フィアット・プントHLX スピードギア(CVT)【試乗記】
お買い得 2002.12.25 試乗記 フィアット・プントHLX スピードギア(CVT) ……173.0万円 一時はフィアットの“米クルマ”となったプント。青息吐息の現フィアットにあって、プントはいまだ魅力的か? webCG記者が乗った。EからHへ
1993年に初代がデビューしたフィアットのコンパクトカー「プント」。「ウーノ」に代わる“庶民の足”として華々しく登場し、実際、フィアットの屋台骨となったヒット作である。たちまち街にあふれたプントの群れからは、現在の、存亡危ぶまれる(とウワサされる)フィアットアウトの姿を、誰がが想像できたでありましょうか!!
と、それはともかく、現行モデルは、フィアット創立100周年にあたる99年にモデルチェンジした2代目。各部のエッジが立ったデザインとなり、サスペンションにも手が加えられた。日本への導入は翌2000年から。
当初、1.2リッターエンジンに、6段シーケンシャルモードを備えるスバル製CVT(無段変速機)を組み合わせた5ドアモデル「プントELX“Speedgear”」と、1.8リッター+5段MTのスポーティな3ドアモデル「プントHGT アバルト」が導入された。
2001年に、パワートレインはELXと同じながら、電動リモコン式ドアミラーやアロイホイールを装備する日本市場向けの豪華版「プントHLX“Speedgear”」が追加された。“E”から“H”に昇格(?)したワケだ。いうまでもなく、“Speedgear”はCVTを指す。
テスト車のHLXスピードギアで、山梨県は小淵沢でプレス向け試乗会に参加した。リポーターとカメラマンを乗せ、撮影機材をラゲッジルームに満載し、高速道路はもちろん山岳路も含まれる、往復約400kmの試乗コースである。
気が利いた仕組み
テスト車は、ティシャンレッドと呼ばれるボディカラーに塗られた1台。ハデだ。出発する前に、清水カメラマンのカメラバッグ(15kgほど、巨大)、脚立などの撮影機材を積みこむ。ボディサイズは小さいが、ラゲッジルームの容量はVDA方式で297リッター。ボディサイズがほぼ同じ日産「マーチ」の250リッターより大きい。「ボディ比率86.4%がキャビン」という、パッケージングの良さがプントのウリである。
インテリアは落ち着いたトーンで、シート生地やトリムは濃いブルーに黄色の細かい斑点がちりばめられたファブリック。前席はダイヤル調節式のランバーサポートが付くから、腰痛もちのリポーターが長距離ドライブするにはありがたい。サイズはやや小ぶりだが、座った感触にコシがあって座り心地は悪くない。
プントは、収納、モノ置きが充実している。ドアポケットやグローブボックスはもちろん、ダッシュボード上部には3カ所のくぼみをつけ、サングラスなどの小物が置けるなど、収納を増やす工夫が見られる。メッキ加工されたシフトパネルの奥には、カップホルダーが2つ備わる。
装備で目を引いたのは、電動式パワステのアシスト量を、センターコンソールの「CITY」スイッチで最大にできる「デュアルドライブ」システム。ノーマルでもそれほど重くないので、リポーターは実験目的(?)以外には使わなかったが、ONにすると片手でラクラクまわせるくらい軽い。高速走行時などにステアリングフィールを損なわないように、一方、車庫入れの時にはラクなように、スイッチによる切り替え式にしたと思われる。気が利いた仕組みだと思う。
安全装備も充実する。後席中央のヘッドレストと3点式シートベルトはもちろん、前席SRSエアバッグ&サイドエアバッグを標準装備。HLXには前席ドアガラス上部のトリム内に、頭部を保護するヘッドエアバッグが備わる。
大活躍
大人2人と荷物を積んでも動力性能は十分。エンジンスペックだけみれば、マーチの1.2リッター(90ps、12.3kgm)に見劣りする80psの最高出力と11.6kgmの最大トルク。中央高速のダラダラと長い上り坂、談合坂ではさすがに速度が落ちるだろうと思ったが、流れに乗ったままあっさり上った。絶対的なパワーがあるわけではないから速度が乗るまではそれなりに時間がかかるし、アクセルペダルを踏み込むとエンジン回転数は5000rpm以上に上昇するが、ノイズや振動はあまり気にならない。100km/h巡航はDレンジで2100rpm、ギア比が微妙に異なるマニュアルモードの6速では2400rpm。定常走行は静かだ。
小淵沢に着いてから、プントはカメラカーとして活躍。大人4人に撮影機材を載せて山道を上る過酷な使い方もちゃんとこなし、空荷でシーケンシャルモードを駆使して走れば、ホットハッチとまではいかずとも、パワーがそこそこで誰でも運転が楽しめそうだ。
スゴイスゴイと感心していたが、乗り心地は足がバタつき気味であまりよくない。とくに後席は目地段差での突き上げが大きく、乗っていた自動車テクノロジーライターの松本英雄氏がたまたま後ろを向いていたところ、バンプでリアが跳ねてヘッドレストがアッパーカットを喰らわせた。先生ゴメン……。
とはいえ、パッケージングも動力性能も、超真っ当なクルマなことに間違いはないし、「フォルクスワーゲン・ポロ」(198.0万円)や「プジョー206」(179.5万円から)より200ccほど排気量が少ないが、173.0万円と、価格が抑えられているのもありがたい。
さらに、イタリア本国での値段を、インターネットを使ってユーロ換算で調べたところ、完全に同じグレードでの比較はできなかったが、日本との価格差が少ないのである。フィアットオートジャパン広報担当者から、「かなり戦略的な価格をつけさせていただきました」と聞いて、ますますお買い得感が高くなった。興味ある方は、http://www.fiat.it/をご参照ください。イタリア語ですが……。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2002年12月)

大澤 俊博
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