日産プリメーラワゴンW25X(CVT)【ブリーフテスト】
日産プリメーラワゴンW25X (CVT) 2001.03.06 試乗記 ……310.2万円 総合評価……★★★★いささか復活
私の場合、先代(2代目)プリメーラは基本的に「なかったモノ」と考えている。フルチェンジなりの進歩らしきものが、ほぼまったく見られなかったからだ。むしろ、イビツになったところばかり目立った。日本車においてそういうケースは決して珍しくないが、いうなれば「半ガイシャ」「国産ガイシャ」のようなものだったからこそ、日本でアツく支持された初代プリメーラの次としてはあまりにオソマツで。
というわけで、6年弱のブランクというか停滞は非常に痛かったが、このたびいささか復活。パッと見の印象からして、明らかにヤル気が見える。乗ってみての印象からしても、やはり非常に心強いものがある。国産車の近いところで、たとえばスバル・レガシィツーリングワゴンのターボ系や2.5 リッター系には必ずしも連勝できずとも、ターボなし2リッター相手ならけっこうイケる、というぐらいの手応えを得た。
「欧州戦略メイン」という位置づけは初代以来で、そのため今度のプリメーラは、コロナ級国産車としてはかなりデカい。特に幅広である。フォルクスワーゲンといい、ルノーといい、プジョーといい、あるいはフォードといい、向こうで新型プリメーラと競合するクルマが基本的にみんなこの辺のサイズだからだ。
「走りの日産車」ということで、開発にあたって特に強く意識したのはどうやらプジョーらしい。それも、現行406というより次期型。まだ見ぬ407。文字どおりの仮想敵。さて。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年1月30日にデビューした3代目プリメーラ。初代、先代の、地味なスタイリングとハンドリングの良さで売る「いぶし銀」的モデルから一転、エクステリア、インテリアともに斬新なデザインを前面に押し出した。チーフデザイナーは、ニッサンデザインヨーロッパ社のステファン・シュヴァルツ。セダン、ワゴンがあり、2.5または2リッターの直4ユニットをCVTと組み合わせる。2リッターワゴンには、4段ATの4WD車も用意される。
(グレード概要)
W25Xは、ワゴンのトップグレード。2リッターモデルのホイールが15インチのスチールであるのに対し、W25Xには16インチのアルミホイールが標準で装備される。インテリアでは、メーター、シフターまわりがカーボン調フィニッシャー、シフトノブおよびパーキングブレーキレバーが革巻きとなるのが違いだ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★
外観同様、つくり手の意気込みはわかる。が、こと結果に関するかぎりこちらは失敗だろう。まず、いわゆるセンターメーターがよくない。読もうと思うと読みづらく、逆に見ていたくないときはやたらと視界に入り込んでくる。普通のレイアウトと較べて視線移動が小さいとは、実体験からは思えない。メーターの理想的なあり方とは正反対。立ち退いた(わけではないが)計器盤の跡地は何ら有効利用されず、虚しく広がる樹脂の更地が運転の集中力をボヤけさせる。考えてみたら、オリジナルのミニを除いて、このテでイイ、あるいは意味があると思った採用例は過去にない。プリメーラは「モノ珍しさだけで売り抜けてOK」のクルマではないのだから、ちょっとならず問題。
「ITドライビング」を標榜するスイッチパネルはさらによくない。ほぼ水平の面にほぼ真上から操作の指、というデザインはとうていクルマ乗りの発想とは思えない。人間工学のセオリーに真っ向から挑戦している、と感じた。タッチスイッチは接触面に印刷された文字が内部照明により表示されるが、季節と時刻によってはまともに直射日光を受けるので判読不能になりかねない。そうでなくても、文字盤がここまで水平に近いと判読は非常に困難。これまたモノスゴい設計だと思う。操作ロジックも、簡単に済ませられるものをわざわざややこしくしているとしか思えない。「慣れれば……」などとノンキなことをいう人もいるようだが、ちゃんちゃらおかしい。慣れずとも初見からサクサクいける使い勝手こそ、ドライブされるものとしてのクルマの目指すべき方向である。国を挙げての「IT革命」を皮肉ったわけでもあるまいに。日産の社内に、早い段階で疑念を呈するか止めるかする人がいなかったとしたら、信じがたい。ここまで大規模な問題となると、普通のマイナーチェンジ程度では修正は不可能だろう。IT、ならぬ「ア痛え!」か。
(前席)……★★★
滑らず、柔軟でツッパらず、かつ厚みもそれなり感じさせる表皮はいい。独逸渡来のシュクラバックレストも意気込みは買う。とりたてて霊験あらたかとは思わなかったが、背中の疲れが少なかったところをみると実際の効果はあるのだろう。ただ、ランバーサポート調整機構が「従来国産車そのままのオマケお義理レベル」でしかなかったのは残念。同じく、相変わらず背もたれと連動せず座面の角度のみが変わる点も残念。ヘッドレストにムチ打ち防止機構を組み込んだのは加点要素。
(後席)……★★★
側面のガラスやBピラーの迫りよう(というか離れよう)や見え方はイヤでなかった。空間に対する人間の収まりは、前席での印象(このクラスのクルマに期待されてしかるべき広々感が、特に前方に関してない)よりイイ。全幅1760mmもあれば当然という気もするが、それなりに居心地を考えた形跡アリ。ヒザ元空間は、サイズを考えると当然という程度には広い。ただ、ワゴンであるせいか背もたれが平板。背もたれ上端が申し訳程度に盛り上がっただけのセダンよりはマシだが、ヘッドレストもただついているだけ。
(荷室)……★★
元々のデカさに加えてセダン比110mm 増の全長を考えるとこれくらいは当然の広さ。ただ、荷室を拡大する方法が背もたれを倒すのみ、つまりシングルフォールディングというのは欧州狙いとしてはいかがなものか。あるいは輸出仕様はダブルフォールディングになるのか。いずれにせよ、日産ジマンのマルチリンクビームアクスルは、荷室を深くとるうえでは明らかに不利。簡単に安くつくれて対地キャンバー特性の管理も容易だが、コンパクトの反対。バネ下重量も重いはず。プジョーあたりのマルチリンクと較べると古臭いし格落ち。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
アタリマエだが2リッターより全域で速い。より強力。2リッター超の直4で、特に問題となる二次振動(4000rpmあたりをピークとするビリビリしたイヤなアレ)も、バランサーシャフト採用で対策済み。ただし2リッターにも同じ機構はついている。
排気量の違いに関しては、たとえばスバルのフラット4が2から2.5になったときのような、あるいはアルファ156の2.0ツインスパークと2.5V6を較べたときのような「ハッ」とした違いは特になし。較べて乗ってみて、プリメーラは2リッターでいい。2.5が直噴でなかったら、もうちょっと「トロッとした味わい」を出せてヨカッタのかもしれない。いってしまえば、これは実績づくりの途中みたいなものだろう。進んで実験台になりたい人はどうぞ。
それと、同じく較べた結論として、オートマは2リッターの方がいい。「CVT+トルコン」の本体は、基本的に同じものだし、それ自体の感触も悪くないが、2.5は、「+−」シーケンシャルシフトのゲートを横に設けたのがちょっと。というのは、ハイウェイ巡航中にエンジンブレーキを使いたいだけなのに、そっちへガタガタとシフトしないといけない。「D」の下にあるのは「Ds」でなく「L」、つまりロウ。間違ってそこへ入れると、モノスゴい減速Gが発生してしまう。その点は、シーケンシャル機構なしの2リッターも同じだが、こちらの場合はノブにあるボタンを「プチッ」と一発押すだけで、実質「Ds」ポジションと同じ状態になる。必ずしも最良の設計ではないが、しかし確実に、かつ大幅にベターではある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
いわゆる「乗り心地と操縦性との妥協点のレベルが高い」というヤツ。オプション装着の17インチをそれなり平然と履きこなしていることを考えても、さすがは日産。あるいは日産の意地。いかにも信頼できそうなハンドル手応えもさすが日産。当時の日本車としてはモノスゴくちゃんと走ったが、ゴツゴツ感の強かった最初のプリメーラと較べて、文句なしにひと世代かもっとぶんほど進歩している。表面的な当たりの柔らかさだけをバンソーコ的に対策して大失敗だった旧型プリメーラのことは忘れましょう。強引に曲がりたがるクセがホンの少し残っていなくもないが、乗った印象としてはそれも愛嬌。キャラのうち。山道をトバしてみても、「ワゴンだなあ(ガッカリ)」という印象を抱かせなかった。この走りなら、プジョーやルノーやスバル(レガシィ)と勝負できる。この走りを知ってしまうと、ちょっとトヨタは買えない。やったぜ日産。でも2リッターでいい。
【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2001年2月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:2385km
タイヤ:(前)215/50R1791V/(後)同じ(いずれもDunlop Sport 3000A)
オプション装備:車間自動制御システム+自動料金収受システム+バックビューモニター(14.2万円)/電動ガラスサンルーフ+キセノンヘッドランプ(15.0万円)/前席サイドエアバッグ+カーテンエアバッグ+前席アクティブヘッドレスト+後席中央席3点シートベルト+ISO-FIX対応チャイルドシート用アンカー(11.0万円)/17インチアルミホイール+215/50R17タイヤ+ルーフスポイラー(11.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:317.3km
使用燃料:45.8リッター
参考燃費:6.9km/リッター

森 慶太
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。




























