ルノー スポーツモデル サーキット試乗会【試乗記】
走りがキモの品ぞろえ 2012.08.02 試乗記 ルノー・メガーヌ ルノースポール(FF/6MT)/メガーヌ エステートGT(FF/6MT)/トゥインゴ ゴルディーニ ルノースポール(FF/5MT)……449万円/315万円/245万円
大メーカーらしからぬ(?)個性的なラインナップがクルマ好きの心をとらえる“日本の”ルノー。今回は、ルノースポールの手になる最新スポーツモデル3台をサーキットで試した。
メガーヌ ルノースポール
あまり人が乗っていなくて、3ペダル式のMTで、舶来品。ハンドリングがよくてスポーティーかつ実用的。カッコよくて、内容を考えるとリーズナブルな価格で、「でも、左ハンドルなんだよなぁ……」
「ルノー・メガーヌ ルノースポール」を購入するにあたっての、最後の障害が取り除かれた! 2012年7月12日から販売された新しいメガーヌ ルノースポールは、待望の右ハンドル車。そのうえ2リッター直4ターボエンジンはチューンを高め、旧バージョンの最高出力250psから265psにパワーアップ(ESP スポーツ/ESP OFFモード)。発生回転数は5500rpmと変わらない。最大トルクも36.7kgm/3000rpmと2kgm太らされた。もし旧版メガーヌ ルノースポールと「ヨーイドン!」をすると、ニューモデルのほうが0.1秒速く100km/hに達するはずである。所要時間は6.0秒。
グリル左右に、ポジショニングランプとして6個のLEDを使ったニュー・メガーヌ ルノースポール。同じ黄色でも、より鮮やかな「ジョン シリウス メタリック」でペイントされる。サポート部に人工皮革をあしらうようになったレカロのバケットシートに抱かれて走り始めれば、初めてメガーヌ ルノースポールに乗ったときの感動が鮮やかによみがえる。ガッシリしたボディー。剛性感あるシフトフィール。しっかりした足まわり。
ミディアムスピードで抜けるカーブにバーン!とクルマを放り込めば、ちょっとオーバースピードかな?と感じても、一瞬待てばアクセルワークで自在にノーズの向きをコントロールできる。素晴らしいハンドリング。聞けば、メガーヌ ルノースポールは、ニュルブルクリンク北コースにおける最速量産FF車なんだとか(2012年7月時点)。当地でのラップタイムは、8分7秒97。日本での価格は、385万円。夢のFFスポーツだ。
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メガーヌ エステートGT
本国では押しも押されもしないフルラインナップメーカー。基本、大衆のアシとして活躍しています……。そんな(ルノーの)アイデンティティーをあっさり捨て去り、輸入車としてキャラが立ったモデルでクルマ好きのツボを刺激する。
「うまいことやってるなぁ」とクルマ業界の人を感心させているのが、ルノー・ジャポンである。
わが国での主力商品は、ベーシックな「クリオ(ルーテシア)」というより、商用車的な「カングー」で、本国では「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のライバルのはずの「メガーヌ」は、普通のハッチバックよりむしろルノースポールの方が売れている。メガーヌ ルノースポールの左ハンドル車は早めに輸入を切り上げる予定が、受注が途切れず、結局、492台を売り上げたという。小さいけれど、確実に存在する“好き者”マーケットをしっかり捉えた結果だろう。
今回、メガーヌのワゴンを導入するにあたっても、まずは3ペダル式の6段MTモデルからというのがおもしろい。そのクルマ、「メガーヌ エステートGT」は、ルノースポールが“スポーツ”のスパイスを利かせたグランドツーリングワゴン。しかも、ホイールベースをハッチバックより60mm延ばした本格派だ。荷室容量は486リッター。後席を倒せば、1516リッターまで拡大する。
最高出力180ps/5500rpm、最大トルク30.6kgm/2250rpmの2リッター直4ターボエンジンを搭載。0-100km/h=8秒というから、なかなかの快速ワゴンだ。サスペンションにはスポーツサスがおごられ、破綻なくカーブをこなしていく。ハッチバックモデルより、フロントで10%、リアで6%、スプリングレートが上げられた。6段MTを繰ってサーキットを走らせても楽しいクルマだが、もちろん、遊びや仕事の積み荷を満載してハイウェイを行くのが本来の姿だろう。
左ハンドルでマニュアル。本国に近い、メガーヌエステートの素性のよさを堪能できる仕様といえる。チューンも過剰でないから、実際に“荷車”として使うにしても、飽きが来ない相棒になりそうだ。315万円。60台の限定販売のうち、既に3分の2が売約済み(2012年7月現在)というから、欲しい人は、ルノーの販売店へ、急げ!
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トゥインゴ ゴルディーニ ルノースポール
ルノーのボトムレンジ「トゥインゴ」がデビューして6年目。今度の「トゥインゴ ゴルディーニ ルノースポール」は、コロンとしたフォルムはそのままに、フロントに2つのフォグランプが埋め込まれ、顔付きが大きく変えられた。カタログには「R8ゴルディーニ」がよみがえったとうたっているけれど、日本国内では「『日産ジューク』みたいな?」と説明したほうがわかりやすいかもしれない。リアのコンビネーションランプも、ボディー部とハッチ部に分けて配されるようになった。
最高出力134ps、最大トルク16.3kgmの1.6リッター直4エンジンと3ペダル式5段MTを組み合わせる動力系は変わらない。膨らんだフェンダーに収められるタイヤも、195/40R17のままだ。
車内には、「ゴルディーニ」を表す青色が随所に配される。赤のアバルト、青のゴルディーニと、頭の中に楽しい対比が浮かび上がる。ハンドルの頂部には2本のホワイトライン。その奥には大きなタコメーター。レーシィだ! 「GORDINI」の文字が入る丸いシフトノブを握ってコースインすると、ツインカムユニットはビンビン回る。すぐにタコメーター内のインジケーターが赤く光って、シフトアップを促す。ドライバーは忙しい。
コンパクトなフレンチハッチには、もう少ししなやかな足でボディーをロールさせたほうが“らしい”気もしたが、まあ、21世紀のゴルディーニですから。ちょっとばかりレッドブルを飲み過ぎちゃったルノー・トゥインゴ。「ボーイズレーサー」なんて単語に反応するヤング・アット・ハートな紳士にもオススメ。245万円。
(文=青木禎之/写真=高橋信宏)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。