トヨタ・プログレNC250 iRバージョン(5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プログレNC250 iRバージョン(5AT) 2001.09.18 試乗記 ……395.0万円 総合評価……★★★キツめの詰め襟学生服
このクルマの最大の特徴というか問題点は、まるで「クラウンコンフォート」を両側から押しつぶしてさらに前後に引き延ばしたようなサエな〜い外観だと思う。何らかの特殊な目的のためにつくられたクルマのようにも見える(実際そうだともいえる)。ライト類のグラフィックデザインや微妙なパネルの抑揚がどうこうという以前に、カタマリとしての全体のカタチが少々イビツだ。でもってそれは、プログレというクルマの商品企画のイビツさをそのまま表してもいる。
いわゆるパッケージングや車両サイズはメルセデスベンツのCクラスやBMWの3シリーズを範とし、居住区間の各種寸法(むしろクリアランスというべきか)では両車をことごとく上まわる。ただし、車両全幅は1.7mを死守。
これ、わかりやすいといえばそうだが、同時に非常に乱暴でもある。実際プログレは、外観だけでなく居住空間のプロポーションも微妙にヘン。一見いかにも正しそうなので乗った瞬間はひとしきり感心するが、ほどなくしてキツめの詰め襟学生服を着せられているかのような違和感が前面に出てくる。それもまあ微妙といえば微妙なモノなので、アジと解釈できないこともない。けれど、心底ホッとさせられるカタチでないことはたしかだ。
体感上のコンパクトさも、額面寸法から想像されるほどには素晴らしくない。幅が狭い、というか1.7mを超えてないことはハッキリとわかるのだけど、だからといって特に嬉しくもない。たとえばの話、グチャグチャに混み合った都心の道路をストレスなくスイスイ走れる嬉しさという点では、たとえば『webCG』の取材で先日乗ったスバル・フォレスターのほうが明らかに上だ。
あと、コマいようでいて実は象徴的な事実として、プログレにはサンルーフの用意がない。サンルーフの存在意義(個人的にはほとんどないと思っている)はともかく、車両価格が実質400万円級のクルマなのにほしくても選べない。ショーバイ上も非常にオイシイ装備であるはずなのに。どうしてか?
おそらく、ヘッドクリアランスの問題だろう。プログレは着座位置が前後ともハッキリ高いので(もちろんそれじたいは悪くもナンともない)、現状の全高(1435mmは決して低くない)でサンルーフありだと室内の天地寸法がトヨタの社内基準に引っかかる。だからつけられなかった、のではないか。そこひとつとってみても、プログレの商品企画のイビツさや乱暴さ、もっといえば底の浅さががわかってしまう。乗った感じが決して悪くないだけに、寂しい。
ただ、プログレにとっていささか心強いのは、たとえば競合商品(?)のひとつであるCクラスの状況だ。ほぼ同じ値段(今回の個体はオプション込みでほとんど400万円)ということで較べた場合、現行型のC180とコレだったら、私は迷わずプログレを選ぶ。じゃあBMW318iだったらどうか? 迷わずビーエムを買います。ならば続けて、ちょっとだけ若めの年齢層に向けた“修正版プログレ”ともいうべきブレビスとの比較では? どっちもイヤ。同じ土台を使って矢継ぎ早にこんなにたくさん出されると、見ているだけで気持ちが萎えてくる。
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【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年5月に発売されたマークIIとプラットフォームを共有する、トヨタいうところの「小さな高級車」。全長4500mm、全幅1700mmといういわゆる「5ナンバーサイズ」に縛られたドメスティックモデルである。2001年にマイナーチェンジを受け、エンジンが、排気量は同じながら、直噴「D-4」化された。VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)を備える2.5リッター直6「1JZ-GE」ユニットと3リッター「2JZ-GE」エンジンである。駆動方式は、FR(後輪駆動)ほか、2.5リッターモデルには4WDも用意される。トランスミッションは、メインのFRモデルが5段AT、ヨンク版が4段ATとなる。
(グレード概要)
プログレは、「標準モデル」ほか、ウォルナット内装の「ウォルナットパッケージ」、ウッドパネルにバーズアイメイプルを用いた「ノーブルインテリアパッケージ」、足まわりを硬めた「iRバージョン」(内装は木目調)、「iRバージョン・ウォルナットパッケージ」で構成される。3リッターと2リッターモデルの違いは、シートが「本革」か「ジャガード織」か、である。もちろん、「NC250」でも、革シートをオプションで選ぶことは可能だ。また、「NC300」には「クルーズコントロール」「カーテンシールドエアバッグ」ほか、シートポジションを記憶、再現する「マイコンプリセット機能」が標準で装備される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
奇をてらったところのない造形といい質感の高さといい、ここだけとって見ればけっこう高ポイント。単体だったら★★★★でもいい。全体を黒で締めてアクセントにオレンジ系着色の「サペリマホガニー本木目パネル」(10.0万円のオプション)というのも「ハッ!」とさせてヨイ。内装全体の雰囲気として、ベンツに乗り慣れたOLあたりをしばし感激させるくらいのパワーはある(一応確認済み)。ピラーの角度も立っていてヨイ。ハンドルはチルトとテレスコの両方を電動にて調整可。ただ、前方の景色はイマイチ。クルマの左前側面が斜めに削り取られているかのように見えるし、またボンネットのカタチも悠然としたたたずまいにいささか欠ける。絶対的な小回り性能はともかくとして、とりまわしの感じが特に素晴らしくないのも残念。
(前席)……★★★★
トヨタのレザーシートとしては珍しいことに、表面のツッパリ感が気にならない。座った感じはどこかセンチュリーのシートに通じるところがあって、ハッキリいってこの部分のデキはセルシオよりイイ。床から座面までの高さが非常にたっぷりとあるのもイイ。……と書いたあとで乗ったら、1時間ほどでお尻が痛くなりはじめた。正面から見ても側面から見ても、凹型のカーブで中央に向けてヘコむ感じの座面形状がマズいのではないか?
(後席)……★★★
シート本体は、基本的に前席と同じような感じでイイ。が、ヘッドレストで★ひとつ減点。上げて使おうとしたらグラグラで、逆にいちばん下まで下げてピロー(=枕)として使うと見事にピッタリくるというのはいかがなものか。安全性の向上に積極的に寄与する装備だとは、これではちょっと考えられない。見た目からして、いかにも安全“二の次”感がある。
(荷室)……★★
トランクリッドのステーを荷室内に堂々と露出させているのは安モノ自動車のやりクチだ。これだと、メいっぱいまで荷物を詰め込んでフタを閉めようと思うと(ステーの動きが荷物と干渉して)閉まらない……という事態が往々にして発生しうる。ベンツのように内張りで覆ってしまう(だけではたぶんないのだろうけど)か、あるいはビーエムのように開口部にダブルリンクのヒンジをつけるかすれば解決できる問題なのに。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
先頃のマイチェンで、プログレのエンジンは2.5も3.0も直噴になった。今回の個体に関しては、排気量2.5リッターという額面を素直に納得できるだけの力強さが実用域にあってひとまず感心。これだったら、まず間違いなく日産スカイラインの2.5より2.5らしいはずだ。基本的に同じエンジンを以前マークIIで乗ったときは「これ、2リッター?」と思った記憶があるので何らかの改良が入ったのか。悪くない。買いたいヒトへのアドバイスとしては「3リッターは要りません」。
ただ、気をつけていないと、ツイちょっと急いだ際(狭い道から広い道への直角の進入とか)にゲヒンな加速をしてしまうことがある。スロットル踏みはじめ部分の反応がかなり慎重メで、そのヤマを超える際のコントロールがすこしクセモノ。あと、5段オートマはそれ単体が特に感動的なほどではなかったが、プログレの乗りアジにはまあ合っている。使いにくいジグザグ型ゲート(ほぼ唯一の例外はかつてのベンツ)を採用しなかったのも加点要素。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
マイチェン前の「iRバージョン」と較べてハンドルの切りはじめが重たくなった、気がする。パワーアシストの油圧をトリガーするトーションバーの剛性を普通のヤツより高くしてスッキリした操舵感を出していた……のは今回ナシになってしまったのか? あれ、けっこう好きだったのに。
乗り心地や操縦性は、伝統的な日本のオジサン好みのテイストをわずかに引き締めた感じ。依然として、フラットライド志向ではない。マ、これはこれで。なお、マイチェン前からiRバージョンにだけあった、ナンというか「遠くで和太鼓を聴くときのようなこもり音」(路面の段差でタイヤがたたかれて発生)は今回も健在。たとえばタウンスピードで車内に音楽が鳴っていないような状況だと、けっこう気になるヒトが多いかもしれない。
(写真=河野敦樹)
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【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2001年8月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年モデル
テスト車の走行距離:2920km
タイヤ:(前)195/65R15 91H/(後)同じ(いずれもブリヂストン B370)
オプション装備:DVDナビゲーションシステム(26.5万円)/前席カーテンシールドエアバッグ(3.5万円)/サペリマホガニー本木目パネル&トリム(10.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):高速道路(3)テスト距離:219.4km
使用燃費:33.5リッター
参考燃費:6.5km/リッター

森 慶太
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