トヨタ WiLLサイファ1.5リッター4WD(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ WiLLサイファ1.5リッター4WD(4AT) 2002.12.19 試乗記 ……158.1万円 総合評価……★★先行実験
異形自動車シリーズ「WiLL」の三男坊。斬新なカタチのみならず、情報ネットワークサービス「G-BOOK」を搭載し、機能面からも新機軸を打ち出した。早いハナシが、通信機能をもったコンピュータをセンターコンソールに埋め込んだ。ディスプレイにタッチすることで、近場のレストランやゴルフ場やオートキャンプ場などを教えてくれ、また、オペレーターを介したサービスもオプションで用意される……といった先端技術より、126.0万円(1.3リッター)/148.0万円(1.5リッター)で、ナビゲーションシステム付きの(変形)「ヴィッツ」が買える、という方が、一般消費者には重要かも。
フザけた外観とはうらはらに、しっかりした“走り”を見せるWiLLサイファ。“育てるクルマ”とのキャッチコピーとは逆に、ユーザーを教育して、トヨタの情報ネットワークにからめとるための野望のクルマ。本命たるトヨタの高級車に、“情報”という付加価値をつけるための実験車でもある。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年10月21日にデビューした、ヴィッツベースの5ドアモデル。トヨタ、近畿日本ツーリスト、江崎グリコ、コクヨ、松下電器産業の5社が進める異業種合同プロジェクト「WiLL」のブランド名を冠する第3弾である。エンジンはヴィッツでも使われる、1.3リッター直4と1.5リッター直4の2種類。前者が前輪駆動、後者は4WDになる。トランスミッションはいずれも4段AT。
サイファの特徴はなんといっても、車載情報端末「G-BOOK」の搭載。「DCM(Data Communication Module)」と呼ばれる通信モジュールの採用により、携帯電話を必要とせずに、最大144kbpsの通信を可能とする。月々550円(年払で6600円の場合)からの定額制。オペレーターサービスやカラオケなど、別途料金が発生するコンテンツもある。i-MODEなどの有料コンテンツと、同じ仕組みだ。「DCM」そのものが通信機能を備えるが、オペレーターを介してのナビゲーション設定など、音声通信では携帯電話を利用する。
(グレード概要)
サイファ1.3は前輪駆動。1.5リッターを積む4WDモデル。装備の差はない。標準で、電動格納リモコンドアミラーやオートエアコンなどを装着。ただし、オーディオ類はラジオレスの4スピーカーだ。車載端末「G-BOOK」は、全車標準装備。ナビゲーションシステムも、G-BOOKに含まれる。安全装備として、EBD付きABSや前席SRSエアバッグ、リア3点式シートベルトなどが付く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
デザインモチーフである「円」を各部に反復させ、なによりセンタークラスターの「G-BOOK」をフィーチャーしたインパネまわり。同じヴィッツベースの従兄弟車「イスト」ほどには、“なかにヴィッツが入っている”感が少ない。アルファロメオが先鞭をつけた円周部で空調関係をコントロールするダイヤルスイッチや、「ヒカリモノ」という単語を連想するブルーメタリックのパネル類などが、WiLLモデルとして凝ったところだ。
(前席)……★★★★
7色あるボディカラーに対しインテリアが1種類なのが寂しいが、それを補ってあまりまるフロントシートのできのよさ。ある種の“気合い”が感じられる。シートの骨格こそヴィッツと共用だが、硬さの異なるクッションが組み合わされ、「ファルマー」と呼ばれる柔らかい新素材の生地とあわせ、座り心地はいい。センターコンソール下部の「センターボックス」「助手席シートアンダートレイ」インパネ左右端の「マルチボックス」など、モノ入れは豊富。ただ、携帯電話を固定する「携帯電話ホルダー」(販売店装着オプション)の、場違いな無骨さはいかがなものか。
(後席)……★★★
前席同様、しっかりしたクッションをもつ座り心地のいいリアシート。サイドの絞り込みが少ないボディ、高めの全高の恩恵で、頭まわりのスペースには余裕がある。ひざ前にもほどほどの空間が確保され、前席下に足先を入れるのはたやすい。乗車定員は5人だから、法規上3人座れるが、実質2人用と割り切ったほうがいい。左右とも、ISOFIX対応型チャイルドシート固定用バーが設定される。
(荷室)……★★
1.5リッターモデルは4WDゆえ、床下にデファレンシャルが配置される。そのため、荷室のフロアはFF(前輪駆動)車より20cmほど高い。床面最大幅は114cm、奥行き45cm、天井までの高さは75から80cm。後席は分割可倒式で、背もたれ端のレバーを引くだけで、背もたれを前に倒せ、高くなったフロアと面一に荷室を拡大できる。130cm前後の長尺物も搭載可。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
サイファの機関面は、基本的にヴィッツと同じ。エンジンは、1.3と1.5の2種類で、いずれも「VVT-i」こと可変バルブタイミング機構を備えた「BEAMS」ユニット。どちらも「平成12年排出ガス75%低減レベル」を達成、いわゆる3ツ星である。テスト車の1.5リッターモデルは、4WDシステムを運ぶための排気量アップ版。“変わりボディ”の代償、100kg超の重量増にして、組み合わされる4段ATのギア比はヴィッツ1.5リッター「RS」と変わらないから、動力性能はそれなり。とはいえ、しゃかりきにトバしたくなるクルマではないし……ということを考慮しないでも、実用上はまったく十分。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
増加したウェイトは、乗り心地の面ではプラスに働いて、見かけによらずサイファはしっとり走る。高速道路でのスタビリティにも問題なく、長距離ドライブも苦もなくこなす。ハンドリングも、ヴィッツゆずりの穏やかなものだ。ただ、重量がかさむ4WDシステムゆえか、ときに路面からの突き上げが気になることも。雪国在住の方以外は、迷わず1.3リッターを買った方がいい。
(写真=郡大二郎(K)、岡田茂(O)、トヨタ自動車)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日: 2002年11月10日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1349km
タイヤ:(前)175/65R14 82S(後)同じ(いずれもブリヂストンB391)
オプション装備:アルミホイール(5.0万円)+CD・MD一体ラジオ&6スピーカー(5.1万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:高速道路(8):市街地(2):山岳路(1)
走行距離:906.6km
使用燃料:80.6リッター
参考燃費:11.2km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。












