ルノー・メガーヌ ルノースポール(注文生産オプション 19インチホイール)(FF/6MT)【試乗記】
ニュル最速はダテじゃない 2013.02.01 試乗記 ルノー・メガーヌ ルノースポール(注文生産オプション 19インチホイール)(FF/6MT)……422万円
ルノーのハイパフォーマンスクーペ「メガーヌR.S.」で、筑波サーキットをタイムアタック。その走行性能を確かめた。
『CG』2013年3月号には、今回のタイムアタックの様子を荒 聖治氏が自ら記したインプレッションが掲載されています。併せてご覧ください。
日本のコースで速さを実証
キリッと冷え込んだ筑波サーキットのパドックに、深みのあるイエローに塗られた2013年モデルの「ルノー・メガーヌ ルノースポール(以下、R.S.)」が現れた。この「ジョン シリウス メタリック」という名称のボディーカラーは、不思議な色だ。パッと人目を引く華やかさと、落ち着いた品の良さを併せ持っている。
パドックでメガーヌR.S.を出迎えたのは、レーシングドライバーの荒 聖治氏。『webCG』読者にはあえて説明の必要はないかもしれないが、ルマン24時間のウィナーだ。また、フォーミュラ・ニッポンやSUPER GTでも優勝経験があることが、フォーミュラでも“ハコ”でも乗りこなす名手だということを証明している。
今回の企画は、その荒さんがルノー・メガーヌR.S.で筑波サーキットをタイムアタックするというもの。ドイツのニュルブルクリンク北コースでFF車の最速ラップとなる8分7秒97をたたき出した実力を、日本でも確認したいと考えたのだ。
ちなみにニュルブルクリンクのラップタイムでメガーヌR.S.に続くのは先代メガーヌの「R26.R」で8分16秒、第3位が「MINIジョンクーパーワークス GP」で、8分23秒。ここから読み取れるのは、ルノーが高性能FF車作りの手練れであることと、現行メガーヌR.S.が抜きんでた速さを持っているということだ。
トップドライバーが全開でタイムアタックすると、メガーヌR.S.はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか? スタッフの誰よりも早く筑波サーキットに到着していたことからも、荒氏の気合が伝わってくる。
素直なコーナリング特性がポイント
ルノー・メガーヌR.S.は2012年夏にマイナーチェンジを受けている。タイムアタックが始まるまでの時間を利用して、マイチェンで変更された箇所をおさらいしておこう。
まず、日本仕様はハンドル位置が右だけとなった。エンジンは、最高出力が250psから265psに、最大トルクも34.7kgmから36.7kgmへとパワーアップしている。外観にもお色直しが施され、LEDが片側に6個並ぶポジショニングランプがフロントバンパーに備わるようになった。
サーキットの占有時間が始まるのを待ちながら、荒氏にメガーヌR.S.をドライブした経験はあるかと尋ねる。
「今日が2回目で、初めて乗ったのは富士スピードウェイでした。第一印象はすごくよかったです。FFなのにステアリング特性がニュートラルで、素直に曲がってくれた。筑波サーキットは富士スピードウェイより平均速度が低いけれど、そのぶんタイトなコーナーが続きます。このコースでも素直に曲がってくれるか、そのあたりが今日のポイントだと思います」
コースインの10分前。荒氏がメガーヌR.S.に乗り込み、レカロのスポーツシートに体を滑り込ませる。そしてまず、「ESPオフ」のスイッチを長押ししてESPを解除した。
ダッシュボードの「R.S.モニター」には、ブースト圧や出力、前後左右の加速G、0-400mのタイムなどが表示できるけれど、それだけではない。アクセルペダルの操作量に対するアクセル開度を5段階で変更できるのだ。荒氏はもちろん、もっともレスポンスの鋭いセッティングを選ぶ。
なお、今回試乗した個体は、19インチタイヤを装着している。銘柄は、ルノースポールとブリヂストンが共同で開発した「ポテンザS001」。メガーヌR.S.がサーキットで最高のパフォーマンスを発揮できるようなチューニングが施されているという。サイズは235/35R19だ。
目指すは「1分7秒台」
いかにもヌケのよさそうな、乾いた排気音を残してメガーヌR.S.がピットレーンを加速していく。タイヤを温めながら1ラップして、2周続けてタイムアタック。1周目が1分8秒302、2周目が1分8秒124。ここで一度ピットインして、タイヤのコンディションを確認する。
荒氏の表情がさえない。1分7秒台で走れるのではないかと期待されていたものの、何かがうまくいっていない様子だ。鋭い口調で、前後タイヤの空気圧のチェックを求めた。自身は一度マシンから降り、タイヤに手を当てて温まり具合を確認する。
スタッフから「フロントが3.0(kg/cm2)、リアが2.6(kg/cm2)」という空気圧の報告が入ると、荒氏は「前を2.3に下げてください。後ろはいい感じです」と指示した。
2度目のタイムアタック。同じように1周してから、2度のフライングラップをとる。1周目が1分8秒037、2周目が1分8秒166。どうしても7秒台に入らない。ここで再びピットイン。荒氏の口からは「タイヤのおいしいところが限られているので、きちんと温めて一発勝負ですね」という言葉が出る。ここでフロントの2本だけを交換する。そして荒氏は、「リアの空気圧は2.6のままでいいけど、フロントは2.2まで下げてください」と指示を出した。
タイヤは2セットしか用意されていない。果たして最後のニュータイヤで目標タイムである7秒台に突入できるのか。運命の3度目のタイムアタックが始まる。
基本性能の高さが光る
いままでとは、最終コーナーを脱出する時のスピード感が違う。ソリッドな排気音を響かせながらメガーヌR.S.はホームストレートを疾走。コントロールタワーを通過すると、計測器の画面に「1分7秒502」のタイムが表示された。やった!
無線で目標達成の報(しら)せを受けた荒氏が、ゆっくりとピットに戻ってくる。そしてメガーヌR.S.から降りるなり、「タイヤの使い方がシビアだった」とつぶやいた。
では、筑波サーキットのコース図を見ながら、あらためて荒氏にメガーヌR.S.のインプレッションをお願いしよう。
まず最終コーナーを抜けてのストレート。このストレートは280mと距離が短い。
「ストレートエンドは4速ですね。速度計は見ていないけれど、フルブレーキングでブレンボのブレーキシステムの強力さがわかります。何周かしても、効きが変わらないのもありがたかった」
ここから進入する第1コーナーは、入り口の55Rから出口の35Rへとタイトになっていく複合コーナーだ。
「ここでアンダーが出ないでしっかり向きが変わるから、気持ちよくS字に入っていけます」
S字を気持ちよく抜けた先は第1ヘアピン。
「筑波でタイムを出すコツは、ふたつのヘアピンでのタイムロスを減らすこと。その点、メガーヌR.S.はシャープに向きを変えて早いタイミングでスロットルを開けられるのがいいですね。フロントの機械式LSDも効いていると思います」
そしてダンロップコーナーに80Rという中高速コーナーが続く。
「ここも気持ちよかったですね。思った通りのラインが取れる。FFのハイパワーモデルって、ESPをオフにすると操縦性が別物になるケースがほとんどなんだけれど、メガーヌR.S.はESPをオフにしても変わらない。最終コーナーでも感じましたが、ESPオフでも安定して速いのは、基本性能が高いからでしょうね」
荒氏のコメントの中で、レーシングカー的なタイヤの温め方や内圧のセッティングに距離を感じた方もいるかもしれない。
確かに、通常のスポーツドライビングとは少し次元が違う。ただ、はっきりと言えるのは、メガーヌR.S.はレーシングカーと同じぐらい繊細かつシビアに、タイヤの温度や内圧をコントロールできる乗り物であるということだ。タイムだけでなく、そうした乗り方ができることも、ルノー・メガーヌR.S.のポテンシャルが高いことの証左だろう。
次回はさらに平均速度の高いコースで、メガーヌR.S.を限界近くまで攻め込んでみたい。
(語り=荒 聖治/まとめ=サトータケシ/写真=荒川正幸、小河原認)

荒 聖治
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