メルセデス・ベンツC180ステーションワゴン(FR/7AT)/E250(FR/7AT)【試乗記】
選ぶ価値あるエントリーグレード 2013.01.15 試乗記 メルセデス・ベンツC180ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン アバンギャルド(FR/7AT)/E250ブルーエフィシェンシー アバンギャルド(FR/7AT)……489万4000円/687万4000円
熟成が進む「Cクラス」「Eクラス」の1.8リッター直噴ターボ搭載モデルに試乗。スポーティーなしつらえが人気の「アバンギャルド」仕様の印象は?
「C180」に加わった“アバンギャルド”仕様
メルセデス・ベンツの看板モデルである「Cクラス」と「Eクラス」。そのラインアップのなかから、ベースグレードのひとつ上、つまり下から2番目の“準エントリーグレード”を選んで試乗した。
Cクラスはワゴンボディーの「C180ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン アバンギャルド」、Eクラスはセダンの「E250ブルーエフィシェンシー アバンギャルド」。どちらも、1.8リッター直列4気筒直噴ターボエンジンと、スポーティーな装いが人気の“アバンギャルド”仕様を採用するのが共通点だ。
最初に試したのは、2012年7月に追加されたC180ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン アバンギャルド。それまでのCクラスは、セダン、ワゴンともに、ベースグレードのC180は落ち着いた雰囲気の“エレガンス”仕様で、C200/C250/C350はすべてグリル内にスリーポインテッドスターが配される“アバンギャルド”仕様だった。
C180でもオプションの「AMGスポーツパッケージ」を選択すればアバンギャルド風に変身できたが、人気のアバンギャルドをC180にも……ということから、ひとつのグレードとして独立したのがこのC180アバンギャルドということになる。
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熟成が進んだ「Cクラス」
価格は、素のC180がセダン:399万円、ステーションワゴン:419万円であるのに対し、C180アバンギャルドはそれぞれ50万円高の449万円と469万円。その中には、エクステリアをスポーティーに彩る「AMGスタイリングパッケージ」に加え、バイキセノンヘッドライトやLEDライトが装着される「アドバンストライトパッケージ」、メモリー付きパワーシートなどが含まれている。また、セダンでは、後席が分割可倒式になるのもうれしい点だ。
というわけで、スポーティーなエクステリアと快適装備が追加されるC180アバンギャルドなのだが、走らせてみると実に完成度が高く、満足のいく仕上がりの一台だった。
同じ1.8リッター直4ターボでも、C200が184ps/27.5kgm、C250が204ps/31.6kgmのパワー/トルクを発生するのに対し、このC180は156ps/25.5kgmとやや控えめ。しかし、比較的コンパクトなCクラスのボディーに対してパワーが不足しているどころか、余裕すら感じられるほど。5000rpm超までスムーズに吹け上がるエンジンが、ストレスのないドライブを楽しませてくれるのだ。組み合わされる7段オートマチックトランスミッションも洗練された動きを見せ、まるで嫌みがない。
乗り心地は快い硬さにしつけられ、フラット感もまずまず。17インチタイヤが、低速で多少ショックを伝えてくるが、気になるのはそのくらい。年を重ねるごとに機械としての完成度が高まり、デビュー当初は不評だったインテリアも質感がアップして、今や付け入る隙のないCクラス。その魅力は、このC180アバンギャルドでも存分に堪能することができた。
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「E250」の印象が変わった!
もう1台の準エントリーグレードであるE250ブルーエフィシェンシー アバンギャルドは、以前から用意されていたグレードだが、2012年5月の変更で“パノラミックスライディングルーフ”がオプション装備になり、価格が43万円引き下げられて655万円になった。ベースモデルの「E250ブルーエフィシェンシー」が595万円だから、プラス60万円でこのアバンギャルドが手に入るようになったのは、スポーティーな雰囲気を好むユーザーには見逃せないだろう。なお同時に、これまで設定のなかったE250のステーションワゴンにもアバンギャルド仕様が追加されている。
それはさておき、E250に乗るのは2009年にこのエンジンが追加されたとき以来だから、実に久しぶりである。その当時は組み合わされるトランスミッションが5段オートマチックで、Cクラスならまだしも、Eクラスには物足りないと感じたことを覚えている。しかし、その後の仕様変更でこのE250にも7段オートマチック「7Gトロニック」が搭載されており、内心期待しながらの試乗になった。
出足こそ1720kgという車両重量を感じさせるE250アバンギャルドだが、以前に比べるとその印象が薄らいだのは7Gトロニックのおかげだろう。そして、走りだしてしまえば、必要十分な加速を見せてくれるし、6000rpmを超えてもなお伸びるエンジンはなかなか頼もしい。
一方、18インチタイヤとスポーツサスペンションが装着されるアバンギャルドは、フラット感は抜群ながら、路面によってはタイヤがバタつくこともあった。それが気になるようなら、17インチタイヤとノーマルサスペンションを備える標準タイプのE250を検討してみるのもいいだろう。
いずれにせよ、1.8リッター直4エンジンと7段オートマチックトランスミッションを搭載するE250が、魅力的なグレードに進化したのは確か。燃費の点でもこのエントリーグレードをお薦めしたい。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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