トヨタ・プラッツ1.5X FF(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プラッツ1.5X FF(4AT) 2002.09.28 試乗記 ……157.3万円 総合評価……★★★★実用一徹
トヨタのちょっとオシャレな欧州戦略車「ヴィッツ」が3ボックスになると、なぜかアジアンテイスト溢れる純然たる実用車になる不思議。さすがに「コレではイカン」と思ったか、2002年8月のマイナーチェンジで、バンパー、グリル、リアのコンビネーションランプなどが新意匠になり、多少なりともスッキリしたスタイルに。テスト車、1.5リッターモデルの足もとは15インチに格上げされ、後姿の貧相さが若干ながら薄まった。
ちんまりしたシートに座ってステアリングホイールを握ると、思い描かれるユーザー像は「子育てを終えて久しいご年輩の夫婦」……か? 前後左右の大きなグラスエリアゆえ、開放感抜群。高めの着座位置。見晴らしのよさ。運転しやすい。高い天井。広い室内。十分な荷室。取り回しのよさ。実用一徹。何の不満があろう?
“趣味のクルマ選び”と無縁の人生を送ったヒトに。または、送っているヒトに。自動車メーカーとしては、来るべき高齢化社会への備え。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
トヨタのセダンラインナップのボトムレンジを受け持つコンパクトな4ドアモデル。1999年8月にヴィッツの派生車種として、ハイトワゴン「ファンカーゴ」とともにリリースされた。エンジンは、1、1.3(4WDのみ)、1.5リッターの3種類。いずれも直4DOHCである。トランスミッションには、4段AT、5段MTが用意される。2001年12月に、1リッターモデルが「平成12年基準排出ガス75%低減レベル(超-低排出ガス)」を達成。2002年8月にマイナーチェンジを受け、内外装が手直しされた。同時に、1.3、1.5リッターユニットも、超-低排出ガスレベルに認定された。
(グレード概要)
テスト車の「1.5X」は、プラッツの最上級グレード。ベーシックな「F」と比較すると、シートのファブリックが変わり、リアシートが分割可倒式になり、「オートエアコン」「MD/CD付きラジオ」「運転席ハイトコントロール」「リモコンドアロック」など、装備が充実する。1.5リッターモデルに、盗難防止システムのオプションも、今回のマイチェンで追加された。なお、1.5リッターモデルには、「スポーティサスペンション」などを奢った「Sパッケージ」もラインナップされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
マイチェンにともない、ヴィッツから流用されたエアコン吹き出し口が開閉式になり、空調関係のダイヤルまわりにシルバーのパネルが使われるようになった。質感向上の試み。1.5リッターモデルには、「CD/MD付きラジオ+4スピーカー」が標準で装備され、IDコードが登録されたキーでしかエンジンが始動しない盗難防止装置もオプションで選択できる(1.5万円)。ここかしこに設けられた小物入れの豊富さは、ヴィッツ一族のいいところ。センターのデジタルメーターは好き嫌いが分かれるためか、。アナログメーターも選択できる。
(前席)……★★★★
想定ユーザーに合わせた(?)小ぶりなシート。柔らかい。が、見かけほど“マシュマロ”な感じではない。追突された際にはバックレストが沈み、頭部だけが後ろに振られることを防いで、頸部への衝撃を緩和する「WILコンセプト」が採用された。ドライバーズシートに座ると、サイドの低いショルダーライン(窓枠下端)、大きなフロントウィンドウと、開放感は抜群。乗降性を考慮して高めの位置に座面を設定したシートゆえ、着座位置も高く、平均身長が低めの年輩の方でも、見晴らしのいい視点を手に入れられる、はずだ。運転席側のみ、サイドのダイヤルでシート全体の角度を調整することができる。
(後席)……★★★
小ぶりな一体型クッションで膝前空間の広さを演出。天井は高く、ヘッドクリアランスはじゅうぶん。左右に3点式シートベルトが備わる。車検上はリアシートに3人座れるが、センターシートはアームレスト用スペースと割り切るべき。左右にISOFIX対応チャイルドシート用固定バーが備わる。
(荷室)……★★★★
床面最大幅135cm、奥行き92cm、高さ60cm。後席背もたれは分割可倒式で、170cmほどの長尺物も運ぶことができる。「外形のサイズからは想像できないほどの大容量」とのカタログのフレーズはウソではない。スタイル上の少々のアンバランスさには目をつぶって、ハイデッキ&オーバーハング長めのトランクルームを付けただけのことはある。9インチのゴルフバッグなら、5つまで収納できるという。
|
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
プラッツの動力系は、実用車の鑑。「フードインシュレーター(ボンネットの内張)」の採用、吸・遮音材の増量で、車内は一段と静かになった。街なかドライブでは、発動機の存在が気になることはほとんどない。三ツ星こと「超-低排出ガス」認定を受けた1.5リッターユニットは、クルマの鼻先で、くぐもった声でつぶやいているだけ。フレックスロックアップ付き4段ATとのマッチングは文句ない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
プラッツを買うユーザーは「保守的で、おとなしい運転をする」との前提で仕立てられたとおぼしき「乗り心地」と「ハンドリング」。柔らかい反面、路面からの入力は直接的で、舗装の荒れがコツコツと伝わってくる。全体に、シャッキリしない、とりとめのないアシまわり。コーナーではあいまいに大きくロールする。しかし、腰砕けに大きくアンダーステアを出すようなことはなく、あるレベルで破綻なくまとまっている、とも言える。頭に浮かぶ言葉は「割り切り」。
(写真=清水健太)
|
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年9月11
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:3295km
タイヤ:(前)165/65R15 81S/(後)同じ(いずれもDunlop SP10)
オプション装備:GPSボイスナビゲーション(1DINタイプ/9.0万円)+フロントフォグランプ(1.0万円)+盗難防止システム(1.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):山岳路(2)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。






































