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【スペック】全長×全幅×全高=4645×1910×1660mm/ホイールベース=2810mm/車重=1910kg/駆動方式=4WD/2リッター直4DOHC16バルブターボ(224ps/4500-6250rpm、35.7kgm/1500-4500rpm)/燃費=12.5km/リッター(JC08モード)/価格=579万円(テスト車=699万5000円)

アウディQ5 2.0TFSIクワトロ(4WD/8AT)【試乗記】

弱みを見せないプレミアム 2013.02.12 試乗記 鈴木 真人 アウディQ5 2.0TFSIクワトロ(4WD/8AT)
……699万5000円

新エンジンの搭載などにより、プレミアムSUVとしての魅力にさらに磨きをかけた「アウディQ5」。従来モデルからの進化の度合いを、2リッター直噴ターボ搭載車で試した。

スキが見当たらない

『日曜洋画劇場』の解説で知られる淀川長治氏は、どんな作品でもなにかしら美点を見つけ出してほめていた。これから観る映画を楽しみにしている人に対し、ネガティブなことを言いたくなかったのだろう。クルマだって、なるべくいいところを見つけて紹介したい。欠点に目をつぶるわけにはいかないが、どんなクルマだってチャーミングな部分はあるはずだ。

可能なかぎり優しい目でクルマに対するようにしているが、「アウディ」には少しばかり意地悪な視線を向けることにしている。なかなかスキが見当たらないので、うっかりするとほめまくりの文章になってしまうからだ。それではどうもインプレッションらしくないので、何か弱点はないかと探してしまう。

今回乗った「Q5」も、困ってしまうほどよくできたクルマだ。いわゆる“プレミアムSUV”のジャンルで、アウディの「Qシリーズ」は高いブランド力を獲得している。「Q7」に次いで2009年にQ5が登場し、2012年に加わった「Q3」と合わせて3モデルでラインナップを構成している。エンジンを縦置きする「A4」ゆずりのプラットフォームにクワトロシステムを搭載し、スポーティーなミドルサイズSUVに仕立てたのがQ5だ。

4年目を迎え、デザインとエンジンに変更が加えられた。エクステリアでは「シングルフレームグリル」がアップデートされて六角タイプになり、ヘッドランプの意匠も新しくなった。インテリアにも小変更が施されている。最も大きなトピックはエンジンのパワーアップと低燃費化だ。ダウンサイジングの波に乗り、従来の3.2リッター自然吸気エンジンはスーパーチャージャー付きの3リッターに置き換えられている。

外観で最も大きく変わったのがフロントマスク。外周にLEDポジションランプを配した新デザインのヘッドライトを採用したほか、グリルやバンパーのデザインも新しくなっている。
外観で最も大きく変わったのがフロントマスク。外周にLEDポジションランプを配した新デザインのヘッドライトを採用したほか、グリルやバンパーのデザインも新しくなっている。 拡大
内装では、新たにピアノブラックのインストゥルメントパネルを採用。一つの画面でナビゲーションやオーディオなどを制御する「MMI 3G Plus」が全車に装備される。
内装では、新たにピアノブラックのインストゥルメントパネルを採用。一つの画面でナビゲーションやオーディオなどを制御する「MMI 3G Plus」が全車に装備される。 拡大
今回の試乗車は「S-Lineパッケージ」装着車。専用のエアロパーツが備わるほか、シートもエンボス加工入りのスポーツシートとなる。
今回の試乗車は「S-Lineパッケージ」装着車。専用のエアロパーツが備わるほか、シートもエンボス加工入りのスポーツシートとなる。 拡大
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大きさを感じさせない

試乗したのは、4気筒直噴2リッターターボエンジンを搭載した「2.0TFSIクワトロ」だ。出力は従来モデルから13psアップした224psで、燃費はJC08モードでリッター12.5kmと約12%向上している。今まで以上にスキをなくしてきたわけだ。

グリルが台形から六角形に変わり、LEDポジショニングランプでアイメイクを施したヘッドランプとの組み合わせでさらに洗練された顔つきになった。インテリアではステアリングホイールが新形状になり、パネルの材質が見直されている。内装も外装もいつもながらの見事さで、弱点など見つからない。アウディが確立した都会的でプレミアムなテイストは多くのフォロワーを呼んだが、本家は今もアドバンテージを保ち続けている。

向上したという燃費を確かめるため、長い距離を走ることにした。東京都心から東北自動車道で日光に向かい、赤城山麓をまわって関越自動車道で帰ってくるルートだ。高速道路と山道が適度にミックスされている。発進はことのほか穏やかで、乱暴にアクセルを踏んでもいきなりドンと背中を押されるようなことはない。「アウディウルトラ」テクノロジーによって軽量化しているとはいえ、車重は1.9トンなのだ。それでも走りだせば大きなSUVを運転しているということを忘れる。

外から見ても、全長4645mm、全幅1910mmという数値ほどの大きさを感じさせない。前後とも絞りこまれた形状とエッジの効いたキャラクターラインのおかげで、無駄な肥大感をまぬがれている。それは取り回しの良さにも貢献していて、視点の高さと相まって車両感覚がつかみやすい。狭い道のすれ違いでもさほど苦労せずにすんだのはありがたかった。

「S-Lineパッケージ」は専用のスポーツサスペンションを装備。標準モデル以上に引き締まった足まわりとなっている。
「S-Lineパッケージ」は専用のスポーツサスペンションを装備。標準モデル以上に引き締まった足まわりとなっている。 拡大
新エンジンの採用により、動力性能と燃費性能を同時に改善。直4モデルでは13psの出力向上と25%の燃費改善を、V6モデルでは2psの出力向上、7.2kgmのトルク向上と、15%の燃費改善を果たしている。
新エンジンの採用により、動力性能と燃費性能を同時に改善。直4モデルでは13psの出力向上と25%の燃費改善を、V6モデルでは2psの出力向上、7.2kgmのトルク向上と、15%の燃費改善を果たしている。 拡大
「2.0TFSIクワトロ」のタイヤサイズは235/60R18が標準。「S-Lineパッケージ」装着車では235/55R19となるが、今回の試乗車にはオプションの255/45R20というサイズが装備されていた。
「2.0TFSIクワトロ」のタイヤサイズは235/60R18が標準。「S-Lineパッケージ」装着車では235/55R19となるが、今回の試乗車にはオプションの255/45R20というサイズが装備されていた。 拡大

心地よいドライブが楽しめる

信号で停車すると、エンジンもストンと止まった。燃費改善には、アイドリングストップシステムも寄与している。停止・始動時のショックや停止時間などは、この分野で先行する日本車の水準には届いていないものの、高級車にも当然の装備として採用されるのは喜ばしいことだ。

交通量の少ない東北道では、快適なクルージングを楽しんだ。速度を一定に保っていればエンジン音は静かで、風切り音も少ない。しなやかな足は少々荒れた路面でも衝撃を緩和してなめらかな乗り心地を提供してくれる。たまに遅い車に引っかかっても、アクセルひと踏みで追い越しが完了する。結構な距離をノンストップで走っても、一向に疲れを感じなかった。十分な容量の荷室もあり、旅に出かけるには好適なクルマである。

栃木から群馬へと西進するには、山間部を抜けていくことになる。険しい山道というほどではなく、節度のあるアップダウンとコーナーが繰り返される観光道路だ。緩やかなカーブでは大きなロールを感じることもなく安心感のある動きで、心地よいドライブが楽しめる。思い立ってわざと脇道に入り、森の中を通るルートを選んでみた。きついコーナーが連続して現れ、ハードなブレーキングを強いられる。それでも危ない思いをすることなく結構なスピードで走れるのはたいしたものだ。しばらく遊んだ後、観光道路に戻った。スポーティーな走りができるとはいえ、おおらかな道のほうが得意なクルマである。

帰りの高速道路では、「アダプティブクルーズコントロール」を試してみた。速度と前車との距離を設定しておくと、自動的に追従するシステムだ。レーダーやカメラでまわりをモニターし、さまざまな情報を得て自動的に制御する。後方からくる車両を検知して警告する「サイドアシスト」や車線逸脱を修正する「レーンアシスト」とセットになったオプションだ。設定しようとMMI(マルチメディアインターフェイス)のコントローラーを触ってみたが、何も出てこない。ステアリングコラムに設けられたレバーで操作するようになっていたのだ。ちゃんと取説を読まなくちゃいけない。

今回の改良ではトランスミッションも刷新。7段のデュアルクラッチ式セミATから「ティプトロニック」と呼ばれる8段のトルコンATに変更されている。
今回の改良ではトランスミッションも刷新。7段のデュアルクラッチ式セミATから「ティプトロニック」と呼ばれる8段のトルコンATに変更されている。 拡大
リアシートは40:20:40の分割可倒式。座面横のレバーで簡単に倒すことができる。
リアシートは40:20:40の分割可倒式。座面横のレバーで簡単に倒すことができる。 拡大
荷室容量は、後席を起こした状態で540リッター、たたんだ状態で最大1560リッターを確保。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
荷室容量は、後席を起こした状態で540リッター、たたんだ状態で最大1560リッターを確保。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます) 拡大

自動的にステアリングホイールが……

クルーズコントロールを作動させるとメーターパネル内にアイコンが表示され、システムがオンになったことを知らせる。自動運転というのは最初は不安だが、慣れれば楽ちんだ。しっかり車間距離を守り、前のクルマが減速すればそれに合わせて速度を落とす。作動の仕方は、他メーカーの同種のシステムと比較すると穏健なほうだ。「マツダ・アテンザ」は過敏なほどの反応を示したが、Q5は前車の動きから半拍遅れて動きを変えるイメージだ。高速道路ではこの機能を使って運転したほうが燃費は良くなるだろう。

しばらくすると、妙な動きに気づいた。時折、ハンドルをとられるのだ。路面がうねっているのかと思ったが、そんなことはない。パワーステアリングの不具合か、といぶかしく思いかけたところで、メーターパネルに道路のアイコンが点灯していることに気づいた。そういえばレーンアシスト機能をONにしていたのである。レーンから外れると警告音で知らせるタイプのものが多いが、アウディのシステムは車線に近づくとステアリングホイールを自動的に補正してドライバーに知らせるようになっている。やはり、取説は読んでおくべきなのだ。

この試乗車ではトータルで930kmほど走り、燃費は満タン法で8.9km/リッターだった。走りのスポーティーさを考えれば、ミドルサイズのSUVとしては申し分のない数字だろう。洗練度を増した上に、燃費まで向上させてくるとは……。今回もさしたる弱点を見つけることなく試乗を終えることになった。書き手泣かせではあるが、もちろん買う人にとっては朗報である。

(文=鈴木真人/写真=小林俊樹)


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車線から逸脱しそうになるとステアリング操作を自動修正するレーンアシスト機能は、アダプティブクルーズコントロールなどとともにセットオプションで用意される。
車線から逸脱しそうになるとステアリング操作を自動修正するレーンアシスト機能は、アダプティブクルーズコントロールなどとともにセットオプションで用意される。 拡大
【テスト車のオプション装備】車体色<デイトナグレー>=7万5000円/S-Lineパッケージ=25万円/8.5J×20インチ 5アームデザインアルミホイール+255/45R20タイヤ=25万円/電動パノラマサンルーフ=24万円/オートマチックテールゲート=9万円/アシスタンスパッケージ=15万円/バング&オルフセン サウンドシステム=15万円
【テスト車のオプション装備】車体色<デイトナグレー>=7万5000円/S-Lineパッケージ=25万円/8.5J×20インチ 5アームデザインアルミホイール+255/45R20タイヤ=25万円/電動パノラマサンルーフ=24万円/オートマチックテールゲート=9万円/アシスタンスパッケージ=15万円/バング&オルフセン サウンドシステム=15万円 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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