ボルボS60AWD(5AT)【ブリーフテスト】
ボルボS60AWD(5AT) 2001.12.08 試乗記 ……526.0万円総合評価……★★★
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オルタナティブの積極攻勢
S60は、2001年1月の日本導入以来、8ヶ月で年間予定販売台数の1300台を売り切り、ボルボ車のセダン比を16%から24%に引き上げた新世代サルーン。2002年モデルから投入された「AWD」はそのヨンク版。495.0万円のプライスタグをさげ、BMW330Xi(569.0万円)と真っ向勝負。「4WDのボルボは欲しいけど、ワゴンはちょっと……」という顧客層を取り込み、すでに7割を超えるドイツ勢からの乗り換えを加速させる。
AWDは、20mm上がった車高ゆえ、タイヤとの隙間が広がったホイールハウスが外観上の特徴。S60「2.4T」と同じ200psライトプレッシャーターボを搭載、5段ATを介し通常は前輪を駆動、スリップを感知するや電子制御多板クラッチたる「ハルデックス」カプリングがすかさず後輪にトルクを分配する。その間、わずか0.005秒(60km/h時)。移動距離にして8cm。ドライバーは意識することがない。
クルマの性格は、FFモデルとウリふたつ。フラットで穏やかなトルク特性をもつ5気筒ターボ、精緻なシフトプログラムが組まれたアイシン製5段AT、そしておおらかな乗り味。ボルボの主張するスカンジナビアンテイストとは、インテリアの造形にとどまらず、乗員の「リラックス」のことと見つけたり。「ジャーマンブランドのオルタナティブ」からの脱皮を図る北欧メーカーの、日本市場への積極的なアプローチ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
S60は、ヒット作となった850セダン/旧S70のマーケットを受け継ぐサルーンとして2000年にデビュー。ボルボのイメージを一新する「4ドアクーペ」なる流麗なボディをまとっての登場である。翌2001年から日本にも導入が開始された。本国にはターボディーゼルも用意されるが、日本に入るのはすべてガソリン。2.4リッターの自然吸気(170ps)「2.4」とライトプレッシャーターボ(200ps)「2.4T」、2.3リッターハイプレッシャーターボ(250ps)「T-5」に、2002年モデルから「2.4T」のシャコタカヨンク版「AWD」が追加された。
(グレード概要)
S60「AWD」は、2002年モデルから加えられたS60シリーズの4輪駆動モデル。言うまでもないが、AWDは「All Wheel Drive」の略。フォード流の呼び方だ。装備に関しては、同じ低圧ターボを積む「2.4T」とアルミホイールの意匠も含めて変わらない。車高の違いが両者の識別点。ただし、シャシーコントロールに関しては、FFモデルたる「2.4T」には駆動輪のスリップを監視する「STC(スタビリティ&トラクションコントロール)」を備えるが、AWDには搭載されない。前輪のスリップを感知して後輪にトルクを移す電子制御多板クラッチ式4WDシステム「ハルデックス」カプリングがこれに代えられる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
「4ドアスポートクーペ」を謳うだけあって、ビーエムほどではないが、センターコンソールが運転手側を向くドライバーオリエンテッドスタイル。インパネまわりは、統一されたデザイン思想をもち、機能とのバランスが高次元にとられる。奇をてらったところのないメーター類、大きめのボタンやダイヤルが人に優しい。ステアリングホイールにはスポーク部分にオーディオなどのコントロールスイッチが埋め込まれ、ドライブ中の安全性向上に配慮する。後方視界確保のため、スイッチひとつでリアシートのヘッドレストを倒すことができるのもさすがだ。
(前席)……★★★★
850時代と比べると、標準的な大きさになったシート。かつての平板さは影をひそめ、座り心地もソフトになった。後頭部を支える大きなヘッドレストがココロ強い。背もたれにはダイヤル式のランバーサポートが備わる。AWDの場合、運転席8WAYパワーシートは標準装備。オプションの「ベーシックパッケージ」を選ぶと、助手席もパワーとなる。
(後席)……★★★
流麗なルーフラインから想像されるより、よほど実用的なリアシート。Bピラーにエアコン吹き出し口をもつ。足もとのスペースはじゅうぶん。わずかに沈んだ座面と倒れ気味のバックレストでヘッドクリアランスをかせぐ。身長165cmのリポーターの場合、頭上空間に不足はなかった。なお、同乗する子供用に「ISOFIX対応チャイルドシート」「インテグレーテッド・チャイルドクッション」「チャイルドクッション&バックレスト」をディーラーオプションとして選択することができる。
(荷室)……★★★★
アルミ製のトランクリッドを開けると、奥行きの深いラゲッジルームが広がる。フルセットのゴルフバッグ4つを収納できるとカタログに記載される。2本のダンパーを使ってリッドを支えるので、ヒンジが荷室に干渉しないのも評価ポイント。トランクルーム側壁のレバーを引くと、分割可倒式になったリアシートバックレストが倒れる。背もたれセンター部を貫通するスキーハッチも設定される。長尺物を積むのに便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
4、5、6気筒を揃えるボルボ自慢のモジュラーユニット。S60AWDに搭載されるのは、2.4Tと同じ低圧ターボ(200ps、29.1kgm)。最大トルクを1800から5000rpmにわたって発生する意図的にフラットな出力特性を与えられた。普段はしごく地味なパワーソース。ところが、意外やスロットルペダルを踏み込むと、快音を発っしてかすかなビートを打ちながらキレイに回る。シフトプログラム、変速ショックにおいて日本車になんら劣るところのない(アイシン製だからアタリマエだ)5段ATは、シーケンシャルシフトが可能な「ギアトロニック」。ときにはタコメーターの針を右側に振って走ってもイイ。S60シリーズは、2002年モデルから、国土交通省による平成12年度基準排出ガス25%低減レベルを達成した。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ボルボのフラッグシップ「S80」ゆずりのシャシーをもつため、ホイールベース対トレッド比が「スポーツカーライク」と主張されるS60。つまり、車軸間の長さのわりに、前後とも広いトレッドをもつ。歴代ボルボ車より格段に上がったボディ剛性と正確なステアリングが身上だが、ハンドリングは穏やかしごく。アンチスクワット&ダイブ機能を与えられた前マクファーソンストラット/後マルチリンクの足まわりがフラットな乗り心地を実現する。ドライビングフィールにおいても、圧倒的に「安全」が「スポーツ」に優先された印象。雪道での試乗だったため、高くなった車高の影響はよくわからなかった。FFベースの4WDシステムの恩恵も感じることはなかったが、これはトルク配分の自然な制御に成功した証である。なお、シャシーダイナミクスの電子制御に関して、いまのところ「4WDシステム」と「STC(スタビリティ&トラクションコントロール)」や「DSTC(ダイナミックスタビリティ&トラクションコントロール)」がトレードオフとなっている。今後、各システムの統合がすすむのだろう。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年12月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1457km
タイヤ:(前)205/55R16 90Q/(後)同じ(いずれもMichelin Studless)
オプション装備:ベーシックパッケージ(本革シート+チルトアップ機構付電動ガラスルーフ+助手席パワーシート+CD/MD付ハイパフォーマンスオーディオシステム+「Canaveral」デザイン・アルミホイール)=30.0万/助手席エアバッグ(1.0万円)
走行形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳道(1)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃料:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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