メルセデスベンツE320アバンギャルド/E500アバンギャルド(5AT/5AT)【試乗記】
冷徹に設計されたサルーン 2002.07.05 試乗記 メルセデスベンツE320アバンギャルド/E500アバンギャルド(5AT/5AT) ……710.0/870.0万円 2002年6月13日、7年ぶりのフルモデルチェンジを果したメルセデスベンツEクラスセダンの、わが国における販売が開始された。5リッターV8搭載の「E500アバンギャルド」と、3.2リッターV6「E320アバンギャルド」のファーストインプレッション。webCGエグゼクティブディレクターの大川 悠が乗った。
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2年後の評価が気になる
ここのところ立て続けに輸入開始された海外の新型車の中でも、おしなべて評判がいいのがメルセデスベンツのEクラスである。2002年2月、スペインで国際試乗会が開かれて以来、ともかく絶賛の嵐……とまで言わなくても、相当に好評だ。
でもちょっと待って欲しい。先代のミディアム・メルセデスたる「W210」が登場してすぐも大好評だったが、1、2年内に、その前の「W124」に比べるなら、設計の詰めが甘く、品質も劣ると、一部で評価が逆転したものだ。
ヨーロッパ車は大体そうだが、実際のところ新型になって2年以上過ぎないと、その真価は断定できない。メルセデスさえも、発表した直後からどんどん変更することがある。新型を送り出すときに「完璧主義」を貫いたはずなのに、いざマーケットに出した後で、さらに考え直す。よくいえば過度な「完璧主義」かもしれない。今回のほとんど絶賛に近いほど評判がいい「W211」型、数年後にどう評価が変わるか、ちょっと気になる。
北海道で、「E500」と「E320」のアバンギャルドに乗って、わずかに不安になった。いいクルマだけど、完璧ではなかったからだ。
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電子化されたW211
新型Eクラスは徹底的に生まれ変わっている。ボディはやや高く、幅広く、ホイールベースが伸びただけでなく、高張力鋼板の大量採用によって軽量化と剛性向上が図られたし、空力特性も改善された。
サスペンションは一新され、特にフロントは新しい4リンクになったし、500には「AIRマティック・デュアルコントロール」と呼ばれる、エアサスと電子制御ダンパーを採用した。これは走行状況に応じてアクティブに反応するほか、任意にも3段階に切り替えられる。またブレーキはSLと同様に、電子式の「セントロニック・コントロール」である。無論、アンチスピンデバイス「ESP」を装着する。
日本にはさし当たって5リッターV8を積むE500と3.2リッターV6のE320がともにアバンギャルド仕様で用意され、すぐに2.6リッターV6のE240が追加される。価格はそれぞれ870、710、605万円となる。
先々代に戻ったような……
まずE500アバンギャルドから乗る。本来はアメリカにおけるレクサス対策車として、あるいはチューンドカーにも対抗できるような高性能版として生まれたのが500だが、見かけに関しては意外とおとなしい。新しいスタイルは、当たり前のことながら「S」と「C」を巧みにミックスしたようなもので、一体ではなくて、デュアルのヘッドランプだけが、これまでのEの伝統を引き継ぐ。すでに何となく見慣れた格好で、むしろやや保守的にすら感じられる。
室内も最近のメルセデス流で、一世代前と比べると多少有機的なデザインと明るいタッチが感じられるが、ゆるぎなき機能主義を愛する古いファンからすれば、中途半端な様式解釈にも見える。でも相変わらずタコメーターが時計と同じ大きさというのは伝統通り。時計が大きすぎるというよりは、タコメーターが小さすぎるというべきか、それともメルセデスは速度で時間を買うクルマだということをいいたいと理解すべきだろうか?
先代に比べると、その一代前にやや戻ったように、クッション中央部が厚くなった感じのシートは、大きく改善されたと腰痛持ちは瞬間的に感じる。リアのルームは確かに多少は広がっているだろうが、驚くほどの広さではない。
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メルセデスといえどもドライバーズカー
実際に乗って一番感心したのは、数々の電子アシスト機構よりもエンジンだった。やはりこの5リッターV8は気分がいい(3.2のV6もまたまたよくなった)。よどみなく回り、重厚なトルクをフィードし続けるから、よくできた5AT(ティップ付き)とあいまって、緩急自在である。ということはアウトバーン・エクスプレスにも簡単になれるわけで、うっかり勘違いして日本で飛ばすと、別のやっかいを抱え込むことになる。
ただそういうときに新しい電子制御サスペンションが完璧かというと、100%は完全とはいえなかった。ステアリングは微妙にトルクの変動を伝えるし、路面にもわずかに影響される。乗り心地は確かに第一級に思えるが、これは実はドライバーとパセンジャーで受ける印象が違う。速度を上げるに従って、あるいは任意に硬さを上げることによって、ドライバーは大きな安心感を抱ける。だが、一方でパセンジャーにとっては、明らかに突き上げが気になってくるのだ。
これは実はエアサスを持たないE320でも似たような印象を受けた。自分がやや早いリズムで運転していると非常に快適なのに、そういう時にリアシートにいると、路面の変化がかなりストレートに伝わってくる。最大の理由は試乗車がいずれも数100kmしか走っていないために、初期フリクションが抜けていなかったからだろう。依然としてドイツ車は、たとえメルセデスといえどもドライバーズカーとして設計されているというべきだろうか。
どうしてもメルセデスの新車となると期待値が高く、これに伴って評価基準が上がる。いま、冷静になって思い出すと、やっぱりとても冷徹に設計され、バランスがとれたサルーンだと思う。だが、個人的には、遅れて導入されるE240に、一番興味がある。
(文=webCG大川 悠/写真=高橋信宏/2002年7月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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