を演出している。
ミニバンとの差別化のため、ことさら“スポーティ”や“ユーティリティ”を強調するセダンのリリースが相次いだ日本市場において、新しく導入されたラグナの、フォーマルな、大人のたたずまいは異彩を放つ。
とはいえ、このサルーンの車型は、実は4ドアではなく、リアにガラスハッチをもつ5ドアである。フランス車として珍しいことではないが、わが国では、いまひとつ人気がないスタイル。いまや完全にニッチブランドと化した「ルノー」の、“さらに個性を強める戦略”、というのは深読みにすぎるか。いずれにせよ、ほかでは得難い選択肢、というのは、ひとつの強みではある。
日本には、「ラグナ5ドアV6」(365.0万円)のほか、「ラグナワゴンV6」(375.0万円)もラインナップされる。いずれも右ハンドルで、両者とも2.9リッターV6にマニュアルモード付き5段ATが組み合わされる。
ほぼフル装備
テスト車は、紺の外装色に明るいグレーの革内装。エレガントな装いだ。ボディサイズは、全長×全幅×全高=4580×1790×1435mm。先代よりひとまわり大きく、「トヨタ・プレミオ/アリオン」、というか、「アウディA4」に近い大きさになった。
室内は広く、前席、後席とも十二分に実用的。インテリアやシートはそつなくまとめられ、いかにもサルーンをつくり慣れたメーカーらしい。ステアリングホイールは、チルト(上下)とテレスコピック(前後)機能を備えるので、好みのドライビングポジションを取りやすい。
日本に入るクルマはほぼフル装備なのだろう、前席は左右とも電動で調整可能。エアコンは左右独立式だ。CDプレイヤー付きのオーディオは、ステアリングコラムから右側に生えたレバーで操作できるし、クルーズコントロール、挙動の乱れを制御する電子デバイス「ESP」も装備される。センターコンソールには飛び出し式のカップホルダーがあり、運転席側の頭上右上には、サングラス入れまで備わる。
インパネ右端に、ヒトが喋っているマークが付いたボタンがあるので押してみると、「Welcom,the vehicle computer is now checking for you」と女性の声が流れた。「アナタのために」というフレーズが押しつけがましいが、それはともかく、その後、音沙汰なかったのは、問題がなかったということなのか。ちなみに、「ESP」の解除ボタンを押すと、「チャララーン!!」と心臓に悪い下降和音が響き、「ESP switched off」と告げられる。暗に「危険!」と怒られているようで、スイマセン、といった感じだ。
カッコは小洒落ても……
本国でのラインナップでは、1.6リッターからディーゼルまで用意されるラグナだが、わが国に入るのは、当面、87.0×82.6mmのボア×ストロークをもつ2.9リッターV6のみ。VVT(可変バルブタイミング機構)を備え、207ps/6000rpmの最高出力と、28.5kgm/3750rpmの最大トルクを発生する。わずか2000rpmでアウトプットの80%を得る実用ユニットで、あまり自己を主張することがない。スロットルペダルとエンジンのバタフライが電気的につながる「フライバイワイヤ」が採用され、レスポンスについてコレといった不満はないけれど、どこか“眠い”パワーソースである。シフターを前後に動かすことでギアを変えられる「プロアクティブ5段AT」が搭載されるが、マニュアルモードは必要な機能というより、カードキー同様、ひとつの付加価値にすぎない。積極的に使うオーナーは少なかろう。
前マクファーソンストラット、後トーションビームというコンベンショナルな足まわりがもたらす乗り心地はフェアなものだが、ことさらソフトでもフラットでもない。総じて、ラグナのドライブフィールは、クールなエクステリアほど印象に残るものではない。
思えば、先代のラグナもそうだった。全体に個性に欠ける、“官僚的”と形容したくなるクルマだった。「代が変わって小洒落たカッコになっても、性根は変わらなかったわけだ」と考えると、ちょっと可笑しい。
フランス人のなかにも、「ハンドリングやドライブフィールなどに拘泥しないのが大人」と考えるヒトがいるのは当然だ。ラグナの無愛想を、哲学的と取るかツマラナイと感じるか、それは第三者の勝手である。
(文=webCGアオキ/写真=CG荒川正幸/2003年1月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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