フィアット・プントHGT(5MT)【ブリーフテスト】
フィアット・プントHGT(5MT) 2004.02.09 試乗記 ……199.0万円 総合評価……★★ 鼻先にグリル(ダミー)を得て、ややコンサバなルックスになったニュープント。ホットな走りを期待して、ステアリングホイールを握った生方聡だが……。
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もう一度煮詰め直し!?
イタリア車といえば、最近ではアルファロメオ人気の高まりが目立つ。「アルファ147」や「156」を街なかで見かける機会もグンと増えた。日本国内で魅力溢れるイタリア車に気軽に乗れるのはうれしいが、私にとってはやはり、コンパクトなボディに小排気量エンジンを積む「フィアット・パンダ」や「プント」といったモデルのほうに、よりイタリアを強く感じる。
パワーはなくても、エンジンをブンまわして軽快に走るイタリアンハッチは、運転の根元的な楽しさを味わうにはうってつけだ。そのうえ、ちょっと贅沢して、ハイパワーなエンジンを載せたら、つまらないワケがない。
フェイスリフトを含む、マイナーチェンジを受けたプントのニューラインナップから、名門チューナー「アバルト」の名前がはずれた。とはいうものの、プントのハイパフォーマンス版「HGT」はまさにそんなコンパクトホットハッチのはず……、だったのだが、実際に乗った印象は、期待に反して中途半端。できることなら、もう一度煮詰め直して、いつもの気持ちよさを取り戻してほしい。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
初代プントが登場したのは1993年。2代目のデビューは、フィアット創業100周年にあたる1999年で、大イベントでのお披露目となった。
本国では2003年6月にマイナーチェンジを受け、フィアットが「第3世代」と呼ぶこのプント、変更箇所はフロントまわりの意匠など。つまり、フェイスリフトが主な内容である。シャシーやパワートレインは従来型のそれを引き継ぐ。2003年12月から日本での販売が開始された。
(グレード概要)
日本仕様は「エモーション・スピードギア」と「HGT」の2種類。前者は1.2リッター+CVT、後者は1.7リッター+5段MTのパワートレインをそれぞれ搭載する。
テスト車のHGTは、プントのスポーティグレード。スポーツシートや、アルミ光沢仕上げのコンソールパネルなどで、インテリアを演出。充実した電子デバイスも特徴で、ESPやトラクションコントロールの「ASR」、シフトダウン時のタイヤロックを防ぐ「MSR」(エンジンブレーキ・トルクコントロール)を搭載。緊急制動時にブレーキ踏力を補助する「HBA」(ハイドローリック・ブレーキアシスト)や、坂道発進を補助する「ヒルホールドシステム」が、新たに加わった。ちなみに、マイナーチェンジ前には、名チューナー「アバルト」の名前とサソリのエンブレムをつけていたが、新型からは消えた。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
高級感こそないが、デザインのユニークさにイタリアンコンパクトならではの楽しさがある。室内を見まわしてまず目にはいるのが、ダッシュボード上に設けられた3カ所のくぼみ。ちょっとした小物を置くには便利なスペースだ。ダッシュパネルやドアグリップ、エアベントのリングなどはメタル調の艶消しシルバー塗装。回転計、燃料計、水温計、速度計はいずれもホワイトメーターを採用し、HGTにふさわしいスポーティな印象を演出する。シートやドアトリムの素材は、うっすらと黄色が浮かぶユニークなものだ。
装備面での話題は、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)を採用したことだ。横滑り防止機構やトラクションコントロールに加えて、シフトダウンの際に駆動輪のロックを防ぐエンジンブレーキコントロール、坂道発進を補助するヒルホールドシステムを統合した。
(前席)……★★★
センターが黄色、サイドサポートがグレーのバケットシートはハイトアジャスター付き。ダイヤルタイプのリクライン調整、ランバーサポートとともに、適切なシートポジションを提供する。サイドサポートは大きめだが、シート自体はソフトな感触で、ドライバーの身体を優しくしっかりと支えてくれる。ドアミラーのスイッチがパーキングブレーキ横にあるので、少々操作しにくいのが気になった。
(後席)……★★★
フロントシートと違い、シートバック、シートクッションともにやや硬めなリアシート。身長168cmの私が座ると、膝の前のスペースは握り拳半分程度と、さほど余裕はない。しかし、フロントシートの下に爪先が入る空間があるので、窮屈な感じはしない。
ただ、走り出すと乗り心地は硬く、上下動も大きいので、長時間のリアシートでの移動はご遠慮したい。中央席はヘッドレストとともに、3点式のシートベルトが備わる。
(荷室)……★★★
通常は奥行き60cm弱のラゲッジスペースも、リアシートを倒せば約2倍の広さになる。リアシートは6:4の分割可倒式なので、乗車人数と荷物の量にあわせたシートアレンジが可能だ。加えて、ダブルフォールディング式なので、シートクッションを起こしてシートバックを倒せばフロアはほぼフラットになる。ドイツ車やフランス車と違い、テールゲートにドアハンドルがなく、開けるときには室内のオープナーを操作しなければならないのが不便だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
HGTには、排気量1.7リッターの直4DOHCエンジンを搭載する。カタログによれば、最高出力が130ps/6300rpm、最大トルクが16.1kgm/4300rpmで、車両重量1100kgのボディには十分すぎるパワーを誇る。……はずなのだが、実際に運転してみると、5000rpm付近で多少盛り上がりを見せるものの、低中速域ではもの足りず。スロットルペダルを思い切り踏みつけても、ツインカムにしてはトップエンドに伸びがない。正直なところ拍子抜け。エンジン音だけは勇ましいのだが……。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
スポーティモデルということで、足まわりは硬められており、明確に硬い乗り心地を示す。目地段差では突き上げられる印象で、荒れた路面では短い周期の上下動が続いて落ち着かない。その印象は高速道路でも変わらず、直進性には優れるが、快適さとはほど遠い。一方、ワインディングロードでは、ボディのコンパクトさもあって、とても機敏に走ることができる。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年1月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:875km
タイヤ:(前) 185/55R15 82V(後)同じ(いずれもピレリ P6000)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:376.6km
使用燃料:40.0リッター
参考燃費:9.4km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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