トヨタ・アルテッツァジータ AS300【ブリーフテスト】
トヨタ・アルテッツァジータAS300(5AT) 2001.07.20 試乗記 ……336.7万円 総合評価……★★■ジータは何調?
「高貴」(Altezza)と「小旅行」(Gita)を意味するイタリア語を車名にした「アルテッツァジータ」は、いうまでもなくFR(後輪駆動)を売り物にする“スポーツセダン”アルテッツァのワゴン版である。とはいえ、トヨタも明らかにしているように、荷物をたくさん積むためのクルマではない。「5ドアセダン」とでもいうべき、4ドアモデルとのスタイリングの違いをアピールするバリエーションだ。
アルテッツァは、セダンもワゴンも、トヨタがいうほど運転して「スポーティ」とは感じられない。かといってエクステリアやインテリアが個性的で魅力にあふれているわけでもない、と思う。何をアピールしたいクルマなのかよくわからない。セールスが芳しくないのもうなずける。
ジータでは、リアバンパーに「エア抜き用ネット」調のプラスチックの黒いプレートを新たに張りつけた。これに限らず、アルテッツァシリーズには、クロノグラフ調スピードメーターや金属調シフトレバーノブといった、「○○調」装備が目立つ。なにかモノ欲しそうで、さびしい。「では、アルテッツァジータは何調なのか」と聞きたくなる。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アルテッツァは、1998年10月に発表されたFRセダン。同じ2リッターながら、直4と直6エンジンがあり、トランスミッションはいずれも6段MTほか、4気筒モデルには5段AT、6発には4段ATが組み合わされる。2001年7月2日からワゴン版たる「アルテッツァジータ」が加わった。ジータは、3リッター直6モデル(4WDは4段AT、FRは5段AT)と2リッター直6モデル(FRのみ。4段AT/6段MT)がカタログに載る。
(グレード概要)
ジータには、2リッターモデルの「AS200」と3リッター「AS300」がラインナップ。3リッターにのみFRのほか4駆モデルが用意される。テスト車のAS300(FR)は、今回取り上げたベーシックグレードのほか、内装が本革仕様となり、ホイールに「スーパークロームメタリック塗装」が施される「Lエディション」も選択可能だ。車両本体価格はベーシック比24.0万円高の300.0万円となる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
「クロノグラフ調スピードメーター」は、スタイリングの遊びが機能を損ねている。わざわざ見にくくしているうえに、(余談ながら)クロノグラフとは何かがわかっていない。クロノグラフというのはストップウォッチを使用していないときには、スモールセコンドの針はすべて同じ方向を向いていなければ意味がないのに、アルテッツァのそれは、バラバラの方向を向いている。だから“調”なのか。ダイヤル式のエアコンスイッチは、太いうえにダイヤルだけがパネルから飛び出していて、操作中にポジションが認識しにくい。
(前席)……★★
シートがよくない。見かけはいかにもスポーツドライブ中にしっかりと身体をホールドしてくれそうだが、その実、コーナリング中に腰砕けになる。
(後席)……★★★
後席の居住性は、外観から想像するよりいい。ヘッドルームとニールームにじゅうぶんな広さがある。シートのかけ心地も、後席としては悪くはなかった。
(荷室)……★★
「セダン、クーペ、ステーションワゴンにはない魅力を付与した新ジャンル」とメーカーがいう通り、アルテッツァジータを純然たるステーションワゴンだとは考えない方がいい。アルテッツァセダンの世界が気に入っていて、しかしより多くの荷物を運びたいと思っているヒトには、ちょっとガッカリするラゲッジルーム。ジータは、セダンと較べて、それほど多くの荷物を収容できるわけではない。テールゲートが傾斜しているうえに、後輪のホイールハウスとサスペンションが荷室内に大きく張り出しているからだ。アルファロメオのスポーツワゴンのような「ファッションワゴン」と考えれば納得がいく。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
「2JZ-GE」型3リッター直列6気筒には、フラットな出力特性を狙って、トヨタ得意の連続可変バルブ機構「VVT-i」が装着される。一方、回転が特別鋭く上昇するわけではない。220psの最大出力を発生するのは5800rpmだが、高回転域では、トルクもパワーも“頭打ち感”が強い。ステアリングホイールのスポークに設けられたボタンでシフトできる「ステアシフトマチック」は使いやすい。ちゃんと、シフトダウンが親指を“前方に”押すように設計されている。シフトアップは人差し指で手前に引き寄せる。加減速Gの方向と一致していてよい。これが逆のクルマが結構あるのだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ダンピングのよく効いた締まった乗り心地が好ましい。しかし、路面の状態とタイヤグリップの様子をよく伝えない、インフォメーションの乏しさが興醒め。特にハンドル中立付近では、タイヤと路面がどう接しているかということがまるでイメージできない。アルテッツァのセダンも同様だが、スポーティセダンを謳うならば、ハンドルからの情報は欠かせないはずだ。ドライバーは、路面を探りながら走っているのだから。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者: 金子浩久
テスト日: 2001年7月9日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式: 2001年型
テスト車の走行距離: --
タイヤ: (前)215/45ZR17/(後)225/45ZR17(いずれもブリヂストン Potenza RE040)
オプション装備: VSC(Vehicle Stability Control)+トルセンLSD(10.5)/イモビライザー(2.0万円)/オートレベリング機構付きディスチャージヘッドランプ+ヘッドランプクリーナー(9.7万円)/スーパーライブサウンドシステム(5.0万円)/DVDナビゲーションシステム(26.5万円)/前席サイド&カーテンエアバッグ(7.0万円)
テスト形態: ロードインプレッション
走行状態: 市街地(4):山岳路(6)
テスト距離: --
使用燃料: --
参考燃費: --

-
MINIジョンクーパーワークス エースマンE(FWD)【試乗記】 2025.11.12 レーシングスピリットあふれる内外装デザインと装備、そして最高出力258PSの電動パワーユニットの搭載を特徴とする電気自動車「MINIジョンクーパーワークス エースマン」に試乗。Miniのレジェンド、ジョン・クーパーの名を冠した高性能モデルの走りやいかに。
-
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.11.11 ボルボの小型電気自動車(BEV)「EX30」にファン待望の「クロスカントリー」が登場。車高を上げてSUVっぽいデザインにという手法自体はおなじみながら、小さなボディーに大パワーを秘めているのがBEVならではのポイントといえるだろう。果たしてその乗り味は?
-
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.10 2020年に上陸したメルセデス・ベンツの3列シート7人乗りSUV「GLB」も、いよいよモデルライフの最終章に。ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」に追加設定された新グレード「アーバンスターズ」に試乗し、その仕上がりと熟成の走りを確かめた。
-
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.8 新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。
-
MINIジョンクーパーワークスE(FWD)【試乗記】 2025.11.7 現行MINIの電気自動車モデルのなかでも、最強の動力性能を誇る「MINIジョンクーパーワークス(JCW)E」に試乗。ジャジャ馬なパワートレインとガッチガチの乗り味を併せ持つ電動のJCWは、往年のクラシックMiniを思い起こさせる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS(4WD)【試乗記】
2025.11.15試乗記ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」にスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。ベースとなった4WDのハイブリッドモデル「e:HEV Z」との比較試乗を行い、デザインとダイナミクスを強化したとうたわれるその仕上がりを確かめた。 -
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ・マカン4編
2025.11.14webCG Moviesポルシェの売れ筋SUV「マカン」が、世代交代を機にフル電動モデルへと生まれ変わった。ポルシェをよく知り、EVに関心の高いレーシングドライバー谷口信輝は、その走りをどう評価する? -
ホンダが電動バイク用の新エンブレムを発表! 新たなブランド戦略が示す“世界5割”の野望
2025.11.14デイリーコラムホンダが次世代の電動バイクやフラッグシップモデルに用いる、新しいエンブレムを発表! マークの“使い分け”にみる彼らのブランド戦略とは? モーターサイクルショー「EICMA」での発表を通し、さらなる成長へ向けたホンダ二輪事業の変革を探る。 -
キーワードは“愛”! 新型「マツダCX-5」はどのようなクルマに仕上がっているのか?
2025.11.14デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」でも大いに注目を集めていた3代目「マツダCX-5」。メーカーの世界戦略を担うミドルサイズSUVの新型は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 開発責任者がこだわりを語った。 -
あの多田哲哉の自動車放談――フォルクスワーゲン・ゴルフTDIアクティブ アドバンス編
2025.11.13webCG Movies自動車界において、しばしば“クルマづくりのお手本”といわれてきた「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。その最新型の仕上がりを、元トヨタの多田哲哉さんはどう評価する? エンジニアとしての感想をお伝えします。 -
新型「シトロエンC3」が上陸 革新と独創をまとう「シトロエンらしさ」はこうして進化する
2025.11.13デイリーコラムコンセプトカー「Oli(オリ)」の流れをくむ、新たなデザイン言語を採用したシトロエンの新型「C3」が上陸。その個性とシトロエンらしさはいかにして生まれるのか。カラー&マテリアルを担当した日本人デザイナーに話を聞いた。






























