トヨタ・bBオープンデッキ (4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・bBオープンデッキ(4AT) 2001.07.11 試乗記 ……169.0万円 総合評価……★★
|
覇者の奢りか富者の迷走か
開発者にいわせると、普通のbBは「夜のイメージ」なんだそうだ。ちなみにbとBはそれぞれ「ブラック」と「ボックス」の頭文字。でもってそれを「たいへんに明るい、夏の海に似合うような」クルマにしたのがこのオープンデッキであると。あーそうですか。bBの予告編として1999年の東京モーターショーに参考出品モデルが好評だったため市販にふみきった。2年間、ということはおそらくbBがフルチェンジするか消えるかするまでの限定商品。
クルマの概要は見たまんま。いわゆるエクステンデッドキャブ型のアメリカンピックアップを思い切りデフォルメしたようなものだと思っていい。巨大メーカーの商品らしい生真面目さというか後ろ指さされないための対策がそこかしこに見えはしても、買うか買わないかに関していえば典型的な「ノリ一発型」商品であり、つきあううちにジワジワとわかって嬉しくなってくるような種類のサムシングは基本的にない(意外な発見はあったが)。その意味ではきわめてイマ様のクルマだ。正直、乗ってどうこう書くのはいささかアホらしい。
海なり山なりのアウトドアライフの伴侶としての自動車というものを真剣に考える人は、こういうモノを相手にしないだろうし(多くの場合はハイエースでキマリだろう)、またいかなる形態においてであれ、クルマと真剣にマジメにつきあおうと考えている人なら、このようなモノに浮かれたりしない。
いわゆるパイク系自動車としても、たとえばクライスラーのPTクルーザーあたりと較べてしまうと、bBにおける仕事のレベルはテンで低い。いってみれば「ディズニーランド」と「サンリオピューロランド」の格差を見る思いであり、こんなクルマでは楽しくだまされる気になれない。なにより、bBでは人間が乗って動かすモノとしての基本的な環境が整っていない。というか崩れている。
ということで、評価はまずもって★ひとつ。つまり最低。ゼロでもいいくらいだ。プリウスを出した一方でこういうクルマもつくってしまうトヨタという企業が、私にはよくわからない(それほどまでしてシェアがほしいということか)。ただし、乗ったら意外とマトモだったのと、あと福祉車両=ウェルキャブとしての適正の高さに免じてもういっこ★を差しあげた。
そういうbBオープンデッキは、「真に個性的なヤングユーザー」(笑)に向けたクルマらしい。それを聞いたら、「真に個性的なヤングユーザー」は真っ先にワラうと思うが、どうか。
|
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年2月に登場した「ファンカーゴ」ベースの5ドアモデル。「トールボックスデザイン」と呼ばれるボディスタイルを採る。エンジンは、1.3と1.5リッターの2種類。いずれにも4段ATが組み合わされる。FFをベースに、1.5リッターモデルには4WDも用意される。2001年6月11日に、リアをピックアップ風の荷台にした「オープンデッキ」がラインナップに加わった。
(グレード概要)
bBオープンデッキのドライブトレインは、1.5リッターのFFモデルのみ。右サイドは1ドアながら、左側にはBピラーがなく、EXキャブのような観音開きのドアが備わる。リアウィンドウを跳ね上げ、その下のデッキスルードアを倒すと、キャビンと荷台をつなぐことができる。サイドの広い開口部を活かし、助手席を全自動で昇降させることが可能な福祉車両「助手席リフトアップ車」も設定される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★
ピラーといわずダッシュボードといわず、いわゆる直線基調の四角系デザイン。高さ方向の寸法も豊かで、つまり収まって心地よい空間をつくるうえで非常に都合のいい条件が整っている。けれど実際の居心地はナンともイビツ。運転に集中しづらく、また車両感覚もつかみにくい。遠近感が幻惑される。ここひとつだけとってみても、たとえばハイエースははるかにドライバーズカーだ。ワカモノにウケたい一心で低レベルの造形を通してしまった結果か。
(前席)……★★
天井はガバガバに高いのにリフターもなし。乗り降りするたび座面のサイドフレームが腿に当たって気に障る。目の前の環境がヒドいのでハナからマトモに座れることを期待させない。で、それはかえって救いか。なお、オープンデッキは左側のみいわゆる観音開きの2ドアで、Bピラーがないため「福祉車両=ウェルキャブ」では助手席を大きく後ろへズラしつつ繰り出すことができる。で、ヒザを大きく曲げられない人を乗せる/降ろす際にきわめて好都合。同車最大の美点かも。
(後席)……★★
最大の美点は座面が後ろに倒れないこと。後頭部の直後にガラスが迫っていて不安になるが、ダミーを乗せての安全実験はちゃんとやってあるそうだ。ヘッドレストも、それなりの高さまでは引き上げることができる。EXキャブのトラックの後席だと思えば悪くない。
(荷室)……★★★
狭いとはいえ基本的に荷台であり、出勤のついでに生ゴミを出したりするときに便利だそうだ。開発者のひとりは、運転席から外へ右腕をのばしてその先の手でゴミ袋を摘んで走るオトーサン、という光景を目にしてナニやら思うところがあったという。テールゲートならぬアオリの開閉が、工夫の甲斐あってきわめてカルいのも加点要素。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
低速トルクの貧弱さをゴマカすための、「踏みはじめ領域で特にルーズなトルコン特性」に対する反省は見える。そこは「オッ」と思わせる。でも、それだけといえばそれだけ。これで1.5リッター? ホンダ・フィットの「1.3リッター+CVT」のほうがはるかにイイ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
冒頭に書いた「意外な発見」はこの分野に関して。従来のbBと較べると、試作車みたいだったガサツでヤッツケ仕事な印象は大幅に直っている。運転環境は相変わらずヒドいが、アシ方面に関していえば走りはかなりマトモ。ドタバタしないし、突っ張らずキレイに動く。社内の評価も、ハンドリングを売りモノにする種類のクルマに対するそれよりかえって高かったという(皮肉)。きけば、特殊な車体構造ゆえの不利を露呈させないようにと頑張った結果、サス取り付け部の剛性は普通のbBの2倍にもなっているらしい。そのおかげか。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2001年7月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):高速道路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森 慶太
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
NEW
フォルクスワーゲンTロックTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)【試乗記】
2025.12.20試乗記冬の九州・宮崎で、アップデートされた最新世代のディーゼルターボエンジン「2.0 TDI」を積む「フォルクスワーゲンTロック」に試乗。混雑する市街地やアップダウンの激しい海沿いのワインディングロード、そして高速道路まで、南国の地を巡った走りの印象と燃費を報告する。 -
NEW
失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編)
2025.12.20小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。 -
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
NEW
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。 -
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」
2025.12.19デイリーコラム欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。


































