2004ワークスチューニングカー合同試乗会(その1)【試乗記】
TRD(トヨタ)&NISMO(日産) 2004.07.02 試乗記 2004ワークスチューニングカー合同試乗会(その1) 自動車メーカー直系のチューニングメーカー6社による「ワークスチューニングカー合同試乗会」が、2004年も開かれた。自動車ジャーナリストの河村康彦と、『webCG』オオサワが、各メーカーから1台をピックアップして試乗した。良識あるチューントヨタ・クラウン3.0アスリートTRDバージョン(6AT)
“イメージ一新!”を標榜する新型「クラウン」。だが、「まだ“オヤジくささ”が抜けきらない」と感じる人のため(!?)、お約束の排気系に手を加えたエンジンと、フルにチューニングを行ったサスペンションを装着。さらに、約47万円のタイヤ&ホイールセットと強化ブレーキラインを加えたクルマが「TRDバージョン」である。
19インチシューズにもかかわらず驚かされたのが、「ひょっとしたら“標準車”以上!?」と思わされるほど、フラット感に富んだ乗り心地。しかも、20mmローダウンのサスペンションセットを装備するのだから、なおさら感心だ。エンジンサウンドは2500rpm付近にややこもり音のピークがあるものの、スポーティな気分を盛り上げてくれる。メーカー直系チューナーの良識が感じられる“喧しくないマフラー”だったことは好印象だ。
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やや問題も……
試乗会が開催されたときは「まだ試作品段階」だったダイレクトブレーキラインは、ノーマルと段違いのペダル剛性感を生み出してくれるスグレモノ。同じく試作のブレーキパッドと相まって、制動力もなかなかのモノである。
ただし、コーナリング時、ステアリングやボディ(特にフロントまわり)の剛性が不足気味に感じられた。ここまで足まわりを詰めたせいだろうか、クルマ全体の性能にやや不満が残ったのが玉にキズ……。
(文=河村康彦)
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ターボチューンプラン採用トヨタ・イストTRD ターボ(4AT)
TRDは、1.5リッター直4「1NZ−FE」ユニットを積むコンパクトカーをターボチューンする「TRDターボチューニングプラン」を展開している。対象モデルは、「ヴィッツRS」「イスト」「bB」の3種類で、価格はいずれも、車両価格+62万7900円だ。
「イストTRDターボ」は、「1.5S“Lエディション”」(154万3500円)にターボチューンを施したうえ、足まわりなどにも手を入れたコンプリートカー。価格は231万円、車両持ち込みの場合は、車両価格を含めて約241万円になる。
“メーカー直系チューナー”の場合、パーツ購入や取り付けはディーラーで行うが、ターボチューンは特別。TRDの研修をパスしたメカニックが常駐する「TRDファクトリー」と直営店・工場、合わせて10店舗のみが取り扱う。詳細はウェブサイト(http://www.trdparts.jp/parts_trdturbo-plan.html)を参照のこと。
ジマンの心臓部は、ターボチャージャーとインタークーラー、専用ECU、吸排気系パーツなどを装着し、ノーマル比41psと5.6kgm高い、150psの最高出力と20.0kgmの最大トルク(いずれもグロス)を発生する。
単にパワーを高めるのではなく、フラットなトルク特性や扱いやすさを考慮したという言葉どおり、加速は滑らかで、フルスロットル時のトルクステアも強くない。スポーティ風味がほどよく利いたクルマだと思う。ちなみに、トランスミッションはベース車に依存するため、イストとbBは4ATしか選べない。
(webCGオオサワ)
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“競争のプロ”仕様NISMOエルグランドS-tune Sports Resetting仕様(5AT)
「NISMO」(NISSAN MOTORSPORTS INTERNATIONAL)といえば、“競争自動車”製作の専門家だ。そんなプロ集団がミニバンを手がけると、ルックスがかくもカッコよくなる。それが「NISMOエルグランドS-tune」である。
「フェアレディZ」や「スカイライン」シリーズにも採用され、ノーマルでもそれなりに強力な3.5リッターV6エンジン。それに、ハイオクガソリン専用使用を前提とした吸排気系のリファインやコンピューター・リセッティングを施した。より活発になり、フィーリングが向上した。2トンを超える車重にもかかわらず、加速力に不満はない。
「同乗者が不快にならないことを心がけた」という足まわりは、意外なほどロールを許す。とはいえ、期待以上の乗り心地と高い接地感が両立していた。ただし、それに気をよくして振りまわせば、やっぱりリアの住人たちはたまったモノではないだろうけど……。スローなステアリングギア比や微舵操作に対する応答の鈍さは、“家庭用マイクロバス”の宿命か!?
冒頭でも述べたが、エクステリアは“スポーティ”と評することができる仕上がりである。せっかく外観、足まわりも頑張ったのだから、横Gを受けると即座に腰くだけになるシートをはじめ、インテリアにも手を加えてほしかった。
(文=河村康彦)
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S1ユニット with ATNISMOスカイラインクーペS-tune(5AT)
「VQ35DE」をチューンした「S1ユニット」を積む「スカイラインクーペS-tune」。従来は6段MT仕様のみだったが、今回は5段ATが組み合わされたことが特徴である。ストリート向けチューンをコンセプトにする、「S-tune」にピッタリの組み合わせといえるかもしれない。
エンジンは、AT専用カムシャフトの採用や吸排気効率アップ、コンピューターを最適化するなど、専用パーツを付与。新たに「S-tune Concept engine spec.1 for AT」なる、なが〜い名前が与えられた。価格は、部品と工賃込みでフルキットが50万円、6MT用は55万円である。ちなみに、ECM、エアエレメント、専用スパークプラグのみのベースキットは、AT、MT共通の21万円。
コンプリートカーのエクステリアは、ゲーム「グランツーリスモ」シリーズを制作するポリフォニーデジタルとのコレボレーションで生まれたもの。単なるカッコにとどまらず、風洞実験などを経て性能も検証されたという。ほかに、サスペンションやブレーキパッド、マフラーなどのメカチューンが施される。
(webCGオオサワ/写真=清水健太/2004年7月)
TRD:
http://www.toyota-ttc.co.jp/trd/
NISMO:
http://www.nismo.co.jp/
・2004ワークスチューニングカー合同試乗会(その2)
・2004ワークスチューニングカー合同試乗会(その3)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。