フォルクスワーゲン・ザ・ビートル デザイン レザーパッケージ(FF/7AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ザ・ビートル デザイン レザーパッケージ(FF/7AT) 2012.08.01 試乗記 ……303万円総合評価……★★★★
「ビートル」の名で親しまれた名車の復刻版たる、「フォルクスワーゲン・ザ・ビートル」。クルマとしての仕上がりはどうなのか? 項目ごとにチェックした。
素性のよさに妄想が膨らむ
まるでバウハウスを思わせるデザインを優先した先代モデル「ニュービートル」と違い、オリジナルの「タイプ1」により近い造形となり、男性的な雰囲気もたたえるようになった「ザ・ビートル」。真横からのシルエットを見れば、長めのボンネットに角度の立ったAピラー、後端までスッと伸びたルーフラインなどで、タイプ1との類似性およびニュービートルとの違いがわかるだろう。
ファニーなニュービートルに比べると、自動車らしさを取り戻したことで走りの良さも予感させる。どことなく「ポルシェ911」に似た面影があるのは、祖先がつながっているからだろう。
シャシーは「ゴルフ」と共通かと思えば、そうではない。リアサスペンションはマルチリンク式ではなくトレーリングアーム式なのだ。実は、日本に導入されていない2リッターターボモデルはマルチリンク式になっており、2種類用意されているのだ。最近のフォルクスワーゲンは、北米向けの「ジェッタ」にも見られるように、グレードに合わせてサスペンションを使い分けるということもしている。
現在日本に導入されているザ・ビートルのパワートレインは、1.2TSI+7段DSGのみ。これはこれで最近のフォルクスワーゲンらしく“優等生”で、よくできている。しかも西海岸のビートル的な、ちょっとユルい乗り味もあって「ニクい演出!」と思わず膝をたたきたくなるが、男性的で「911」をもほうふつとさせるスタイリングを眺めていると、もっとスポーティーなモデルの登場に期待を寄せてしまう。
このカタチで「ゴルフR」ぐらい気合の入ったスポーティーバージョンが出たならば、それこそベビー・ポルシェのような存在になること間違いなしだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
フォルクスワーゲンの「ザ・ビートル」は、1950年代の名車として知られる「タイプ1」(通称:ビートル)のイメージを受け継ぐ3ドアハッチバック車。同様のリバイバル車としては、1998年に「ニュービートル」が発売されており、今回のテスト車「ザ・ビートル」は、その後継モデルといえる。
2011年4月18日に世界初公開。2011年秋に北米で発売されたのを皮切りに、欧州、アジア、南米と、グローバルな市場で販売される。
空冷の水平対向エンジンをリアに搭載し後輪を駆動したオリジナルと異なり、パワーユニットはフロントに鎮座。駆動方式はニュービートルと同様にFFとなる。日本に導入される「ザ・ビートル」のエンジンは、最も排気量の小さな1.2リッター直4ターボ1種類のみ。組み合わされるトランスミッションも7段DSGに限られる。
(グレード概要)
本国では装備の違いによって3種類の装備ラインが用意される「ザ・ビートル」だが、日本に導入されるのは、内外装にカラーコーディネートが施される「デザイン」と呼ばれる1グレードのみである。内訳としては、250万円のファブリック仕様と303万円のレザーパッケージ仕様の2種類が用意されており、今回のテスト車は後者にあたる。
【車内&荷室】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ニュービートルは、Aピラーおよびフロントウインドウがドライバーから遠かったが、ザ・ビートルではグッと近づき、常識的なレイアウトになった。それに伴い視界は良くなり、車両感覚もつかみやすくなった。
日本に導入される「デザイン」と呼ばれるグレードでは、ダッシュボードがボディー同色となり、1950年代に生まれたタイプ1と同様に上に向かってフタが開くグローブボックス「ビートルボックス」が装備されている。意匠としては円が多用されており、ニュービートルに近いファニーな雰囲気をかもし出す。
フォルクスワーゲン車は全般的に、質感は高くとも地味なことが多い。しかし、ザ・ビートルはポップな雰囲気で気分もアガる。ニュービートルで好評だった一輪挿しは、今後、オプション装備として追加されるようだ。
装備としては、8スピーカーの純正オーディオが標準で、純正カーナビはオプションとしてラインナップ。燃費情報をはじめとする細かなドライビング情報が得られる「マルチファンクションインジケーター」が装備されるなど、他のフォルクスワーゲン車と同様に充実。“遊び心のある優等生”といったところだ。
(前席)……★★★★
現在のラインナップは「デザイン」と「デザイン レザーパッケージ」。前者の前席はファブリックのコンフォートシートで、今回のテスト車でもある後者はレザーのスポーツシートとなる。そのレザーパッケージ、サイドサポートがしっかりしていて体へのフィット感は上々。まだ新品のレザーも張りが強すぎることなくしっとりとしている。
シートやステアリングの調整幅が広く、低く構えてスポーティーなスタイルをとるも、高めにして街中での見晴らし重視とするも自由自在。ゴルフなどと共通の美点だ。
車高はニュービートルよりも低くなり、室内高も38mm低くなっているが、ヘッドクリアランスについては、まったく不満はない。
(後席)……★★★
ザ・ビートルで大きなトピックとなっているのが後席のヘッドルームに余裕ができたことだ。ニュービートルは半円のルーフラインにこだわるあまり、そこは犠牲を強いられていたが、ルーフ部分の延長によって改善された。
室内幅はさほど広くはないが、4人乗りと割り切っているので後席に座っても窮屈な感じはしない。5人乗りのゴルフよりもお尻が落ち着いて快適なぐらいだ。ただし、シートバックが立ち気味なので、存分にリラックスできるというわけでもない。ロングドライブに出掛けるなら、2人乗りまでにしておいたほうが無難だろう。
(荷室)……★★
ラゲッジルームも大きく改善された部分。容量はニュービートルの209リッターから310リッターへと約1.5倍に拡大。横幅はそれほど広くないが、奥行きと深さはたっぷりとしている。後席は50:50の分割可倒式で、荷室容量を最大905リッターにまで広げることができる。
ハッチゲートを採用するため開口部分が大きく、荷物の積み下ろしはラク。ゴルフなどの一般的なハッチバックに比べると、ヒンジが前寄りに位置するためゲートを開けてもリアドアが後ろにせり出してこない。これは狭い場所でも開け閉めが容易というメリットをもたらすが、雨の日に荷物を出し入れする際には人もラゲッジルームもぬれてしまいそうなのが難点だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.2TSIと7段DSGの組み合わせはゴルフやポロでおなじみ。いまさら驚きはしないが、排気量から想像するよりもはるかによく走る。低回転からトルキーなのであまり回さなくても交通の流れにのっていけるという、柔軟性の高さが最大の魅力だ。アクセルを深く踏みこんでいくと、小排気量であるせいかエンジンは活発に回転を上げていき、高回転域でも意外とスポーティー。「低回転域のトルク感に比較して、回してもさほど速度が上がっていかないな……」という感覚はあるものの、ごく一般的なグレードとしては十分パワフルだろう。
ちなみにニュービートルの2リッターNAエンジンは116ps/5400rpm、17.5kgm/3200rpmと極めて近いスペック。車両重量も同じなのでパフォーマンスは同等とみていい。それでいて燃費は8割ほど改善されているのだから、時代の流れを感じざるを得ない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
走り始めて最初に感じるのは、最近のフォルクスワーゲンらしいシャシークオリティーの高さだ。その面では定評があるゴルフに通じると表現してもいいだろう。リアサスペンションの形式の違いから、路面のうねりや凹凸が激しいと、少しばかり左右に揺さぶられるようなところもあるが、街中や高速道路では不満を感じない。ハンドリングも適度な小気味よさと正確さをもっている。
面白いのは、他のフォルクスワーゲン車のように優等生でピシッとしているだけではないところ。いい意味で微妙なユルさがあって、なんとも“ビートルっぽい”のだ。具体的には、路面のアタリ具合が優しく、上下動もややユッタリとしているのだが、その理由は215/55R17というタイヤサイズにあるように思う。それなりに大径だがエアボリュームがたっぷりとしていて、独特の心地いいダンピング特性が得られるのだ。
ステアリングホイールがやや大径なので自然とゆったりしたドライビングになるし、1.2TSIの穏やかなパワー感もマッチしている。基本的にはゴルフ同様の真面目なクルマだが、さじ加減で絶妙なユルさを演出しているのだ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:石井昌道
テスト日:2012年6月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2012年型
テスト車の走行距離:3613km
タイヤ:(前)215/55R17(後)同じ(いずれも、コンチネンタルContiPremiumContact2)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:253km
使用燃料:20.4リッター
参考燃費:12.4km/リッター

石井 昌道
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