日産スカイラインGT-R M.spec(6MT)【試乗記】
『次へのプロローグ』 2001.05.11 試乗記 日産スカイラインGT-R M.spec(6MT) ……618.8万円 本革仕様と微振動吸収型ショックアブソーバーで、“大人のGT-R”を狙った日産スカイラインGT-R M.spec。「耐久レースの速さ」に例えられるチューンを施された新しいスペックモデルには、見かけの仕様変更のほか「見逃せないポイントがある」と、自動車ジャーナリスト河村康彦はいう。次の「R」を示唆?
「R34型」、すなわち現行のスカイラインGT-Rは、間もなく行われるスカイライン“本体”のモデルチェンジ後も、GT-Rとして継続生産されることが決定した模様だ。次期ノーマルモデルから、“スカイラインの伝統”と言われてきた「直列6気筒エンジン」や「丸型テイルランプ」は姿を消すことになりそう。そうした状況下で、次のGT-Rをどうするかは、「現在のところまったく白紙」と日産は述べる。
そんななか、姿を現わしたのが、GT-R M.specだ。実はこのモデル、これからの「R」の方向性を示唆する、見逃せない内容を秘めた一台なのである。
大人の乗り味
"発売済みの「V.specII」が、サーキットでのラップタイムのコンマ1秒を削ることにすべてを捧げたモデルであるのに対し、M.specは、「たとえばのハナシ、耐久レースのように数十周、数百周を重ねて、結果的にトップのポジションで駆け抜けることができるようなチューニングを施したモデル」であると日産はいう。そのためにとった手法が、微小ストローク域での高い振動吸収性を狙った新ダンパー「リップルコントロール・ショックアブソーバー」と、衝撃吸収性を高めた専用革張りシートの採用である。
実際、M.specの乗り味は、「GT-R史上、最良のコンフォートを備えたもの」といってよいものだ。路面の凸凹を拾っての「ヒョコヒョコとした」動きがきれいに吸収され、場合によっては「しなやかな」というフレーズを使う気にさえさせる。むろんそうはいっても、あくまでも「GT-Rとしては」という前提がつく。絶対的には、決して“ソフトな脚”の持ち主というわけではない。
クッション性が高められたシートの貢献度も少なくないだろう。ちなみにこのシート、日本の熟練職人が一脚ごとに手縫いと張り込み加工を行うため、月に100脚、50台分をつくるのがやっとだそうだ。
微小ストローク域の動きが滑らかになったことで、公道上では頻繁に遭遇する荒れた路面での「接地性」「安心感」も結果的にアップした。個人的に、R34型GT-Rから一台を選ぶのであれば、ぼくは迷うことなくM.specをチョイスする。「どうして今まで出てこなかったのか……」、そう思わせる“大人の乗り味”が魅力だ。"
次のスカイラインは
"こうしたM.specのスペック(?)を総合プロデュースしたのが、かつて日産の「グループCカー」や「ル・マン24時間レース用スカイライン」の監督業務を行ったMエンジニア。そして氏は、間もなく登場する“次世代スカイライン”の開発総責任者でもある。そう、このM.specに込められた走りの方向性は、そのまま次のスカイラインに踏襲される、と読むことができるわけ。GT-R M.specは、次期スカイラインのプロローグでもあるのだ。
(文=河村康彦/撮影=難波ケンジ/2001年5月)"
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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