ダイハツ・ムーブ エアロダウンRSリミテッド【ブリーフテスト】
ダイハツ・ムーブ エアロダウンRSリミテッド 2001.11.16 試乗記 ……144.5万円 総合評価……★★★マニアック
正直いって、乗る前からお腹いっぱいの気分だった。だって軽なのにこのデカさ。このデコレーション。そして、規制値いっぱいの動力性能。さりげない、あるいはムリがない、のまさに正反対方向へ驀進している。ダイハツの垢抜けないほうの顔が全開になった、なんともトゥーマッチな軽。
イザ乗ってみたら、これはこれでけっこう食えた。体調がよかったからか? それとも、日本人の身体に流れるヤンキーの血が共鳴していたのか? 「ほかのクルマに背の高さで負けるのがどうにもガマンならない」という人以外は、このテとしてはMAXのほうがはるかにいいと思う。少なくとも実用上は。そういえばネイキッドもあるじゃないですか。
さすがダイハツというべきかムーブの土台は重荷をわりとよく堪えていたけれど、でも重荷は重荷。なくなれば、走りも燃費ももっとよくなる。ここまで屋根が高くなければ居心地のよい客室空間が得られない、なんてこともないのだ。いささか余談ですが、その昔アレックス・モールトン(初代ミニのサスペンションとか小径車輪自転車で有名なあの人)へのインタビュー中に卿からたしなめられたことがある。「基本的に、乗りモノの車輪は直径が小さいほうが高性能だ」かなんかいわれて「じゃあ、直径1cmの車輪は超高性能ってことですか?」と返したら‘Don't be so maniac.’ナニをいいたいかというと、ムーブをつくるにあたってダイハツもいささか「maniac」になっていたのではないかと。前々から下ごしらえをしておきながらワゴンRに先をこされてしまったことへの悔しさ、というのもあっただろうか。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1995年8月、スズキ・ワゴンRを追うかたちで登場。98年の軽自動車規格改定で2代目となった。ジウジアーロによるデザインといわれる新型のボディサイズは、全長x全幅x全高=3395x1475x1650〜167mmと新規格いっぱいまで拡大された。またダイハツの衝突安全ボディシステム「TAF」の採用により、国内基準はもとより、欧州の衝突基準もパスする安全性が得られたという。
「ムーヴ」は、スタンダードモデルの「ムーヴカジュアル」と、スポーティなドレスアップを施した「ムーヴカスタム」の2タイプからなる。搭載されるエンジンは直3SOHC(45ps/5.6kgm)、直3DOHC(58ps/6.5kgm)、直3DOHCターボ(64ps/10.9kgm)、直4DOHCターボ(64ps/10.2kgm)の4種類(後にシングルカムが落とされた)。トランスミッションは5MT、3ATと4ATに加え、CVTもあるフルラインナップ! 駆動方式はFFとフルタイム4WDが用意される。
(グレード概要)
ムーヴ「RS」は2001年1月9日に、「カスタム」シリーズの一部として設定された。4灯式のカスタムに対し、こちらはディスチャージヘッドランプの2灯式。大型ハロゲンフォグランプ、専用グリルや大型エアロバンパーほか空力パーツを装着し、より“スポーティ”を演出する。後に「ムーヴカジュアル」「ムーヴカスタム」に続く、第3の柱として独立。いわゆる高付加価値モデルである。「エアロダウンRSリミテッド」は、「エアロダウンRS」をベースに、特別装備として、CD/MDデッキ付AM/FMステレオチューナーや、16cmフロントスピーカーなどを付与した最上級グレード。エンジンは直3DOHCターボ(64ps/10.9kgm)を搭載し、組み合わされるトランスミッションは4ATのみ。駆動方式は2WDと4WDの2種類となる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
ボンネットの「低さ」「見えやすさ」にこだわるのがダイハツ流らしい(その点は旧型のほうが徹底していた)。が、着座位置との関係でいうとダッシュボード全体やハンドルの位置がやや低すぎ。それとガラスが、こちらは明らかにデカすぎ。マニアックといえばこれほどマニアックなデザインもちょっとないオーディオのヘッドユニット(非ダイハツ製)。格納式カップホルダーを両のドアに設けたのはちょっといいアイデア、かもしれない。おそらく汎用の後付けモノから得た発想だろう。
(前席)……★★★
とりあえず、シートの材料をケチっていないところは評価できる。タテヨコにくわえて厚み方向もわりとたっぷりとしており、それゆえの軽自動車ばなれしたリッチなかけ心地。が、エルゴノミクスを細部までツメきったような印象は特になし。
(後席)……★★★
座って一驚。材料ケチってないのは前席と同様で、しかも頭と天井の間がガバガバでない。つまり、着座位置がものすごく高い。ド外れて高い背丈をその意味ではよく活かしている。きわめて良好な見晴らし。が、惜しむらくはヘッドレストのステーの長さが足りない。足りないというより、これではロクに意味をなさない。延ばそうと思ったら一瞬にして抜けてしまう、というのは……。
(荷室)……★★★
背もたれをバタンと倒したあと、さらに背もたれ+座面の全体を前方へハネ上げることもできる。畳まれたシートが前後方向の空間をいささかくう、ということはあるけれど、そのためマックス拡大時も荷室の床はすべて本来の床。つまり背もたれの裏側ではない。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
動力性能はものすごく強力。870kgの車重や、そして間違いなくデカいはずの空気抵抗をもモノともせずにブイブイ速い。ブリブリ走る。ナンバちゃん(カメラマン)の知り合いがこれに乗っていて、リミッター外すとメーター180km/h(ノーマルだと目盛りはないはず)は楽勝らしい。そういわれて納得。高速道路、コワいものなし。街中でのちょっとした加速でもターボはすぐ効く。即ブリ。むしろ、効かさずにおとなしく走るのが難しいくらいだ。ありあまるがごときトルクのおかげかオートマも違和感なし。というか、そもそもターボとオートマ(トルコン)は相性がいい。過給前のトロい領域が上手いことごまかされるので。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
かなりあぶなっかしく見える体型が想像させるよりもずっと安定している。締め上げられたバネやダンパーのおかげ、というのはあるとしても、乗り心地だって特に悪くない。豊かなバネ上重量のおかげかもしれないが、それにしたってアシの基本がヘロヘロではダメだろうし。
ということで、意外やなかなか。外観や動力性能と同様、シャシーもブリブリ。サイズ銘柄ともにこれまたイカツいタイヤが、決してダテでは終わっていない。伝統的にダイハツの軽はスズキの軽と較べていろんなところが分厚い感じで、それもいささか心強い。いずれにせよ、デリカシー溢れる運転が似合うタイプでは決してない。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:森慶太
テスト日:2001年8月28日から30日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:3537km
タイヤ:(前)165/55R14 72V/(後)同じ
オプション装備:−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:340.3km
使用燃料:40.7km
参考燃費:8.4km/リッター

森 慶太
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