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【スペック】全長×全幅×全高=4625×1890×1715mm/ホイールベース=2775mm/車重=1930kg/駆動方式=4WD/3リッター直6DOHC24バルブターボ(304ps/5600rpm、44.9kgm/2100-4200rpm)/価格=609万円(テスト車=648万円/ファミリーパッケージ=4万円/セーフティパッケージ=20万円/エクステリア・スタイリング・パッケージ=15万円)

ボルボXC60 T6 AWD SE(4WD/6AT)【試乗記】

自由を得るツール 2012.08.05 試乗記 鈴木 真人 ボルボXC60 T6 AWD SE(4WD/6AT)
……648万円
アウトドアのお供に選んだのは、ボルボの中ではコンパクトなクロスオーバーモデル「XC60」。3リッターターボエンジンを積んだ「T6」に乗り、新潟のキャンプ場を目指した。
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洗練をまぶしたワイルド

ベージュと濃茶のツートンでまとめられたシートは、いかにも都会的なセンスだ。お得意のフリーフローティングセンタースタックには、表面が少しざらついたベージュのオークを使い、温かみを加えている。工業製品でありながら、どことなく自然とのつながりを感じさせるのだ。文句のつけようのない、心地のよい空間である。ゴテゴテと装飾を重ねていくのではなく、要素を減らして機能美を追求する。いかにもな言葉は使いたくないけれど、スカンジナビアデザインのお手本のようだ。

また今回も、デザインの話から始めてしまった。しかし、最近のボルボは、そういうクルマなのだから仕方がない。「XC60」は、コンパクトなクロスオーバーという位置づけである。エクステリアも、武骨さとは無縁だ。流麗さでは「V60」に一歩譲るものの、張り出したショルダーが力感を生んで落ちついた威厳がある。

かつては、アウトドア用のクルマは見た目も乗り味もワイルドなのが当たり前だった。スギちゃんの“ワイルドだゼェ”はネタでしかないけれど、70年代初頭のワイルドブームはガチだった。CMではチャールズ・ブロンソンの“うーん、マンダム”と三船敏郎の“男は黙ってサッポロビール”が流行し、もみあげを長く伸ばした尾崎紀世彦の「また逢う日まで」が大ヒットした。野性味を帯びた男くささがもてはやされたのだ。

そういう時代は、クルマだってむしろ粗野が価値だったりもした。今はワイルドさにも洗練をまぶさなければならない。XC60は、そもそもラフロードを走ることが目的ではなく、都会の人間が自然の中でレジャーを楽しむためのクルマだ。今回の試乗では、ちょうどいいコースが用意されていた。東京から新潟県三条市のキャンプ場を目指した。


ボルボXC60 T6 AWD SE(4WD/6AT)【試乗記】の画像 拡大

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ソフトベージュとエスプレッソブラウンのコンビシート。そのほかオフブラック、ソフトベージュが用意される。いずれも本革シート。
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ものすごくうるさくて……?

カメラ機材を積んでいても、3人乗車ならラクラクだ。先日4人で「V60」に乗った時も十分なスペースがあったが、比べるとやはりXC60は余裕がある。全長と全幅はそれほど変わらないが、全高が235mm違うのが大きい。シートは大きめで、包み込まれるような安心感がある。見下ろすほどではないが、ドライバーズシートの視点は高めだ。それでも乗り込む時によじ登る必要はないのがクロスオーバーらしいところだ。

センターパネルには真ん中にシートを模した形状のエアコン調整ボタンがあり、ああボルボだなあ、と実感する。カーナビの操作も含め独自のインターフェイスを持っているのだ。使いやすいかどうかは議論が分かれそうだが、信念に基づいているのだろう。

それ以外は、ごくまっとうなつくりだ。質感は良いが、偉そうではない。高級そうに見せるより、機能を優先しているようで好感が持てる。ボルボのユーザーがおっとりした人に見られがちなのは、こういうところにも理由があるのだろう。これ見よがし、押し付けがましさなどとは遠いところに位置している。

室内は基本的には静かなのだが、時折ものすごくうるさくなる。警告音が鳴り響くのだ。うっかりホワイトラインをまたぐと、「レーン・デパーチャー・ウォーニング」が働いて盛大にアラート音を奏でる。もし居眠り運転していてもすっかり目が覚めてしまいそうな音量だ。運転者の意図的な動作でないと判断した場合にのみ機能するので、ウインカーを出さずに車線変更するような悪質な運転者にも脅威となるはずだ。

もう一つは、シートベルト未着用の警告音だ。こちらのほうが、もっと音が大きい。後席の乗員が手荷物に手を伸ばすために一瞬ベルトを外しただけで、派手に警鐘が乱打される。そこまで大音量でなくてもと思うが、安全の分野では誰にも譲れないという覚悟が伝わってくる。何しろボルボのウェブサイトでは、クルマの装備の説明でエンジンやデザインを後回しにしてセーフティーの項目が最初に置かれているのだ。


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40:20:40分割可倒式のリアシート。バックレストを前に倒すことで、荷室スペースをアレンジすることができる。
40:20:40分割可倒式のリアシート。バックレストを前に倒すことで、荷室スペースをアレンジすることができる。 拡大
「ブラッククローム」のアルミホイール。タイヤサイズは235/55R19。
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謙虚なストレート6

関越道には、後ろを見ずにのんびりと走るドライバーが時々現れる。でも、追い越しをかける時には気持ちのいい音とともに十分なスピードを供給してくれるから安心だ。マイルドな性格のクルマではあるが、試乗車は「T6」である。泣く子も黙るストレート6を搭載していて、ワイルドなキャラを秘めているのだ。

そうはいっても、そのままアクセルを踏み続けてかっ飛んでいこうという気にさせないのがこのクルマの謙虚なところである。パワーにまかせてオラオラ系の走りになってしまうことはない。304psというのは十分以上の力なのだが、ターボの過給に劇的な演出はなく、必要以上にスピードを出すように促したりはしないのだ。警告音こそないものの、それも安全に寄与する性能だろう。インテリアの雰囲気も含め、それがボルボの一貫した性格だ。

夜のバーベキューの材料を仕込むため、寺泊に寄った。魚介類を大量に買って発泡スチロールの箱に詰め、荷室に入れる。大きな箱だが、余裕である。ただ、床が上品なカーペットなので、生臭い水がこぼれないように気を遣わなければならなかった。多少の泥や汚れもOKというような、思いっきりのアウトドア仕様ではない。

到着したのは、アウトドア用品の総合メーカーである「スノーピーク」本社に併設されているオートキャンプ場だ。夏休み前の平日なのでほかに訪れる客もない。緑一色の広大な丘陵にたたずむXC60は、街の中にいるより気分がよさそうに見える。テントやバーベキュー用具を積み込んで、山や海を目指すというのが、このクルマには似合っているのだろう。約350kmを走っていささかも疲れを感じなかったということは、この目的に見合った性能を有している証しである。

野山の荒れた道をものともせず、縦横無尽に駆けめぐるクルマは頼もしい。ただ走ることを目的として乗るクルマは、楽しみを与えてくれる。XC60は、いずれでもない。タフで洗練された実用車なのだ。自由を得るツールとして優秀な乗り物なのである。

(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)

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「T6」に搭載される304psの3リッターターボエンジン。
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標準装備されるパワーテールゲートは、リモコンによる操作やダッシュボードにあるスイッチ操作でも開くことができる。
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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