ホンダ・ステップワゴン Dタイプ(FF/4AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・ステップワゴン Dタイプ(FF/4AT) 2002.03.21 試乗記 ……227.5円 総合評価……★★★
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笑顔で帳消し
2001年4月にフルモデルチェンジした、ホンダの箱形ミニバン「ステップワゴン」。1996年5月デビューの先代は、「5ナンバーサイズ」「3列シート」そして「リーズナブルな価格」が当たって、累計で約47万台を販売した大ヒット作となった。
2代目はボディサイズを拡大し、室内が広くなった。先代では、購入時に「回転対座シート」か、2列目が畳める「ポップアップシート」のどちらを選ばなければならなかったが、新型は廉価グレード「Y」を除く全車で両方のシートアレンジが可能となった(ただし「D」ではオプション設定)。
キープコンセプトのモデルチェンジが正しかったことは、売り上げ台数が証明する。1〜3月間の旧型の売り上げを含め、ステップワゴン2001年の売り上げ台数は11万台超、2000年比で33.8%アップである。同じハコ型ながら、小さなサイズで気楽に使える「モビリオ」と、走りも諦めない「オデッセイ」「ストリーム」を揃え、ホンダはミニバンのスクラムでトヨタに挑む。
「子供を中心とした家族のバンザイ」を開発コンセプトとした、新型のドライバーズシートに座ると、高い天井と奥行きのあるダッシュボードが、いかにもミニバン。バックミラーに映る3列目のシートが遠い。ホンダ自慢の2リッター「i-VTEC」はトルクがあって使いやすく、街乗りのハンドリングに不満なし。ただ4670mmの全長があるボディは、狭い道を曲がるとき内輪差に気を遣う。乗り心地は、路面が荒れるとちょっとゴツゴツ。高速道路では風にあおられフラフラ。でも世間のお父さんやお母さんは、シートアレンジを見て喜ぶ子供の姿で、全部帳消しにするのだろう。喜ぶ家族を見て笑うパパやママ、そんな微笑ましい光景を思い浮かべつつ1人で運転するのは、寂しかった。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年5月に初代がデビューした、5ナンバーサイズの3列シートミニバン。2001年4月のフルモデルチェンジまでに累計47万台を売り上げた人気車種である。2代目は、ボディを若干広げ、シートアレンジを工夫したキープコンセプトモデル。広い室内に3列シート、多彩なシートアレンジなど「遊、食、寝、積」が1台すむというのをウリとする。全車8人乗りだ。
エンジンは1種類。2リッター直4DOHC16バルブ(160ps/6500rpm、19.5kgm/4000rpm)に、4段ATの組み合わせ。駆動方式は、全グレードにFF(前輪駆動)と4WDが用意される。
(グレード概要)
グレードは、上から「K」「I」「D」「Y」の4種類。Yタイプは装備を省いた廉価グレードで、Dタイプが主要グレードとなる。Dタイプは、ディスチャージヘッドランプやコーナーセンサーなど、快適装備が省かれるほか、1列目回転シートがオプションとなり、「K」「I」で標準装備の自動スライドドアこと「パワースライドドア」が設定されない。
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【車内&荷室空間】 乗ってみると
(インパネ+装備)……★★★
フルモデルチェンジで、シフトレバーがコラム式からインパネ式に変更された。ハンドルのすぐ左にシフトノブがあって、すぐ手が届くから使いやすい。シンプルで手になじむデザインだ。
小物入れが多いのはありがたい。運転席右側にある、小物やたばこなどが入る「ドライバーズアッパーポケット」「ドライバーズポケット」、フタつきのコインポケットは、高速道路の料金所などで重宝する。センターコンソール下部にCDが入るフタ付きの入れ物「センターポケット」もあるが、運転しながらだと、手を伸ばすだけでは届かない。下を向かないといけないので、助手席の人に選んでもらわないと“キケン”かも。
(前席)……★★★
ヒップポイントが高く、見晴らしがいい。大きなフロントスクリーンまでの距離が遠く、天井が高いから圧迫感などみじんもない。あたりまえだが。シートはクッションがやや薄い気もするが、座り心地は悪くない。Dタイプは、標準では運転席にしかアームレストがつかないが、180度回転する「回転シート」(KとIに標準)をオプションで選んだ場合、助手席にも備わる。思わぬ余得(?)
シートを180度反転し、2列目シートの背もたれを前に倒してテーブルにすれば、3列目に座る人とテーブルを囲む「レストランモード」になる。
(2列目シート)……★★
2列目は2人がけのベンチシート。フルフラットやチップアップ(跳ね上げ)などのシートアレンジを考慮したせいか、背もたれも座面もクッションが薄く、かけ心地はよくない。シート左側に、観光バスでみられるような折り畳み式の補助席があるが、座面下に金属棒のようなものが走っており、座るとお尻が痛かった。長時間の使用はオススメできない。
2列目は、背もたれを座面に、座面を背もたれにすることで後ろ向きに座り、3列目とご対面できる「対座モード」になる。座面と背もたれが入れ替わるため、さらに座り心地が悪化。スライド機構を駆使して3列目とめいっぱい離しても、向かいの人と足がぶつかる。小さな子供同士なら、大丈夫だろうが……。
(3列目シート)……★★★
左右分割スライド式&リクライニング機構付き。座り心地は2列目とあまり変わらない。合法的に3人座れるが、真ん中は左右シートの継ぎ目があり、ヘッドレストは無く、シートベルトは2点式。これでは、真ん中に座らされる人がかわいそうだ。
2列目の背もたれをチップアップすると、身長176cmのリポーターが、めいっぱい足を伸ばせる空間ができる。逆にセカンドシートの背もたれを後ろに倒せば、足を投げ出して座れるベンチシートに。1列目から3列目まで完全フルフラットも可能で、実際に寝てみたところ、上下に広いスペースが余った。
(荷室)……★★
3列目のシートに人が乗る場合、積載能力は高くない。横幅も高さも約130cmあるが、サードシートをスライド調整で一番前に持っていっても、奥行きは67cm程だからだ。しかし3列目を跳ね上げると、奥行きは120cm超に。さらに2列目をチップアップすれば、170cmを超える奥行きになる。助手席側の全シートをフルフラットにすると、3mの長尺物も積載可能。人を乗せるか、荷物も載せるかの選択が必要ということか。リアバンパーの位置が低いので、荷物の積みおろしはラクだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2リッター直4DOHCは、先代より25psと0.7kgmのアップ。ホンダが誇る可変バルブタイミング機構「VTEC」と、吸気バルブタイミングの位相をエンジン付加に応じて連続に制御する「VTC」を組み合わせた、「i-VTEC」エンジンを搭載。さらに、十分な低中速トルクを得るため、可変管長インテークマニフォルドの長さをチューニングし、低回転でのトルクは豊かだ。大柄なボディに似合わない出足の良さに驚く。2200rpmで高回転用カムに切り替わり、高速道路の合流も不安なくこなす。4000rpm〜5000rpmあたりから、高めのエンジンノイズが耳につくのがちょっと気になった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ハンドリングは、街乗りでは不満ない。ハンドルは軽く、切り返しの多い路地裏でもラクに運転できる。最小回転半径5.3mと小さい。コーナーでの安定感もなかなか。足がよく調教されており、タイトコーナーで車体が倒れそうになる不安を感じることもなかった。ステアリングの切り始めは緩やかに、大舵角ではクイックになる可変ギアレシオ「VGR」を採用し、Uターンや車庫入れの取り回しも苦労しない。
しかし、高速安定性に不満が残った。高速走行で横風をうけるたびフラフラするのは、ボディが大きいから致し方ないかもしれないが、ステアリングフィールが乏しく、修正を当てる度合いが掴みにくいのはいかがなものか。高速安定性向上と、ステアリングフィールの改善を望みます。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG大澤 俊博
テスト日:2002年3月13日から15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:2万0319km
タイヤ:(前)195/65R15(後)同じ(いずれもヨコハマ ASPEC)
オプション装備:MD付きAM/FMチューナー/リアカメラ付き8インチNAVI/1列目回転シート/AC100V電源
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:257.0km
使用燃料:27.4リッター
参考燃費:9.4km/リッター

大澤 俊博
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