トヨタ・ヴォクシー V 2WD(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴォクシー V 2WD(4AT) 2001.12.11 試乗記 ……308.8万円 総合評価……★★バッヂエンジニアリング
ヴォクシーはノアの双子車。いずれも3列シート8人乗りで、両者の違いは、外観ではフロントフェイスの造形、内装ではインパネまわりの化粧パネルに黒木目調(ヴォクシー)/木目調(ノア)が用意される、といった程度。販売系列を区分けするための、最近では珍しくなったバッヂエンジニアリングモデル。ヴォクシーは「鋭く、迫力のある引き締まったデザインで若々しさを」(プレスリリース)、ノアは「堂々とした存在感のなかに親しみやすさを追求」(同)したということだが、どちらもトゲトゲした印象を持つ。「VOXY」「NOAH」とも、テールゲートに貼られたという車名がクルマのエンブレムとしては妙に大きいのは、同じデザインのリアビューで、すこしでも違いを出そうとしたためか?
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月16日に発表されたミニバン。「ヴォクシー」が、ネッツトヨタ店「ライトエースノア」、「ノア」はトヨタカローラ店で売られていた「タウンエースノア」の後継モデルである。フルモデルチェンジにともない、シャシーがFF化(前輪駆動)され、両側スライドドアとなった。すべて3列シートの8人乗りだ。ドライブトレインは、直噴の2リッター(152ps、20.4kgm)と4段ATの組み合わせのみ。駆動方式には、FFのほか、電子制御多板クラッチを用いた4WDも用意される。
(グレード概要)
グレードは、ベーシック版「X」、スポーティータイプの「Z」、ラグジュアリーな「V」の3種類。それぞれに2WDと4WDがある。Vには、4本スポークステアリングホイール、アルミホイールが装着される。インテリアでは、黒木目調のセンタークラスターが特徴となる。MD・CD/一体AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオ+6スピーカーを標準装備。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ヴォクシー/ノアのメーターには、黒地に白文字の「標準メーター」、白地の黒文字の「ホワイトメーター」、上級グレードには文字を投射する「オプティトロンメーター」がある。試乗したヴォクシー「V」はオプティトロンメーター、合皮4本スポークのステアリングホイール、黒木目調パネルが装備される。また、ノーズのグリル部にカメラを設置、路地などの細い道から大通りに出る時に左右を写す「ブラインドコーナーモ二ター」(オプション装備)も装着されていた。これは、カーナビ画面を左右に分割して、車両左右の斜め前方を映しだすもの。カタログ上のスペックはともかく、目視で見えないところがよく見えるわけではないので、頼りすぎは禁物だ。
(前席)……★★★
ボディサイズの割に大ぶりであることが謳われる前席だが、特にかけ心地が良好なわけではない。並。ボクシー/ノアは、全車のドライバーズシートに上下ハイトアジャスターが付く。テスト車のヴォクシー「V」には、運転席、助手席ともアームレストが備わる。ヘッドレストは可倒式だ。
(2列目シート)……★
ヴォクシー/ノアは、セカンドシートを前に折り畳む「ワンタッチタンブルシート」のほか、オプションとして「マルチ回転シート」を選ぶことができ、テスト車は後者だった。2列目シートの左右が180度回転し後ろ向きになり、センターのシートはテーブルとなる。しかし、回転させると3列目シートとの間隔はミニマムで、向かい合って座ると膝と膝がぶつかりあう。家族や仲間とくつろぐためのものだが、こんなに窮屈なのは家族でも嫌だろう。また、セカンドシートは「回転」と「フルフラット」が設計の第一目標に据えられているから、座面や背もたれのクッションの厚みがとても薄く、かけ心地が悪い。特に3人がけの中央部分などは板の上に腰を下ろしているようだ。
(3列目シート)……★★
サードシートへの出入りは、簡単にはいかない。セカンドシートを前に倒すには、上半身をねじ曲げて手をドアをシートの側部に潜り込ませなければならないからだ。なお、3列目は背もたれを前に倒したうえで左右に跳ね上げ、荷室を拡大することができる。
(荷室)……★★★
床面最大幅126cm、奥行きはわずかに45cm。3列目シートを畳まないと、テスト用の「プリマクラッセ」の貴婦人用帽子ケースを収めるのがやっと。サードシートを左右に跳ね上げれば、奥行きは135cmに拡大する。なお、アンダーフロアにはゴルフバッグを入れることができる「大型床下収納」が備わる。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2リッター直噴4気筒エンジンは、152ps/6000rpmの最高出力と20.4kgm/4000rpmの最大トルクを発生する。低回転域でもトルクが太く実用的だが、大人が3人乗って上り坂に差しかかると、急に勢いがなくなる。8人フル乗車したら、相当苦しいのではないか。4段ATは、変速もスムーズで、シフトプログラムも秀逸、下り坂と判断するとギアを落とすので、エンジンブレーキがよくかかって使いやすい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
前輪駆動化したことによってハンドリングが改善されたと謳われるが、それを強く感じることはなかった。一方、FF化による弊害も見られない。サスペンション形式は、フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームというコンベンショナルなもの。「V」には、セミアクティブサスたる「H∞-TEMS」は装着されない。ちなみに、この手のミニバンで普通なら特等席であるはずの2列目シートに乗っていても、舗装のよくない路面では上下動が大きく伝わってきて興ざめだった。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2001年11月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:505km
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)同じ(いずれもトーヨーJ-31)
オプション装備:ツインムーンルーフ(10.5万円)/クリアランスソナー&バックソナー(4.0万円)/前席サイド&カーテンエアバッグ(7.0万円)/セカンド回転マルチシート(1.5万円)/ヴォクシーライブサウンドシステム+DVDナビ+AVステーション+リアシート液晶カラーTV+音声ガイド付きバックガイドモニター+ブラインドコーナーモニター(50.8万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。