マツダ・デミオ1300 COZY(4AT)【試乗記】
中身の濃い日欧戦略車 2002.08.08 試乗記 マツダ・デミオ1300 COZY(4AT) ……134.1万円 2002年8月7日、マツダのコンパクトカー「デミオ」が、6年ぶりにフルモデルチェンジして登場した。北海道で開催されたプレス向け試乗会に参加した、自動車ジャーナリストの河村康彦が、1.3リッターのキャンバストップモデル「COZY」に乗った。ある種のとまどい
全長わずかに3.8m。日本を代表するコンパクトカーのひとつ「デミオ」が、2002年8月7日にフルモデルチェンジした。新型は全長3925mm、ホイールベースは2490mm。前者で125mm、後者はちょうどプラス100mm延長され、「グンと立派になった」印象を受ける。けれども一方で、そうして大きく成長したデミオを、ちょっと残念に思った。なぜなら、デミオというクルマの最大の価値は、「コンパクトにこそある」と考えていたからだ。
確かに、衝突時の安全性も居住スペースのゆとりも、大きいボディサイズの方が有利なのは自明の理。さらにマツダというメーカーの場合、「親会社」であるフォード社の意向も重視しなければならないといった、“特殊事情”もからんでくるのだろう(事実、新型デミオのフロアは、フォード「フィエスタ」と共通である)。
それはそれとして、ぼくはノーズが“しゅん”と短く、全長に対してキャビンの占める割合が大きいことが、初代デミオのパッケージング最大の特徴であり、売り物であると思っていた。それゆえ、一挙に10cm以上も全長が伸びた新型のデザインとパッケージングに対して、ある種のとまどいと残念さを禁じえなかったのである……。
軽快なサウンド
もっとも、新しいデミオの質感が、従来型に較べてグンと向上したのは事実だ。見た目も走りのテイストも、世界のベーシックカーのなかにあって高得点をマークする。ボディパネル同士の“ちり”(隙間)は小さくなったし、塗装の品質も高い。「立派」に見えるのは、ボディサイズが大きくなったからだけではない、ということだ。
グレードによって趣を変えた、ツートーンカラーを基調とするインテリアの仕上がりも上々。なかでも、センターパネル部のできは、ちょっとチープさを感じる兄貴分「アテンザ」のそれを凌ぐほどである。
何もかもが変わった新しいデミオは、その心臓も新型だ。
アテンザのユニットと同じ、「MZR」なる愛称が与えられた4気筒DOHCエンジンは、構造的にはアテンザと別系統のユニット。1.3リッター(91ps/6000rpm、12.6kgm/3500rpm)と1.5リッター(113ps/6000rpm、14.3kgm/4000rpm)の2本立てで、いずれも軽快なサウンドを発しつつ、心地良くまわることが印象的だった。
より活発に走ることができるのは、もちろん1.5リッターである。しかし、1.3リッター+4ATの仕様でも、「イライラするほど遅い」わけではない。今回のテスト車は、新型の売りのひとつである、ホワイトキャンバストップ装着車。そのため、車両重量は標準の「コージー」より20kg重い1100kgと、サイズの割に軽いとはいえない。それでもスタートの瞬間から不満のない加速感が味わえるのは、廉価版である1.3リッターにも「S-VT」(連続可変バルブタイミングシステム)が奢られた恩恵だろう。
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素直なフットワーク
ATのシフトプログラムはリーズナブルな仕上がりだが、なぜかマツダがかねてから固執する「ホールドモード」のロジックだけは、(望まざる2速発進に見舞われたりするために)個人的にはどうにも扱いづらい。ちなみに、ラグジュアリー指向の「COZY」のATゲートは、一般的なストレートゲート。スポーティな「SPORT」はゲートがジグザグになり、シーケンシャルシフトが可能な「アクティブマチック」が装備される。
サーキットコース限定の走行となったために、乗り心地に関して断定的なコメントは控えたい。ただしフットワークの仕上がりは、なかなか非凡な印象を感じさせてくれた。小さな入力に対してもしなやかに動く、フリクションの取れた軽快なサスストローク感や、ステアリング操作に対するリニアなロール感が、アテンザとも印象の重なる“とても素直なフットワーク感覚”を演じてくれたのだ。
ノーズが短くキャビンが前進する、という特有のパッケージングが薄れたのはちょっと残念だが、新型デミオは中身の濃い、日欧戦略ベーシックカーなのである。
(文=河村康彦/写真=マツダ/2002年8月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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