日産プリメーラ20V(6MT)【試乗記】
杵柄のかわりにシフトノブ 2001.09.07 試乗記 日産プリメーラ20V(6MT) ……266.2万円 6600rpmで、バルブのタイミングもリフト量も切り替わる204ps「SR」ユニットを搭載したプリメーラ。「いったい何のため?」 疑問を抱いた『webCG』記者が、ハコネで乗った。「204ps+6MT」
「何のためのモデルなのか?」 と思いながら、2001年8月28日に登場した日産プリメーラセダンのスポーティバージョン「20V」のプレス向け試乗会へ行ったのである。先立つこと7カ月、同年1月にデビューした3代目プリメーラは、斬新なスタイリングに驚かされただけでなく、“走り”もヨカッタ。コントローラブルで破綻がない。パワーソースの新型QRユニットはいかにも優等生で、でもCVTとのマッチングがよくて、「これでいいじゃないか」と思っていた。
ところが、同じ2リッターながら、レースエンジンとしても活用された「SR」ユニットを搭載したモデルが現われた。グレード名は、セダンが「20V」(239.0万円)ワゴンが「W20V」(249.0万円)。いずれも6600rpmで切り替わる可変バルブタイミング&リフト「VVL」機構を得て、7200rpmという高回転でノーマルQR比54psアップの204psの最高出力と、0.6kgm太い最大トルク21.0kgm/5200rpmを発生する。組み合わされるトランスミッションは、6段MTのみという割り切ったものだ。
「とはいえ、ホンダ・インテグラ タイプR(259.0万円)は同排気量で220psだし、アコード ユーロR(253.3万円)は2.2リッターで220ps。スバルB4RSKにいたっては、これはターボモデルだから比較するのもなんだが、264.3万円で280psだからなァ」と思いながら、ズラリと並ぶ試乗車を見る。黒いメッシュのグリルと7本スポークの17インチアルミホイールが、プリメーラ「V」の証。スモークのヘッドランプカバーとランプまわりがダーククロームになって、顔つきがちょっぴり精悍に。Vスペシャルカラーの「スパークリングシルバー」がよく似合う。けれどもその色の試乗車が1台しかなかったので、「シリカブレス」こと金色の20Vに乗った。特別塗装色で、3.0万円高也。
高回転域でパンチ!
メーターナセル内が黒、インストゥルメントパネルがグレーのインテリア。「クローム調のシフトノブが冷たく光る……」と頭のなかで筆が滑ったところで、これまた黒基調の「ラテックススウェード」と「スウェード調クロス」のコンビネーションシートに座る。やんわりとした、スポーティモデルらしからぬ印象を受けた。シートを合わせ、2つのダイヤルで座面角度を調整し、「足元には、アルミペダルが冷たく光る……」と再び頭のなかでセリフをキメると走りはじめた。
数100mで、「こりゃあ、イイ!!」と思った。エンジンは、職人が手で組んだようにスムーズで、日産初の「横置きエンジン+6段MT」のはずなのに、ギアレバーはこれまた滑らかにトラベル短く作動する。シフトブーツに隠されたゲイトに吸い込まれるようだ。気持ちのなかで、取るモノもとりあえず峠に向かう。
「プリメーラに、どうしてSRユニットの、しかもマニュアルギアボックスだけのモデルを出したのですか?」と、試乗を終えてから、開発をまとめた日産自動車商品企画本部商品企画室の松尾佳宏チーフプロダクトスペシャリストにうかがう。「代々プリメーラはハンドリングに関して高い評価をいただいてきました」と松尾さんは前置きされてから、「電子制御で楽に乗るのではなく、自分で操るクルマを出したかった」とおっしゃる。SRユニットを引っぱり出したのは、新型QRシリーズより10kgほど重いけれど、高回転域でパンチがあるからだという。
いぶし銀
同席されたエンジン担当エンジニアの方に、「技術者としてはもっとカリカリにチューンしたかったんじゃないですか?」と意地悪な質問をすると、「インテRは220psですからねェ」と苦笑いされてから、「安定感、無理なくコントロールできる、といった全体のバランスを重視して、敢えて204psにした」とおっしゃる。松尾さんとアイコンタクトを取りながら。
そこで、「大して売れもしないモデルを、なぜこの時期にリリースしたのか?」という内容を社会的儀礼に包んでチーフプロダクトスペシャリストに提示すると、「われわれは決して売れないとは思っていません」とややムッとされながらも、丁寧に開発コンセプトを説明してくださった。要は「上品で大人のスポーティ」を実現したかった、と。
その通りだと思う。プリメーラVは、無粋な空力パーツでボディのラインを崩すことなく、車高も落とさず、しかし204psユニットはフルスケールにわたって十分なパワーを供給し、スプリング、ダンパーともチューンされた足まわりは、乗り心地を犠牲にすることなく、かつとらえた路面を離さない。軽々しくオシリを振ることがない。シートはソフトだけれど、しっかり体を支える。プリメーラVは、いぶし銀のようなスポーティモデルだ。乗ったクルマは金色だったけど。
セダン、ワゴン、合わせて月500台が売れれば、採算的にも大丈夫、だという。「かつて走り好きだったオトウサンがですね、もちろん毎日ではなくて、ときどきハコネに来たようなときにですね、真剣に運転できるようなクルマ……」というフレーズが蘇る。「ミニバンのかわりにプリメーラ、杵柄のかわりにシフトノブ」という標語が頭に浮かんだ。
(文=webCGアオキ/写真=難波ケンジ/2001年9月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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