フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)【試乗記】
滑らかに速いスピードワゴン 2012.09.10 試乗記 フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)……494万円
「パサートヴァリアント」をベースにクロスオーバーなスタイリングと「4MOTIONトラック」が与えられた「フォルクスワーゲン・パサートオールトラック」。その走りを確かめた。
断トツの高付加価値モデル
どんな道でも走れるから、“オールトラック”。「パサートヴァリアント」をベースにした4WDモデルだ。フォルクスワーゲンにとって、しばらくコマを欠いていた乗用車タイプ4WDモデルの復活でもある。
これまでどおり、ハルデックスカップリングを使った4WDで、通常はほぼ完全にFF。前輪が空転すると、後輪にトラクションを分配する。
パサートといえば、現行世代でエンジンを一気にダウンサイジングし、日本仕様は1.4リッターターボになった。しかし、オールトラックは「ゴルフGTI」と同じ2リッターターボを積む。ありゃりゃ、リバウンドかと思えばそうではなく、旧型の「パサートヴァリアントV6 4MOTION」が3.2リッターだったことを考えると、2リッター化でダウンサイジング達成、という理屈である。
試乗車は純白。この色だと余計に目立つ前後ホイールアーチのミニオーバーフェンダー風ガーニッシュがオールトラックの一大識別点だ。ホイールも16インチのヴァリアントに対して、18インチが標準。単にパサートヴァリアントを四駆化したというのではなく、控えめながら、「アウディ・オールロードクワトロ」のようなスポーティー4WDワゴンの雰囲気も狙っているやに見える。
と思って乗り込むと、中はまじめだった。というか、ウッドデコラティブパネルが貼られたダッシュボードやナパレザーのシートなどをしつらえた室内には高級感が漂う。オールトラックは「パサートヴァリアントTSIハイライン」より約100万円高い494万円。パサートシリーズのなかでも断トツの高付加価値モデルである。
素早い変速機
ゴルフGTIのエンジンを積んだパサート! と言われても、あまり盛り上がらないのは、パサートのほうがゴルフより大きいからである。GTIの車重は1400kg。それに対してオールトラックは1670kgある。これじゃあ「羊の皮を着た狼」にはなれないだろう、と即断するのは間違いだ。オールトラックはなかなかのスピードワゴンである。
高性能エンジンというほどのパワフルさがあるわけではないが、スタートダッシュも追い越し加速もヒュワーッと滑らかに速い。一人乗車では1.7トン近い車重をまったく感じさせないクルマである。
変速機はゴルフGTIと同じパドルシフト付きの6段DSG。1.4リッターのパサートよりギアは1段少ないが、エンジンの持てる力をフルに引き出すDSGの本質に変わりはない。211psのエンジンも速いが、変速機も速い。
100km/h時のエンジン回転数は6速トップで2000rpm。「ポルシェPDK」のようなコースティング機能こそ付いていないが、最近のDSGは町なかでもとにかくあわよくばエンジン回転数を下げよう下げようとする。省燃費のためにそんなしつけが可能なのも、一朝事あれば、即座にキックダウンして加速に移れる速い変速機があればこそだ。軽いアクセルペダルを踏み込んでキックダウンを効かすと、アイドリング近くまで下がっていたタコメーターの針が、びっくりしたようにピクンと跳ね上がる。それが昔のレーシングカーに付いていた機械式タコメーターを彷彿(ほうふつ)させておもしろい。
今回、燃費はとれなかったが、JC08モードのカタログ値は11.6km/リッター。1.4リッターのヴァリアントTSIハイライン(17.6km/リッター)にはかなり差をつけられている。
広い荷室がアドバンテージ
160mmの最低地上高はFFのヴァリアントより30mm高い。実際には運転席だともっと高床に感じる。乗用車四駆としてはかなりのハイライダーである。
そんなキャラクターに誘われて舗装路を外れるとき、センターフロアにあるオフロードスイッチは便利だ。ボタンを押せば、ヒルディセントアシストがオンになり、エンジンや変速機やエレクトロニックデフロックの制御がオフロード仕様に変わる。「ティグアン」にも装備されているお手軽機構だ。
サスペンションはかなり硬めにしつけられている。ヨーロッパのバカンスシーズン、こういうクルマはたしかに貨物車として無慈悲に積まれる。ということを想定してのセッティングだとしても、空荷での乗り心地は少し硬過ぎる。バネ下が軽い感じはワルくないのだが、ダンパーが突っ張っているような印象で、高速道路の継ぎ目の乗り越しで発生する突き上げがちょっと鬱陶(うっとう)しい。「500万円の高級ワゴン」と考えると、足まわりにもう少ししなやかさがほしい。
フォルクスワーゲンの四駆なら、もっと安くて乗り心地もすごくいいティグアンがある、と、個人的には思うが、コンパクトSUVにはないアドバンテージは広い荷室である。後席を倒してフラットにすると、カーペットの上だけで177cm(実測)の奥行きがとれる。ボディー全長は「ボルボV70」より4cm短いのに、荷室(V70は同168cm)はひとまわり大きくて、しかも4WD。そのへんがオールトラックの魅力だろう。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。































