トヨタ・イスト1.5S Lエディション(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・イスト1.5S Lエディション(4AT) 2002.06.05 試乗記 ……174.3万円 総合評価……★★ポイントは押さえた
イストのエライところは、ベースモデル「ヴィッツ」とまるで違うクルマに見えるところである。センタータンクという革新的レイアウトを採った「ホンダ・フィット」、社運をかけたワールドプレミア「日産マーチ」といった本格派ライバルを迎撃する、1999年デビューの“ちょい古”戦略モデル「ヴィッツ」を側面から援護する。当面、国内専用車。
内外とも曲線多用のヴィッツと比較して、イストは内外とも意地をかけての(?)直線基調。ボディ前後左右下端の黒いガーニッシュで“SUVテイスト”を盛り込み、ホイールアーチを強調する丸い前後フェンダーでデザイントレンドを取り入れたりと、時代のポイントをそつなく押さえる。
20cm長くなった全長はじめ、車体はヴィッツよりやや大きくなったが、拡大分は、室内の広さより衝突安全性能の向上にまわされた。歩行者との衝突時に、衝撃を吸収する「衝撃吸収バンパーアブソーバー構造」「衝撃吸収フェンダー構造」、頭部への衝撃軽減のためのツブれやすいボンネットなど、クルマのコンセプトのわりに、セイフティ技術の導入はマジメ。重心が高くなる15インチ大径ホイールの採用など、ダイナミック要件よりデザイン要求に泣かされたトヨタ技術陣。クルマが転ばないよう努力する一方、転んでもただでは起きない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“……する人”を表わす「ist」を車名にしたイストは、2002年5月8日に発表された「若者のモビリティライフに応える最上のコンパクト車」をコンセプトに開発された5ドアハッチ。「for your 1st」がキャッチコピー。1stとistを視覚的にかけたのがオシャレだ。ヴィッツのプラットフォームに、「スタイリッシュな新感覚エクステリア」(プレスリリース)を載せた。1.3、1.5リッター直4に、いずれも4段ATを組み合わせる。FF(前輪駆動)を基本に、1.5リッターには4WDも用意される。
(グレード概要)
イストのFFモデルは、基本的に「1.3F」と「1.5S」で構成される。1.5Sの「Lエディション」は、ドアミラーが格納式、間欠ワイパーが時間調整式、エアコンがオートなるのが、ベーシックグレードとの違い。若者的には、CD/MD一体型ラジオが4スピーカーから6スピーカーになるのが大きいだろう。一方、助手席シートアンダートレイ、運転席&助手席シートバックポケットが付くのは、日常の使いやすさに貢献するはず。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「水平・垂直の基本構成と前後方向への大胆なラウンド」(広報資料)フォルムをとったインストゥルメントパネルにより、有機調デザインのヴィッツと明確な差別化をはかった。フェイシアは、フォルクスワーゲンを模した(ホンダ・フィットを意識したと思われる)「幾何学パターン表面処理」、つまり黒基調で細かい円に覆われた表面。素材感はいい。随所に使われたメタル調パーツ、センタークラスターの半透明のフタ「イルミネーテッドマルチボックス」は少々ガンバリすぎ。
(前席)……★★★★
ヴィッツRSのシートを、表皮を変えて使用。RSでは気になったサイドサポートの不足、腰高感も、イストなら違和感ない。じゅうぶんな座面長、適度なクッション感、そして運転席はダイヤルによってシート全体の角度を調整可能。ヴィッツの上級車種として、(実質的に)頑張った部分だ。
(後席)……★★★
着座位置をやや高く、座面長は短めにしてヒザ前空間を確保、ヘッドクリアランスも、四角いキャビンと高くなった車高が活きて不足はない。大人ふたりが実用可能なリアシート。ただ、シートアレンジを考慮したためか、背もたれが平板で薄いのが減点要因。後席は、6:4の分割可倒シートだ。
(荷室)……★★★
床面最大幅120cm、奥行き58cmと、大きさはヴィッツとあまり変わらない。オシャレグルマ「ist」のジマンは、ラゲッジフロア前後に13cmほどの深さをもつ床下収納を備える点。その名も「リア2ウェイデッキアンダートレイ」で、小物をスッキリ収納。生活臭を感じさせません!
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ヴィッツやカローラ系でおなじみ、コンベンショナルな「1.5リッター直4+4段AT」の動力系をもつイスト。黒子に徹する「1NZ-FE」ユニットは、109ps/6000rpmの最高出力と14.4kgm/4200rpmの最大トルクを発生、黙々と1040kgのボディをひっぱる。平成12年基準排出ガス75%低減レベルおよび2010年燃費基準をパス。4段ATは、「スーパーインテリジェント」の謳い文句にウソがない。ドライバーの気持ちを酌むかごとくにシフトアップし、ダウンする。たとえば、下り坂、4速で走っていて、ちょっとブレーキペダルにさわると瞬時にサードに落としてエンジンブレーキを効かせてくれる。全体に、シフトプログラムに嫌味がないのがリッパ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
SUV風の“シャコタカ”感を出すために、15インチホイールを標準で採用。高くなった重心をカバーするため、前後にアンチロールバーを入れ、サスペンションは硬めにセッティングされる。実際、街なかでは、スタイリッシュなエクステリアから想像できないハードな乗り心地。舗装が悪いところを行くと、乗員は上下に揺すられる。一方、コーナリングではたぶんに突っ張った感があり、不自然さを否めない。アブハチ取らず。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:青木禎之
テスト日:2002年5月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)185/65/R15 88S(後)同じ(いずれもMichelin GreenX MXE)
オプション装備:DVDボイスナビゲーションシステム+CD/MD一体型ラジオ+6スピーカー(21.3万円)/アルミホイール(6.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):山岳路(3)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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