ボルボXC60 T6 AWD SE(4WD/6AT)【試乗記】
自由を得るツール 2012.08.05 試乗記 ボルボXC60 T6 AWD SE(4WD/6AT)……648万円
アウトドアのお供に選んだのは、ボルボの中ではコンパクトなクロスオーバーモデル「XC60」。3リッターターボエンジンを積んだ「T6」に乗り、新潟のキャンプ場を目指した。
洗練をまぶしたワイルド
ベージュと濃茶のツートンでまとめられたシートは、いかにも都会的なセンスだ。お得意のフリーフローティングセンタースタックには、表面が少しざらついたベージュのオークを使い、温かみを加えている。工業製品でありながら、どことなく自然とのつながりを感じさせるのだ。文句のつけようのない、心地のよい空間である。ゴテゴテと装飾を重ねていくのではなく、要素を減らして機能美を追求する。いかにもな言葉は使いたくないけれど、スカンジナビアデザインのお手本のようだ。
また今回も、デザインの話から始めてしまった。しかし、最近のボルボは、そういうクルマなのだから仕方がない。「XC60」は、コンパクトなクロスオーバーという位置づけである。エクステリアも、武骨さとは無縁だ。流麗さでは「V60」に一歩譲るものの、張り出したショルダーが力感を生んで落ちついた威厳がある。
かつては、アウトドア用のクルマは見た目も乗り味もワイルドなのが当たり前だった。スギちゃんの“ワイルドだゼェ”はネタでしかないけれど、70年代初頭のワイルドブームはガチだった。CMではチャールズ・ブロンソンの“うーん、マンダム”と三船敏郎の“男は黙ってサッポロビール”が流行し、もみあげを長く伸ばした尾崎紀世彦の「また逢う日まで」が大ヒットした。野性味を帯びた男くささがもてはやされたのだ。
そういう時代は、クルマだってむしろ粗野が価値だったりもした。今はワイルドさにも洗練をまぶさなければならない。XC60は、そもそもラフロードを走ることが目的ではなく、都会の人間が自然の中でレジャーを楽しむためのクルマだ。今回の試乗では、ちょうどいいコースが用意されていた。東京から新潟県三条市のキャンプ場を目指した。