スズキMRワゴン ターボT(4AT)【ブリーフテスト】
スズキMRワゴン ターボT(4AT) 2002.03.08 試乗記 ……126.3万円 総合評価……★★★余裕のリラックス
“21世紀のワゴンR”って感じのMRワゴン。ボンネット上の小さなエアスクープがターボの証。ルーフエンドスポイラー、マフラーカッターで、後姿もスポーティにキメる。ほほえましいカッコよさ。
やや高めのシートに腰掛けると、フロントウィンドウ下端までのダッシュボード上面の奥行きと、サイドウィンドウ前端の三角窓がいかにもミニミニバン。車内のブルートリムに、青く光るオプティトロンメーターがよく映える。キーをひねると、オドメーターに「HELLO」と文字を表示して挨拶してくれる。
MRワゴンのターボエンジンは、ワゴンRに積まれていたシングルカムターボ「F6A」型からツインカム「K6A」型にグレードアップされ、いままでより500rpm低い3000rpmで8.5kgmの最大トルクを発生。最高出力をあえて60ps/6000rpmに抑えて実用域での使いやすさを追求した。ガスペダルの開閉が激しい街なかで、「軽」も「ターボ」も感じさせない自然な出力特性。魅力的なボディスタイルとじゅうぶんな動力性能、そしてリーズナブルな維持費で、他社のリッターカーを迎え撃つ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
MRワゴンは、2001年12月4日に発売された4人乗り軽自動車。ワゴンRのシャシーにモディファイを加え、マジカルリラックス(=MR)を謳う滑らかな「モノフォルム」ボディを載せた。エンジンは、0.66リッター直3DOHC12バルブのNA(自然吸気/54ps、6.4kgm)とターボ(60ps、8.5kgm)の2種類。いずれも4段ATと組み合わされる。駆動方式は、全グレードにFFと4WDが用意される。
(グレード概要)
ターボTは、その名の通り、MRワゴンのターボモデル。ボンネットのエアスクープがNAモデルとの識別点。そのほか、ルーフエンドスポイラー、マフラーカッターなどでスポーティに装う。アルミホイールは標準だ。フロントブレーキがベンチレーテッド(通気式)になるのも、ターボだけ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
エクステリアの曲面をインテリアでも反復したかのようなインストゥルメントパネル。フロントガラスまでの間が窪んでいるのは、何ゆえか? グローブボックスはもちろん、右端には「リッド付きインパネポケット」とカードなどを差しておく「カードホルダー」が設けられるので、料金所でもアタフタしないですむ。なお、MRワゴンは、「軽」初のオプティトロンメーターを採用したのがジマン。速度計と燃料計が淡く青色に光ってドアトリムとカラーを合わせる。オシャレかも。
(前席)……★★
「コラムシフト+足踏み式パーキングブレーキ」の採用により、前席左右間サイドスルーを可能とした。が、スズキ軽の例に漏れず、座面長が短めなため、足もとが“なんだかスカスカ”感あり。男の子がスカート履いたら、こんな気持ちかしらん。運転席側の床に、左足用フットレストがちゃんと設けられたのはイイけれど。左右シート間に設置されたネット式のモノ入れ「フロントシートサイドラック」は楽しい。助手席下には、ベースモデルたるワゴンR同様、バケツ(助手席アンダーボックス)がはめ込まれる。
(後席)……★★★
MRワゴンの乗車定員は4名なので、後席は2人用。左右分割式で、105mmのスライド量をほこる。小さなアームレスト付き。前席同様、座面の長さが少々不足気味だが、背の高さを活かして大人用としてもじゅうぶん実用的な空間を得る。前席の下に足先を入れられるようにしてわずかな空間も無駄にしない。ヘッドレストは伸縮可能だが、ステーが貧弱で、長さも足りないのが残念。背もたれは分割可倒式かつリクライニングでき、一番後に倒せば、リアシートが簡易ベットに変じる。営業の人にはウレシイ? また、背もたれに連動して座面が前後にスライドするほか、ヘッドレストを前に倒して、フォールディング時のフロントシートのスライド量をより確保できるよう工夫されている。
(荷室)……★★
リアサスペンションのダンパーを、スプリングと別体式にして取り付け位置を後方に変更、ラゲッジルームへの張り出しを抑えた。これは、リアシートのスライド量確保にも貢献している。荷室はスッキリとした形状だが、スペース自体は、床面最大幅101cm、奥行き46cm、天井までの高さ90cmと日常ユースレベル。空間を徹底的に利用するスズキの精神は、向かって左の側壁に設けられた奥行き12cmほどの小物入れにも表れる。なお、後席バックレストを倒すと、前席までの距離約130cmが荷室の奥行きとなる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ワゴンRのSiターボはSOHCユニットだが、MRワゴン「ターボT」はDOHCユニット。ツインカムにしたのは、よりエンジンを回してパワーを稼ぐため、ではもちろんなく、吸排気カムの制御を工夫して、シングルカムバージョンより500rpm低い3000rpmで8.5kgmの最大トルクを発生、使いやすい、フラットな出力特性とするため。ことさらターボを感じさせることのない実用ユニットだ。コラム式の4段ATと組み合わされる。普通にドライブするぶんには、「D」に入れっぱなしでも「シフトプログラム」「スムーズさ」とも不満はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
グッと上がった車内の品質感同様、MRワゴンターボの乗り心地も、にわかに「軽」とは思えぬシッカリ感をもつ。接地感、ステアリングフィールともたしかなものだ。車両本体価格そのものは、他メーカーの“普通”小型車と変わらないから、ドライブフィールでも(潜在)顧客を説得する必要があるのだろう。サスペンションは、前がマクファーソンストラット、後はスズキ軽標準(?)のITL(アイソレーテッド・トレーリング・リンク=左右のトレーリングリンクを結んだもの)。街なかで走るかぎり、アゴを出すことはない。タイヤサイズは、NAモデルと同じ。ブレーキは、フロントがディスクからベンチレーテッドディスクに格上げされる。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
【テストデータ】
報告者 :webCG青木禎之
テスト日 :2001年12月17日から20日
テスト車の形態 :広報車
テスト車の年式 :2001年型
テスト車の走行距離 :1829km
タイヤ :(前)155/65R13 73S(後)同じ(いずれもファルケン Sincera SN-651)
オプション装備 :マッドフラップ(1.3万円)
テスト形態 :ロードインプレッション
走行状態 :市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
走行距離 :369.1km
使用燃料: −−
参考燃費 : −−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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