スバル・トラヴィックLパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
スバル・トラヴィックLパッケージ(4AT) 2001.09.22 試乗記 ……234.0万円 総合評価……★★★★言い訳無用のピープルムーバー
問:スバル・トラヴィックのTVコマーシャルに、なぜベートーベンのシンフォニーNo.7が使われるのか?
答:ヨーロッパ発想の7人乗りだから。
いうまでもなくトラヴィックはオペル・ザフィーラのOEMモデルである。アストラベースの3列シートミニバンであることに変わりはないが、GMタイ工場で生産されるため、「ヨーロッパ生まれ」ならぬ「ヨーロッパ発想」となったわけだ。ザフィーラは1.8リッターモデルが輸入されるが、こちらは2.2リッター。しかもお安い!
一見、内も外もまんまザフィーラだが、ノーズにはスバルの象徴「六連星(むつらぼし)」が輝き、フェンダー後部に小さな「TRAVIQ」のプレートが付く。ドアを開ければ、ザフィーラには設定されないシート地(欧州名「ヴィヴァルディ」)が使われ、センターコンソールは銀色に塗られる(除くベーシックグレード)。サードシート天井にエアコン吹き出し口を追加したのは、いかにも和風な心遣い。
やや寝たステアリングホイールを握って踏み降ろすカタチのペダルを踏んで走りはじめれば、2200rpmから最大トルクの90%を発生するというエコテックユニット(とは呼ばれないが)が力強い。スバルチューンの足まわりは日本の道路事情に合わせてややソフトに振られたというが、絶対的にはミニバンらしからぬ硬さ。さすがはアウトバーンオリジンだ。ハンドリングは正確かつ落ち着いたもの。「ピープルムーバーだから」という言い訳はいらない。全体に手厚いおもてなしはないけれど、実用性バツグン。カクシャクたるご老人のいる3世代家族向き。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年8月22日から発売が開始されたGMからのOEMモデル。オペル・ザフィーラのスバルブランド車である。3列シートの7人乗りで、サードシートをフロアに収納できるのがジマン。国内で販売されるザフィーラが1.8リッターであるのに対し、こちらは2.2リッター。4段オートマチックトランスミッション、足まわりなどをスバルがチューニングしたという。生産はGMタイランド工場。なお、トラヴィックとは、「Travel」と「Quick」からの造語だ。
(グレード概要)
トラヴィックは、ベーシック(199.0万円)、エアロパーツを装着して16インチホイールを履くスポーティグレード「Sパッケージ」(224.0万円)、装備が奢られた「Lパッケージ」(234.0万円)がラインナップされる。テスト車のLパッケージには、「ルーフレール」「サイドエアバッグ」「フロントアクティブヘッドレスト」「ヘッドライトウォッシャー」「フロントハロゲンフォグランプ」などが標準で付く。ステアリングホイールにオーディオリモートコントロール機能をもつのもLパッケージだけ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
使用/生産両面から機能的にまとめられたインパネまわり。スピードメーターは、一部の高性能スポーツカーとは逆に、60km/h以下の目盛りが大きく、街なかドライブ時の視認性に配慮される。ステアリングホイール中央の「SUBARU」マークおよびメタル調センターコンソールパネルがザフィーラとの相異点。Lパッケージのインフォメーションディスプレイは、日付、外気温ほか、燃費、平均速度などを表示することができる。
(前席)……★★★
素っ気なく感じられる平板で硬い“質実剛健”シート。着座位置は高め。チルト&テレスコピック機能をもつステアリングホイールおよびラチェット式レバーによるシートリフターを備え、ドライビングポジションの選択範囲を広くする。バックレストのリクライニングは、無段階調整のダイヤル式。
(2列目シート)……★★★
前席同様、硬いクッション。形状は、多彩なシートアレンジと座り心地のギリギリの妥協点。前後300mmの範囲でスライドできるほか、バックレストは6:4の分割可倒式。また、折り畳んでフロントシートにつけ、サードシートもフロアに収納することにより、広大なラゲッジスペースをつくりだすことが可能だ。最大容量は、1705リッター(VDA方式)!! アームレスト部分をくり抜くカタチのセンタースルー機能あり。
(3列目シート)……★★
トラビックのシートアレンジのハイライト。座面前端を軸に椅子ごと前に倒し、尺取り虫のようにバックレストを前に延ばすことでフロアに格納すると、フラットな荷室床面が出現する。大人が座ると、さすがに膝前スペースはミニマムだが、ちゃんと後頭部を支持するガッシリしたヘッドレスト、キチンと締められる3点式シートベルトが、安全に厳しい“ヨーロッパ発想”を主張する。
(荷室)……★★
床面最大幅98cm、奥行き32cm、天井までの高さ92cmと、7人乗車時には最小限のラゲッジスペース。3世代家族で旅行、……は難しいが、おじいさん、おばあさんを家族そろって駅まで送り迎えすることはできる。お小遣いがもらえるかもしれない。サードシートを収納すれば、奥行きは100cm前後に延長される。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.8リッターのザフィーラでもじゅうぶんと感じられるエンジン出力だから、2.2リッターならいわずもがな。2500から3000rpmといった実用域でトルキーなのがありがたい。ただし、回転を上げると趣に欠けるノイズがそれなりに高まる。4ATは、停発進の多い日本の道路事情に合わせてトルコンのトルク比を変更、発進加速をよくしたという。また、オペルゆずりの、アイドリング時にギアをニュートラルに入れて燃費向上と騒音低減を狙う「Nコントロール機構」を備える。発進時の不自然さは感じなかった。なお、エンジンはアダムオペル製、トランスミッションはアイシン製で、クルマはタイ工場で組み立てられる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
「高速でのスタビリティがイイ!!」とスバルの技術者も驚いたザフィーラ。しかし「アウトバーンのない日本ではさすがに硬すぎる」とダンパーがやや柔らかく改められたトラビック。それでも、絶対的には「硬い」と感じるヒトが多いだろう。前マクファーソンストラット、後トーションビームと、アストラゆずりのコンベンショナルな足まわりながら、しっかりとした操舵感と無闇に接地を失わないリアタイヤが、いかにも生真面目なドイツ流ミニバン。でも「運転が退屈」じゃありません。
(写真=阿部ちひろ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年9月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:471km
タイヤ:(前)195/65R15 91H/(後)同じ(いずれもMichelin Vivacy)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(9):山岳路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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