ベントレー・コンチネンタルGTスピード(4WD/8AT)【試乗記】
揺るがぬ伝統 2013.02.14 試乗記 ベントレー・コンチネンタルGTスピード(4WD/8AT)……2588万1600円
スーパースポーツカーとて環境性能と無関係ではいられない。ベントレーは史上最速の「コンチネンタルGTスピード」でそんな時代としっかり折り合いをつけ、しかも「B」マークの伝統を守ってみせた。
その加速はフリーフォール級
遊園地のアトラクションで、フリーフォールを試してみた人がいるだろうか? あるいは、逆落としのコースが設定されたジェットコースターを?
「ベントレー・コンチネンタルGTスピード」に乗って、静止状態からの全力加速に挑戦してみると、垂直と水平方向という根本的な違いはあるけれど、感覚的には、ちょうど、そんな感じ。急激に前方へ吸い込まれる、しかも2次曲線的に速度が上がって、顔から血の気が引くのが自分でもわかる。思わず目をつぶってしまいそうになるけれど、それでは危ないので、もちろん、アクセルペダルから足を離すことになる。
怒濤(どとう)の加速。高速道路の料金所から法定速度の100km/hに達するまでの4.2秒が、どれだけ“長く”感じられることか! 気分が悪くなるので、一度やれば十分。やみつきになる類いの体験ではない。
例えばアナタが、車両本体価格2490万円に“軽く”100万円ほどのオプションを付けたGTスピードの幸運なオーナーになったばかりだとしよう。以前のクルマで通いなれたハイウェイの様子が「何だか変だ」と思ったなら、つまりひどくすいているのにやけに周りのクルマがゆっくり走っていると感じたなら、覆面パトカーに注意しよう!? いや、それも非常に重要なことだが、まずは速度計を確認することをオススメします。もしや、メーターの針が、とんでもない数字を指し示してはいませんか? GTスピードは、日常感覚のまま、まったく次元の違う速度域を行くことができる、恐るべきスーパースポーツなのだ。
史上最速、しかも燃費が向上
ベントレー・コンチネンタルGTスピードは、昨2012年8月に開催されたモスクワモーターショーでデビューを飾った、ベントレーのコンチネンタル系モデルのフラッグシップ。6リッターW12気筒ツインターボエンジン搭載。8段ATを介して4輪を駆動するスーパークーペである。先代GTスピードが出てから5年がたつから、買い換えのために待っていたリッチな方々も多いことだろう。なお、GTスピードの登場に合わせて、スタンダードな「GT W12」モデルも、トランスミッションが6段から8段に変更された。
GTスピードのツインターボは、スタンダード比50ps増しの625ps/6000rpmと、同10.2kgm(100Nm)増しの81.6kgm(800Nm)/2000rpmを発生。最高速度は、318km/hから329km/h(205mph)に引き上げられた。「ベントレー史上最速の330km/h」がうたわれる。
業界最右翼のメカオタクだったF.ピエヒ博士の忘れ形見……じゃなかった、置き土産ともいえる相対的にコンパクトなW型12気筒は、段数を増したトランスミッションと組み合わせ、またオルタネーターの発電量を精緻にコントロールすることで、最高12%の燃費向上を果たしたという。GTスピードは、欧州基準で街なか4.5km/リッター、ハイウェイ9.9km/リッター、併せて6.9km/リッターのカタログ燃費が記載される。
「2.3トンのクルマにしては意外に燃費がよくてねぇ」という会話が、ジェントルメンズクラブで、会員制フィットネスクラブで、はたまたゴルフ場のサウナ内で交わされるのかもしれない。ちなみにベントレーは、フェラーリ、アストン・マーティンを抑え、市販12気筒モデル市場で4割を占める、業界最大手である。表示されたパワーポイントの資料に「トヨタ」の名前が見られなかったが、まあ、それは別のハナシだ。
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大排気量は守られた
ベントレーとしては、先代GTスピードの代替え需要に加え、「平日はコンチネンタルGT V8モデルを足にして、週末はフェラーリ、アストン・マーティンで羽目を外す……」。そんなクルマの使い方から、「週末はGTスピードで羽目を外す……」に変えたいと意気込む。「V8とW12の2台持ち」をする奇特なリッチ層がいても楽しいが、現実的には「ラグジュアリーな使い勝手も、スーパースポーツの性能も、GTスピードで両立できます」といったところ。
実際、GTスピードは、頑張らなくても速い。速すぎる。アウトプットを増した心臓に合わせ、車高は10mm落とされ、足まわりは強化された。スプリングは3から4割がた固められ、アンチロールバーも約1.5倍のレートアップ。ブッシュ類も硬度を上げて、よりシャープなハンドリングを目指した。エアロダイナミクス面でも、ボディー下面を整理して、ノーマルGT比8%大きなダウンフォースを得たという。もちろん、ストッピングパワーも上げられていて、フロントには対向4ピストン、ベントレー言うところの8ピストンキャリーパーがおごられた。
ベントレーGTスピードをして、「日常使いができるスーパースポーツ」を狙ったとするなら、まったくその通りで、その源泉は、6リッターと絶対的に大きな排気量にある。地力のあるエンジンで、重量がかさむ豪華な内装、ぜいたくな装備、静粛性を確保する十分な遮音・吸音材を組み込みこんだボディーを運び、駆動力を無駄なく路面に伝える4WDシステムと21インチのホイールに巻かれたタイヤを無理なく働かせる。過給機による助勢は、いわばスペック競争のための余録。
ラグジュアリーな乗り心地とスーパーな走行性能を両立させるために、まずは大きな排気量を与える。そんな身もふたもない解決策に、“最速のトラック”と呼ばれた「B」マークの伝統を感じ取る。「レースは勝ってナンボ」とばかりに、ひたすら性能アップに血道を上げたW.O.……。歴史あるブランドのクルマに乗る楽しさだ。
(文=青木禎之/写真=荒川正幸)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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