トヨタ・イスト 150G(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・イスト 150G(FF/CVT) 2007.11.12 試乗記 ……201万9150円総合評価……★★
2007年7月30日にフルモデルチェンジされ、サイズも排気量も大きくなった「トヨタ・イスト」。国外における販売も視野にいれた新型モデルを試す。
上方修正
初代モデルの誕生以来、丸5年ぶりのフルモデルェンジ。“フェンダーを中心としたデザイン”などに継続性が認められるが、一見してボリュームが随分アップした。それもそのはず、全長はまだ4mを切るものの、全幅は1725mmと“3ナンバー枠”へ突入。初代モデルが日本市場をメインターゲットとして開発されたのに対し、今度は当初よりアメリカ(新たに欧州も?)での多くの販売を目論んだためと考えられる。
車両キャラクターの変化を裏付けるのが、搭載するエンジンの排気量。従来型は1.3、1.5リッターであったが、新型は1.5、1.8リッターという構成。ヴィッツが先行して「立派なモデルチェンジ」をした煽りを受けて(?)、当時のイストは販売量がダウン。そんな過去の苦い思い出(?)から、サイズも排気量も価格も敢えて上方へ軌道修正したのが新型、という見方もできる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“……する人”を表す「ist」を車名にしたイストは、2002年5月8日に発表された。「若者のモビリティライフに応える最上のコンパクト車」をコンセプトに開発された5ドアハッチ。2007年7月30日のフルモデルチェンジで2代目となり、キャッチコピーは「New Style, New Position」。
2BOXとSUVを融合させたというクロスオーバースタイルのボディは、全長×全幅×全高=3930×1725×1525mmと、横幅が1700mmを超え、3ナンバーサイズになった。また、全長こそ先代比+5mmとあまり変わらないものの、90mm延長されたホイールベースは2460mmになり、後席スペースやラゲッジスペースの向上に配慮した。
エンジンは、吸・排気ともに可変バルブタイミング機構を搭載した1.5リッターと吸気のみに可変バルブタイミングを搭載した1.8リッターの直4エンジンがラインナップされ、それぞれCVTと4ATが組み合わされる。1.5リッターエンジン搭載モデルは、装備の違いによって「150G」「150X」という2グレードに分かれる。1.8リッターモデルは「180G」のモノグレード。
SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ、アクティブヘッドレストの全車標準装備をはじめとして、「平成22年度燃費基準+10%」や「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」などを達成した。
(グレード概要)
「150G」は、ベースモデルの「150X」にアルミホイールやCD・AM/FMラジオ+6スピーカー+アクセサリコネクター、本革巻きステアリングホイール等の装備を追加した1ランク上の仕様。1.5リッター直4エンジンは109ps/6000rpm、14.1kgm/4400rpmの最大出力を発生する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
タコメーターとスピードメーターを“同心円”とし、センターパネルもフローティング調とするなど、ダッシュボードはなかなか凝ったデザイン。が、コントラストが弱いために、サングラスをかけると見づらいタコメーターや、“同心円メーター”の根元を隠すパッチ状の加飾、コンビネーション・メーターの仕切り板など、どうも機能性に欠ける遊びが多過ぎる。各部のシボなどに少々チープな素材感が漂うのもちょっと残念。一方、全車のステアリングコラムにテレスコピック機構を加えた恩恵で、ドライビングポジションの自由度は大いに高まった。評価すべきポイントだ。ただしステアリングホイールの位置を変えようと、ロックを外すと重いコラムが「落ちてくる」点は要改良。
(前席)……★★★
ヒップポイントは680mmとやや高めだが乗降性は上々。コンパクトカーとしてはサイズも大きめ。やはり海外市場を意識しているゆえか。後突時にヘッドレストが前斜め上方へと動き、むち打ち症を軽減させるアクティブ・ヘッドレストを採用する。常用シーンでの違和感はない。やや高い面圧を感じる着座性そのものは、ごく標準的。
(後席)……★★★
やや後ろ下がりのルーフラインのお陰で、ドア開口部は天地幅が小さめ。乗り降りの際には前傾気味の姿勢を取らないと、頭をぶつけがちになる。足元フロアはフラットで、前席下への足入れ性も優れる。居住空間的には文句ナシ。
シートバック前倒しでラゲッジフロアと面一の空間が生み出せるダイブダウン機構は嬉しいが、クッションストロークはやや少なめ。座り心地そのものは「まずまず」というレベル。
(荷室)……★★★★
前述のようにワンタッチでアレンジが可能なリアシート。スライド機構も備えるため、「人のためのスペース」と「荷物のためのスペース」を必要に応じて融通できる。荷室の使い勝手はなかなかいい。フロアボード下にはかなり深いサブトランクも用意されるので、多少の汚れ物などはこちらに収納できるのもポイント高し。荷物固定用のフックやトノーカバーも標準で装備。テールゲートはオーソドックスな跳ね上げ式だが、比較的軽く操作ができるのは日常シーンには嬉しい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
150Gに搭載されるのは、1.5リッターの109psエンジン+CVTという組み合わせ。燃費向上意識が強いゆえか、かなり低い回転数を好むセッティングがされている。アイドリング時の振動はやや大きめ。同様に燃費を気にしてか「D」レンジでスタートすると直後に一度エンジン回転数が大きく下がる設定にも、ちょっと違和感を感じる。低速時に一定速で走行しようとすると、エンジン回転が微妙にハンチング(上下)して意図しない速度変化を起こしがちなのも気になるポイント。「S」レンジをセレクトするとこうした違和感は解消するが、今度は必要以上に高いエンジン回転数を選びがちになるのが悩ましい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
ヴィッツベースのシャシーに無理矢理(?)16インチのシューズを履かせたためか、走りの質感は高いとはいえない。走り出した瞬間から路面凹凸を拾っての上下Gが強めで、ひょこひょこと落ち着かない。ボディが持ち上げられることによる耐転倒性を高めるため、全般に脚がかためられた……。そんなことを想像させられる乗り味である。
ロードノイズが大きめでばね下の動きもやや重々しい。最小回転半径が5.5mとボディサイズのわりに小回りがきかないのも、やはり“分不相応”に大きなシューズによる弊害か……。と、そんなことを理詰めで考えるより、クロスオーバー調のスタイリングを楽しんで乗りこなすのが“イスト通”なのかもしれない。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2007年8月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:3649km
タイヤ:(前)195/60R16(後)同じ
オプション装備:ディスチャージヘッドランプ(4万7250円)/スマートエントリー&スタートシステム+盗難防止システム(4万950円)/DVDナビゲーション+ステアリングスイッチ+音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター(13万1250円)/ETCユニット(1万4700円)
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。







