スバル・トラヴィック SLパッケージ(4AT)【試乗記】
ハードウェアとしてよくできている 2003.01.17 試乗記 スバル・トラヴィック SLパッケージ(4AT) ……246.0万円 GMアライアンスの成果のひとつ「スバル・トラヴィック」。オペル・ザフィーラのOEMモデルである7人乗りのミニバンは、ドイツ的な内外装と、スバルの手になるスポーティな足まわりを特徴とする。GMタイ工場でつくられるグローバルなモデルに、『webCG』エグゼクティブディレクターの大川悠が乗った。グレードが拡充されたトラヴィック
2001年の夏に「スバル・トラヴィック」がわが国の市場にリリースされたとき、GMの意図がやや不明瞭だった。だって基本的に同じクルマを、GM系のオペルがすでに「ザフィーラ」として売っていたのだから。ザフィーラは1.8リッター、トラヴィックは2.2リッター、前者はドイツ製で後者はGMのタイ工場製、そしてプライスタグに書かれた数字も違っていたけれど……。
それが、最近になって「ザフィーラ」の販売をうち切ったと聞いて、おぼろげながらGMの意図が見えてきた。おそらく、将来的にはGMアライアンス(スバル、スズキなど)としての作品と、純GMモデル(含むサーブ、オペル)をきちんと区別しようということだろう。
したがって、「シボレー・MW」や「同クルーズ」と成り立ちは逆だが、トラヴィックも一種のGMアライアンスの産物として、晴れて独り立ちしたといえる。これを機会に、02年10月にマイナーチェンジを受けて、ベーシックな「Cパッケージ」、よりスポーティなルックスの「Sパッケージ」、そして今回のテスト車となった豪華版「SLパッケージ」と、3つのグレードが設定された。
クルマの中は完全にドイツ
「SLパッケージ」は、16インチホイールやスポーツサスペンションをもち、ボディまわりに空力パーツを付与した「Sパッケージ」がベース。スポーツシート、クルーズコントロール、8スピーカーのプレミアムオーディオはじめ、前席サイドエアバッグ、フロントアクティブヘッドレストなど、装備充実。オプションで革内装や電動ガラスサンルーフを選択することも可能だ。価格は、246.0万円となる。
駐車場で初めて対面したとき、外観からはどこの国のクルマか判然としなかったが、車内に入った瞬間、そこに広がっているのは明らかにスバルではなくてオペルの空間だった。堅めだがクッションが厚く、しかもSLの場合、特にサイドサポートのいいシートは完全にドイツ的だ。
ダッシュボードがまたはっきりしている。文字通りのチュートニック・ワールドがそこにある。デザイン品質にこだわったことが理解できる、きちっと線や面を整合させたレイアウト。ナセル内のクリアで伝統的なロゴを使ったメーター、その横のインフォメーション・パネルなど。オペル・ザフィーラのOEM車だから、当たり前といえば当たり前だが……。
エンジンには、GMグループの代表的な4気筒が使われる。サターンに積まれてデビューした頃は、“世界最良の4シリンダー”とさえいわれたユニットで、147ps/5800rpmの最高出力と、20.7kgm/4000rpmの最大トルクを発する。実用車用として使いやすい性格で、特に中低速トルクに余裕があっていい。
マナーのいいFF車
「ノーマル」「スポーツ」「スノウ」の3モードが用意される4段ATは、ノーマルのままでもかなり積極的にシフトしてスポーティな応答性を示すと感心していたら、やっぱりアダプティブ(学習)機能が入っていた。これは、走行状態からシフトタイミングを判断するシステムである。ドライバーがせっかちであることを見抜いたらしい。さらに停止中には「D」から自動的に「N」に入って燃費と振動の低減を図る「Nコントロール機能」が搭載され、特に存在を主張することなく自然に機能する。
乗り心地は硬めだ。もともと最大7人までの乗車を計算していることもあるが、スバルのスポーティな味を意図的に加えたからでもある。とはいえ、クルマのダイナミクスには定評のある同社のことだから、ハンドリングは基本的に素直だし、開口部が広い割にはボディの剛性感も高くて、あくまでも“マナーのいいFF(前輪駆動)車”に終始する。
2列目のシートは普通の乗用車並のスペースが確保される。不要時には床下にキレイに収まるサードシートは、大人2人が使えないことはないが、長時間だと酸欠になりそうだ。
トラヴィックのようなクルマが1台あれば、いろいろ使えて重宝するだろう。ニッポン・ムードがきれいに漂白されていて、どこのクルマかわからないのも、むしろプラスに考えるべきかもしれない。タイ製であることは、現代の生産方式、技術の下では何のハンディにもならないし、今のパソコンがドコ製かわからないように、大半のユーザーはそんなことは気にもしないはずだ。
個人的には、最後までクルマの個性を発見できなかった、というか、キャラクターを確定できなかったのが気になるのだが、客観的にハードウェアとしてトラヴィックを評価するならば、間違いなくよくできたクルマである。
(文=webCG大川 悠/写真=清水健太/2002年12月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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