スズキ・ジムニーワイド(4AT)【ブリーフテスト】
スズキ・ジムニーワイド(4AT) 2001.09.19 試乗記 ……160.3万円 総合評価……★★軽こそ命
なぜか今、若い女のコに意外やこの手のクルマが受けているのだという。世のなかわからないものだ。ジムニーといえば軽自動車初の本格的なクロカン4WDとして、30年以上も前に誕生して以来、常に「男のクルマ」「スパルタンなクルマ」としてイメージされてきた。実際、排気量が360ccまでに制限され、ただでさえまともなクルマづくりが難しかった時代には機能を優先するしかなかったのである。けれどもかえってそれが幸いし、特に2ストローク時代はジープやランクルなど並みいる大型4WDを相手にトライアル競技で圧倒的な勝利を収め続けた。コンパクトで軽量なボディを最大の武器にして。
それが最近の4WDブームで一般ユーザーの口にも合うよう“文化的”になり、ボディはかつて幌主流だったのがメタルトップ全盛に、エンジンにも余裕のある1.3リッターが加わった。女のコが乗るのに「埃まみれ」だったり「運転がツラかったり」ではウマくないからだ。そんな“軟派”の代表格がこのモデル。乗ってみると確かに運転して楽チンは楽チンだが、ほかにはこれといって得るものがなく、逆にジムニーが本来持っていた潔さが少なからずスポイルされているのも事実だった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
軽自動車初の本格クロカンとしてジムニーがデビューしたのは1970年。現行モデルは、98年の「軽」の規格改定とともに登場した3代目だ。依然としてラダーフレームをもち、サスペンションは前後とも堅牢なリジッド式である。4WDシステムは、FR(後輪駆動)をベースに、必要に応じて「4HIGH」「4LOW」に切り替えるパートタイム式。ジムニーワイドは、元は輸出用ジムニー。基本的に「軽」のジムニーと同じシャシーに1.3リッターエンジンを載せ、オーバーフェンダーを装着してタイヤを太くしたモデル。2000年4月13日にマイナーチェンジを受け、エンジンが、同じ1.3リッターながら、まったく新しいオールアルミユニットに変わった。
(グレード概要)
ジムニーワイドは、3ドア、1.3リッターのみのモノグレード。ただし、トランスミッションは4ATと5MTが用意される。ガタイはゴツイが、「パワステ」「パワーウィンドウ」「電動リモコンドアミラー」さらに「キーレスエントリー」まで装備される。そのうえ、ステアリングホイール、シフトノブなどは抗菌仕様となっている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
ことコストダウンに関してはトヨタも脱帽するほどの才能を発揮するのがスズキ。だから軽ナンバーワンメーカーの今日があるともいえる。とはいえ、直接に応力を受けない樹脂は徹底して肉を削ぎ落とされ、グローブボックスの蓋などはペラペラで紙同然だ。ドアポケットもほんの申しわけ程度。「軽」では許されたかもしれないが、ジムニーワイドはれっきとした「普通車」。わざわざエクストラマネーを投じてプラスアルファの価値を求めたユーザーには理解されないだろう。ボンネットリリースはグローブボックスの中にある。ジムニーワイドには設定されていないが、かつて基本ボディがキャンバストップだった名残である。
(前席)……★★
本来軽として設計されたものを125mmも拡幅したのだから広くて当然と思うだろうが、実際は改善されていない。広がったのはトレッド(前後とも+90mm)と太いタイアを収めるためのオーバーフェンダーで、ホイールベースは不変。バンパーの違いで全長が伸びている(155mm)ほかはそっくり同じボディが載っているのである。したがって、ほとんど平板に近いガラスが肩まで迫る息苦しさは相変わらず。縦置きのエンジンやトランスファー、プロペラシャフトをクリアするフロアトンネルもこのクラスとしては巨大な代物で、居住スペースを浸食する。さすがにヘッドルームだけは余裕があり、少しくらい不整地で跳ねても大丈夫そうだ。
(後席)……★
定員は4名、つまりリアシートは2人乗りだが、それでも絶対的に狭くかつ居心地が悪い。最大の原因は両脇を占拠するかなり大きなホイールハウスの存在。それに蹴られて中央寄りにセットされたクッションは、座面が小さいうえに不釣り合いな「土手」ことサイドサポートが張り出していてまともに座れないのだ。
(荷室)……★★
床面最大幅90cm、奥行き30cmと、ラゲッジルームそのものは軽の基準を以てしてもミニマムに近い。ただしリアシートが50:50分割のダブルフォールディング式で、さらに畳んだバックレストとラゲッジフロアを水平にセットする機構が付いているので、使い勝手は悪くない。リアシートを完全に「プラス2」と割り切って乗るのが正解かもしれない。
【ドライブフィ―ル】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
軽に比べて24psと1.2kgm増強されてはいるものの、基本的に中低速を得意とし、高速走行がやや辛いのは変わらない。タウンスピードでは意外な静かさ。Dレンジ(4速)で3300rpmに相当する100km/hでも、風切り音とリアデフの唸りが若干耳につく以外はまずまずだが、加速しないのでキックダウンすると途端にうるさくなる。FRと4WD(HIGH)の切り替えは走行中でもギア鳴りなしに常時可能。4輪駆動にすると明らかに駆動系の剛性感が高まりシャキッとする。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
サスペンションチューニングの手法が少々古臭い。ひたすら乗り心地、それも低速でのハーシュネス回避を重視した結果、過大なコンプライアンスで終始“ブワブワのグニャグニャ”。雲を掴むような心許なさである。アンダーステアも強く、首都高で遭遇する程度のコーナーでも曲がりにくいことがある。高速では横風に弱いが、そのくせステアリングホイールは360Φと小径。筆者の経験だとクロカン4WDは、ステアリングホイール、ギア比ともスロー気味にし、ドライバーが意識して切るくらいがちょうどいい。さすがに足まわりからのショックはよく断たれている。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(二玄社別冊単行本編集室)
テスト日:2001年7月26日から27日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:5245km
タイヤ:(前)205/70R15 95Q/(後)同じ(いずれもヨコハマ Geolandar G043)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

道田 宣和
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