ルノー・メガーヌ エステート GTライン(FF/CVT)【試乗記】
目的地までひとっ飛び 2013.02.21 試乗記 ルノー・メガーヌ エステート GTライン(FF/CVT)……278万円
ルノーの基幹車種であるCセグメントの「メガーヌ」に、ワゴンモデルの「エステート GTライン」が登場。広くなったラゲッジルームとリアシートだけにとどまらない、フランス製長距離ランナーの魅力に触れた。
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昨年末に「ルノー・メガーヌ」(の普通モデル)に「エステート」が追加された。グレードはハッチバックでも設定されている「GTライン」。おなじみの2リッター自然吸気エンジン+CVTに、ルノースポールが手がけたライトチューンシャシーを組み合わせたアレである。
ただ、正確に言うと、今回は単純に「エステート GTライン」が追加されただけではない。それと同時にハッチバックにあった穏健グレード「プレミアムライン」が廃止になって、ハッチバック/エステートともにグレードを「GTライン」のみに統一。つまり、「R.S.」を除く普通のメガーヌの日本仕様ラインナップ数は、これまでも現在も、合計2車種であることに変わりない。
せっかくなので、もうひとつ細かいことを正確にお伝えすると、このエステート追加を機に、日本で販売されるメガーヌは軽微な仕様変更を受けた。それは本国で昨年春に「コレクション2012」として発表されたフェーズIIモデルにあたるが、あくまで細部の意匠変更と装備内容の見直しのみ。具体的にはLEDを多用した前後ランプやバンパー、インパネにあしらわれた赤いラインが主な識別点だ。
もっとも、このメガーヌ・フェーズIIにおける最大トピックは、実は1.2リッター直噴ターボ(従来型1.6リッター自然吸気相当のダウンサイジングユニット)の登場にある。ただ、その日本導入はかなわず。日本仕様の場合は、パワートレインはもちろん、シャシーを含めてメカニズムの変更は特にアナウンスされていない。
また、新しいメガーヌ エステートは先代より明らかにスポーツワゴン志向のデザインだが、それでもハッチバック(やクーペ)よりホイールベースが長い……という美点は先代から受け継がれる。メガーヌはホイールベースのわりに後席がせまいのが欠点だが、エステートの後席レッグルームはハッチバックよりわずかだがハッキリと余裕あり。後方まで水平に伸びたルーフでヘッドルームも心理的に広い。メガーヌがどうしても欲しくて、しかも後席に頻繁に人を乗せたいなら、大荷物を積む予定はなくてもエステートを選んだほうがいい。
CVT嫌いのためのCVTチューニング
エステートの車重はハッチバック比で40kgほど増えているが、まあ40kg程度だから動力性能にさしたる変化はない。ホイールベースが延びたのは、もともと落ち着きあるメガーヌの操縦性をさらに大人っぽくさせている。
日産と基本設計を共用する2リッター自然吸気は可もなく不可もなく……といった感じ。体感的には競合車のダウンサイジングターボのほうがパワフルだが、ジヤトコ製CVTのおかげもあって動力性能は十分だ。
エンジンもトランスミッションも、基本ハードウエアは日産でおなじみの組み合わせだが、チューニングはルノー独自。特にCVTは日産系とはかなり趣が異なる。簡単に言うと、よりレスポンス重視。スロットルペダルに力を込めると、CVT慣れした日本人にとってはかなり大胆にドスンとレシオを下げる。そのいっぽうで右足から力を抜くと、ふたたびズバッとレシオを上げる。
ヨーロッパ人はやっぱりCVTが嫌いなんだな……と痛感する。エンジン回転が先に上昇して車速が後追いする通称“ラバーバンドフィール”は、確かにCVT最大の弱点とされる。しかし、それは同時に無段階変速ゆえの高効率な証左でもある。だから、ダイレクトな加速感とCVTならではの高効率変速をいかに両立するかがCVTチューンのキモなのだが、ルノーの場合はダイレクト感に傾倒しすぎて、ちょっと下品な変速マナーになっていることは否定できない。
具体的に言うと、緩やかな加速をイメージしたジワッとした加速操作には、もう少し粘らせてレシオをキープしてほしいところ。これを小気味いいと表現できなくはないが、正直なところ、少しせわしない。ダウンシフト反応が敏感すぎて、優しい運転がしにくいのだ。
ルノーは操作系やシャシー特性はもちろん、パワートレインも実にキメ細かく、扱いやすいチューニングを施すメーカーだ。プライベートでもルノーに乗る私は、彼らのセンスとノウハウと見識には敬意と愛情とヒイキ目を持っているが、このCVTのチューニングだけは「素直に日産(もしくはジヤトコ)に教えてもらうべし」と申しあげたい。
速さを増すほどにキラリと光る
このようにパワートレインにはツッコミどころ、あるいは改良・熟成の余地があるメガーヌ エステートだが、シャシーはもう文句なし。ピタリとハマったシチュエーションでの乗り心地と操縦性はステキである。
このメガーヌIIIのシャシーはもともとロール剛性の高かったIIをベースに、各部剛性を引き上げて、かつリアのトーションビームを中空パイプに変更するなど、さらにロール剛性を大幅に引き上げた設計だ。だから、ひっくり返りそうにロールしながらも、魔法のように路面に粘りついた昭和〜平成初期のフランス車を好む向きには、これはタイプではないかもしれない。しかし、絶対的な能力は雲泥の差でこのメガーヌの方が高い。
そうした基本特性に、引き締まったスプリングとダンパーを組み合わせたメガーヌのGTラインは、だから低速ではけっこう硬い。今回のフェーズIIはタイヤ銘柄も変わっていた(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト3→5)せいか、コツコツもフェーズIのハッチバックよりわずかに増していた。
しかし、メガーヌは速度を増すほどしなやかに乗り心地よく、どんどん上下動が減っていく。熟成きわまった電動パワステも、手応え、リニアリティーともに申し分なし。タイトなコーナリングも気持ちいいが、それ以上に、矢のように走る高速道、それも微妙にうねった超高速コーナーでこそメガーヌの神髄が味わえる。
シツコイようだが動力性能は可もなく不可もない。ただ、ほかのクルマではわずかにスロットルを戻したり軽くブレーキングしたくなる場面でも、メガーヌならそのまま走り抜けられる可能性が高い。よって、高速を長く走るほど、結果的に平均速度が高まる。メガーヌは典型的な、シャシーでスピードを稼ぐタイプだ。
人や荷物を満載して、目的地まで高速をひとっ飛び……メガーヌはそういう使い方でこそキラリと光るクルマだ。そうであれば、ホイールベースが延びて直進性がさらにレベルアップして、しかも後席居住性と積載能力も増強されたエステートのほうが、より本来のメガーヌらしい……と言うこともできる。
(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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