トヨタ・ヴォルツZ(6MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴォルツZ(6MT) 2002.09.03 試乗記 ……222.5万円 総合評価……★★記号としてのスポーツ
「連続可変バルブタイミング&リフト機構付きエンジン」「リッター105.6ps」「6段MT」「17インチホイール」「4輪ディスクブレーキ」。一昔前なら、“ちょっとした”どころか、“相当すごい”スポーツカーのスペックだが、いまやSUVルックにお化粧されたカローラワゴンに搭載される時代。「トヨタ・ヴォルツ」またの名を「ポンティアック・バイブ」は、「BMW“高級車”X5」や「ポルシェ“スポーツカー”カイエン」などに対する「トヨタ-GM」“大衆車”メーカーの回答(のひとつ)。カローラをベースに、両者の合弁会社北米カリフォルニアはNUMMIで生産され、日本へ輸出される。
「ポンティアック・バイブGT」改め「トヨタ・ヴォルツZ」。ATシフターに替わって生える「革+メッキ」のギアレバーを繰って走れば、ハイチューンエンジンがそれなりに喚声を上げるけれど、いかんともしがたい腰高感、左右に突っ張る足まわり、スロウなステアリング……と、峠や山道で不満を述べても詮ないこと。ヴォルツのステージはストリートだから。「スポーティなオレ」を演出するために6MTモデルはある。ふたりのために世界があるように。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ヴォルツは、2002年8月20日に発売が開始されたトヨタとGMの共同開発車。カローラをベースに、「SUV」「ステーションワゴン」「ミニバン」の長所を取り入れたクロスオーバーな“新ジャンル”モデルと説明される。「アクティブなライフスタイルを志向する若者」(プレスリリース)がメインターゲットだ。
トヨタとGMが共同で企画、トヨタが設計、評価を担当し、GMとの合弁会社である北米はカリフォルニアの「NUMMI(New United Motor Manufacturing)」で生産される。つまり、ヴォルツは輸入車である。北米では、「ポンティアック・バイブ」「トヨタ・マトリックス」(後者はカナダ産)として販売される。
エンジンは、ノーマルの1.8リッター(132ps/4WDは125ps)と、ハイチューンの1.8リッター(190ps)が用意される。トランスミッションは4段ATほか、190psモデルは6段MTも選択可能だ。標準エンジン搭載車は、FF(前輪駆動)のみならず、ビスカスカプリングを用いた4WDモデルもラインナップされる。
(グレード概要)
ヴォルツ「Z」は、「S」と同じ1.8リッターながらVVTL-i(連続可変バルブタイミング&リフト機構)を装備、「S」の「1ZZ-FE」型より60ps前後もハイパワーな「2ZZ-GE」ユニットを搭載する。ストッピングパワーも強化され、リアブレーキがドラム式からディスクに格上げされる。さらに、タイヤは「S」よりひとまわり大きい「215/55R17」を履く。外観上は、2トーンの「S」に対し、「Z」のバンパー、フェンダー部はボディと同色。内装面では、シフター、ステアリングホイールがウレタンから本革巻きになるのが違い。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
黒とシルバーで無難に若づくりをしたインパネまわり。変形4連のオプティトロンメーター(照度コントロール付き)は、イグニッションキーを回すと、針が最初に浮かび上がり、続いて数字が表示される。“高級”の演出が、セルシオから降りてきたわけだ。ギアレバー下の「脱着式センターマルチボックス」をはじめ、小物入れは豊富。なお、ヴォルツは全車オーディオレスの設定となる。
(前席)……★★★
GMとの共同開発ゆえか、ヴォルツの全幅は1775mm、全高1605mmと、国内専用モデルと比較すると微妙に大きい。「税制上の不利」「タワーパーキングに入れられない」といったデメリットと引き替えに、室内は広い。前席も余裕の空間。シートはやんわりと安楽な座り心地。運転席に、シート全体の角度を調整できるダイヤルが設けられたのは朗報。当面、ヴォルツのシートは、グレードを問わず黒とグレーのファブリックのみ。今後の売れ行き次第では、スペシャルトリムも期待できよう。
(後席)……★★★
「クーペのように流麗なスタイルのサイドビュー」(広報資料)と説明されるヴォルツのフォルム。しかし、リア下がりを強調するウィンドウグラフィックスとは裏腹に、実際のルーフラインは、リアエンドまで見た目の印象ほど低くはならない。もとのハイトが1605mmと高めなこともあって、後席もスペースの面からは居住性が高い。とはいえ、ヴォルツはあくまで“(若い)ふたりのため”のクルマ。荷物置きと割り切られたリアのドアトリムは、無愛想な樹脂製。バックレストのレバーを引くと、座面は前下方にスライドし、そこに背もたれが倒れこみ、あきれるほど簡単にフラットなフロアをもつ荷室が出現する。
(荷室)……★★★★
「分割可倒式のリアシート」および「背もたれを倒すとテーブルになる助手席」を活用して、豊富なシートアレンジを誇るヴォルツ。ラゲッジルームは、フロアもサイドも、汚れを拭き取りやすい樹脂製だ。最初からラゲッジネットの固定フックが8ヶ所も用意されるのも見逃せない。ドアガラスだけでも開閉できるハッチゲイトは、このクラスとしては贅沢なつくりだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
「トヨタ・セリカ」に初採用されて話題を呼んだ連続可変バルブタイミング&リフト機構「VVTL-i」付き1.8リッター直4「1ZZ-FE」ユニット搭載。190psの最高出力を7600rpmという高回転域で、18.4kgmの最大トルクをこれまた6800rpmという高い回転数で発生する。具体的には、吸気、排気、双方に低・高回転用のカムを備え、6200rpmを境に切り替わる。また、吸気側には、さらに「VVT-i」による連続可変タイミング機構が作用する。いわばトヨタのエンジン技術のショーケース……だが、SUVルックのワゴンにふさわしいかと言うと、疑問符がつく。なにが悲しゅうて、ゴツいバンパーとルーフレールを標準装備したクルマで、「ワンワン」エンジンを回さないとイカンのか……。いや、別に回さなくてもいいんですがね。「世のハイチューンユニットは、たいてい宝の持ち腐れだから」とシニカルにかまえれば。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
カローラをベースに、前後のトレッドが広げられたヴォルツ。サスペンション形式は、前マクファーソンストラット、後トーションビーム。Zグレードのタイヤは、サイズがSよりひとまわり大きな「215/50R17」になるだけでなく、16インチ仕様のオールシーズンタイヤに対し、ハイパフォーマンスなサマータイヤが装着される。
「2ZZ-GE+6MT」の動力系は、ギア比を含めてまんま「トヨタ・カローラランクス/アレックス」のそれ。日本から輸出され、アメリカでボディに積まれて日本に帰ってくる。ギアレバーを握って走りはじめると、ヴォルツはカローラハッチより100kg以上重いからその分遅いハズだが、眉間にしわ寄せエンジン回してカッ飛ぶと、ウェイト増のことは忘れる。とはいえ、どこか“鈍”で、ことさら楽しいわけではない。カーブでは、ハッチバックより2インチも大きなタイヤを履くため、大きな挙動の変化を嫌ってロールは少なく、左右に突っ張る感じ。街なかでは硬い。ちなみに、ポンティアックブランドでは、ハイパフォーマンスモデルも16インチのままである。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年9月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:800km
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)同じ(いずれもFirestone Firehawk SZ50)
オプション装備:DVDナビゲーションシステム(22.7万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):山岳路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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