マツダMPV Sports 2.3リッター/3リッター(4AT/5AT)【試乗記】
差別化の呪縛 2002.05.15 試乗記 マツダMPV Sports 2.3リッター/3リッター(4AT/5AT) ……308.8/329.3万円 “バタ臭い”というか、どうも違和感を禁じ得ないマツダのTVコマーシャル。指を鳴らしながらジャジーに(?)歌ったり、車内でダンスのステップを踏んだり、「なんかズレてない?」と日頃感じているwebCG記者が、ビッグマイナーチェンジを受けたMPVに乗りに行った。
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電動ドアは10.0万円
「Zoom-zoom-zoom……ハッ!」という歌声とともにTV画面に現われる赤いクルマ。「スポーツカーですか?」って、どう見てもミニバンだろう、と突っ込むのはおとなげないと自らを戒める今日この頃。“走り”がジマンのマツダMPVが、2002年4月16日、ビッグマイナーチェンジを受けた。
内容は、2リッター直4が新開発2.3リッターに、2.5リッターV6が3リッターにそれぞれ拡大された。さらにV6モデルはトランスミッションが5段ATとなった。直4モデルには、FF(前輪駆動)をベースに、多板クラッチを用いたRBC(ロータリーブレードカプリング)式の4輪駆動車も用意される。
2002年5月13日、雨が降りそぼつ河口湖付近で、プレス向け試乗会が開かれた。まず乗ったのは、「Sports」の直4モデル(4WD)。“エアロな感じ”が強まったフロントバンパー、ヘッドランプがキセノン化され、鋭い印象になった顔つきに赤いボディペイントがよく似合う。
Sportsは、前後左右ルーフエンドに空力パーツを装着し、タイヤサイズを215/60R16とノーマルよりひとまわり大きくしたグレードだ。それに伴い、フロントブレーキのディスクも大型化される。カッコだけに終わらないのが、さすが“スポーツ”にうるさいマツダである。
今回のビッグマイナーの目玉は、エンジンのキャパシティアップと、両側スライドドアに「電動」機構をオプションで用意したこと。TVコマーシャルでは、
「両側スライドドアですね?」と念を押され、さらに
「電動両側スライドドアです」と強調される。
「ただしオプションで」と加えないのはちょっとズルい気がするが、価格は10.0万円と良心的だ。もっとも、最初のテスト車は4WDモデルなので、「スライドドアイージークロージャー」は標準で装備されるが、「電動両側スライドドア」は設定されない。
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ミニバンのスポーツカーとしてなら
MPVに新たに採用された2.3リッター直4ユニットは、「MZR(Mazda Responsive)」と名づけられたブランニューエンジンである。マツダのみならず、世界中のフォードグループのクルマに載せられる「グローバル・パワーユニット」。広島工場に加え、チワワ(メキシコ)、ディアボーン(アメリカ)、バレンシア(スペイン)の4工場で、年間150万台が生産される予定だ。「高い技術力を認められ、エンジン開発を一手に引き受けることになりました」(広報資料)と鼻タカダカ。なにはともあれメデタイことです。
ステアリングホイールを握って走りはじめると、MPV、シッカリしている。ボディの剛性感が高い、ステアリングからの路面情報がハッキリ伝わる、そして(ミニバンとしては)足が硬め、といったファクターが効いている。エンジニアの方々、ホントはスポーツカーをつくりたかったんじゃないの?と勘ぐりたくなる感じ。ハンドリングは、ミニバンとして例外的にシャープだ。そのぶん(?)、セカンドシートに座っていると意外に突き上げを感じ、ノンビリくつろぐ、という乗り心地ではない。
注目のオールアルミ直4エンジンは、クルマのカテゴリーもあろうが、あまり印象に残らなんだ。最高出力159ps/6000rpm、最大トルク21.1kgm/4500rpmを発生、1720kgのボディを運ぶ。ミニバンのスポーツカーとして、ひとりで乗るには十分だけれど、ピープルムーバーとして活用しようとすると、ちょっとツラいかも。エンジンの魅力をアピールするのは、次なるニューモデル「アテンザ」で、ってか。
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ちょっとムリがある
エンジニアの方々の熱意や努力に目をツブり、新型4気筒についての知識を窓から放り出し、資本主義社会における神様たる(無責任な)消費者の立場で乗ると、続いて乗ったシルバーの3リッターV6モデルは一段とよかった。
2.5リッターV6のボアを8.6mmアップ、89.0×79.5mmのボア×ストローク、2967ccの排気量から、197ps/6300rpmの最高出力、27.2kgm/4750rpmの最大トルクを得る。最大トルクが2.5リッターより6.1kgmも太くなっているうえ、250rpm低いエンジン回転数で発生するのがミソだ。車重は2.3リッターのヨンクモデルと変わらない! 車両本体価格はなぜか8.0万円も安い!! 大人数を乗せても、3リッターなら余裕があろう。
他車との差別化の切り札、電動両側スライドドアは、キーやドアハンドルを使ってはもちろん、ステアリングコラム右側のインパネや、Bピラーに設置されたボタンでも開閉可能だ。ドライバーズシートにいても、2列目シートでくつろいでいても、隣の奥様に「ヨッコラショ」とドアを引かせないですむし、「あーら、ウチは自動ですのよ」と自慢することもできる。
シュルシュルと気持ちよく回る6気筒。スムーズな5段AT。少々アタマが重くなるけれど、依然として良好なハンドリング。3リッターモデルの方が好ましく思えたのは、結局、リポーターが「3列シート、7人乗り」のマツダ車を、いわゆる“ミニバン”としてしか見ることができなかったからだ。カーブの続く湖畔の道をMPVでトバすのは楽しかったけれど。
1999年6月のフルモデルチェンジで、2代目MPVは、ミニバンとしての合理性からFR(後輪駆動)を捨て、常識的なFFレイアウトを採用した。その一方で、販売力の弱いブランドとして、MPVの「スポーティ」を訴求した。それはそれでひとつの戦略だけれど、問題は、いつの世もスポーツカーは大して売れないということだ、……いや、そうじゃなくて、疾走する赤いMPVに「スポーツカーですか?」とコピーをかぶせるのは、ちょっとムリがあるんじゃないか、と気楽な部外者は思うわけです。差別化の呪縛にはまっているんじゃないか、と。MPV、名実ともに。
(文=webCGアオキ/写真=望月浩彦/2002年5月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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