ボルボV70 2.4 75th Anniversary Limited Edition(5AT)【試乗記】
一服の清涼剤 2002.04.05 試乗記 ボルボV70 2.4 75th Anniversary Limited Edition(5AT) ……495.0万円 ボルボから2台のリミテッド・エディションがリリースされた。250台限定の「V40 T-4 75th Anniversary」と、750台が売られる「V70 2.4 75th Anniversary」。“ちょっと違った”北欧のエステートに、webCG記者が乗った。2台のアニバーサリーモデル
1924年7月25日の夜、スウェーデンはストックホルムのレストラン「スチューレホフ」で、アーサー・ガブリエルソンとグスタフ・ラーソンというふたりのスウェーデン人がザリガニ料理を食べたことを記念して……、否、その約2年後の27年4月14日に、アーサーとグスタフが創設した自動車会社最初のクルマ、「ヤコブ(Jacob)」こと「ÖV4」が工場から姿を現わして75年が経ったことを祝って、2種類のアニバーサリーモデルが登場した。ボルボ「V40 T-4 75th Anniversary」と、「V70 2.4 75th Anniversary」がそれ。いずれも、2002年4月2日から販売が開始された。
V40 T-4は、コンパクトなエステート(ワゴン)ボディに、日本ではカタログになかった、200psを発生する2リッター直4“ハイプレシャー”ターボを搭載したモデル。日本仕様車初のキセノンヘッドランプを装備する。
V70 2.4は、170psの2.4リッター直5ユニットを乗せたモデルがベースとなった。オフブラックと「アリーナ」と呼ばれる薄いクリーム色のトリムを組み合わせたインテリア、つや消しシルバーのアルミニウムパネルなどを特徴とする特別仕様車である。
V40の75周年モデルが200台の限定で395.0万円、V70が750台で495.0万円となる。
2002年4月1日から2日にかけて、両車のプレス向け試乗会が、関門海峡を挟んで、山口県と福岡県で開催された。V40 T-4の詳細は別項に譲るとして、ボルボの主力モデルたるV70のアニバーサリーモデルについて報告する。
フォードグループの優等生
試乗会1日目の夜、ボルボカーズジャパンの人と名刺を交換すると、左下に小さく「PAG Japan,Inc.」という文字が入っていた。ボルボが属するフォードグループが、本国で「フォード」「マツダ」「マーキュリー」の庶民派ブランド群と、「リンカーン」「アストンマーチン」「ジャガー」「ランドローバー」そしてボルボが含まれる「PAG(Premier Automotive Group)」に分けられたのにならい、日本でも2001年に「ピー・エー・ジー日本株式会社」が設立され、「ボルボカーズジャパン」「ジャガージャパン」「ランドローバージャパン」が統合された。「意外に知られていませんが、PAG日本の社長は、ボルボカーズのネシップ・ソヤックなんです」と斜め前に座った関係者が胸を張る(ボルボカーズジャパンの代表には、サイモン・マンが就任)。
2001年度、ボルボは日本市場で1万6437台を販売、「フォルクサスワーゲン」「メルセデスベンツ」「BMW」のドイツ御三家に次ぐ堂々の4位を獲得した。一方、同時期、親会社たるフォードは6188台で10位にとどまった。
世界的にも、人気SUV「エクスプローラー」(先代)の転覆問題やジャック・ナッサーCEOの退任などで足もと定まらないブルーオーバルとは対照的に、グループ内の、ボルボの優等生ぶりが目をひくという。
2004年ごろとささやかれる次期40シリーズから、フォード車とのプラットフォーム共用が具体化されるというが、ことプレミアムモデルに関しては、エンジンを含め、ボルボの独自性は守られるようだ。変化の激しい自動車業界だから、実際どうなるかは「神のみぞ知る」だが、現時点での、北欧メーカーの高い存在感がうかがえる。
ボルボのマーケット企画担当の方に日本市場での好調の理由を聞くと、70シリーズはもとより、車高を上げた「XC(クロスカントリー)」の予想外の健闘が挙げられた。そして、「VOLVO FOR LIFE」とキャッチコピーに掲げるように、ブランドイメージのよさが最大の強みだと語った。「ボルボのエステートと聞けば、明確なイメージが湧きます。これがフォルクスワーゲンのワゴンだと、そうはいかない」とも。販売されるボルボ車中77%(!)を占めるエステートは、ラゲッジルームに「ライフスタイル」を積んで走っているわけだ。ボルボは2001年、926台の僅差でVWをおさえ、輸入ステーションワゴン登録台数トップのブランドに輝いている。
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変わらぬボルボらしさ
V70 2.4 75th Anniversaryは、フロントドアに「75」と書かれた四角いエンブレムを付け、モールはボディと同じシルバーメタリックに塗られる。真横にすると、ボルボの伝統的なデザインが明確になる。つまり、「ほぼ垂直に立てられたフロントグリル」「切り立ったリアエンド」そして「3枚のサイドガラスのうち、一番後ろの窓が最も長い」。ホイールはスペシャルな17インチ「Sentinal」アルミ。ルーフスポイラーと電動ガラスサンルーフが標準となる。
室内は、アリーナトリムに、助手席側ダッシュボード、ドア内張に用いられたメッシュ仕上げのアルミパネルが涼しげだ。電動で調整できるシートは控えめなスポーツタイプとなるが、ことさらドライバーの闘争心をかき立てるモノではない。
「スウェディッシュ・ファーニチャーの流行は、ボルボの販売に影響しましたか?」と質問した記者に、担当者は「よさが理解されやすくなった」と答えていた。「シンプルで清潔感があり、リラックスできる」のがスカンジナビアン・テイストとするならば、V70のインテリアはまさにそれ。特に75周年モデルの内装は、高温多湿の日本の夏には、一服の清涼剤となることでしょう。
ベーシックの140ps版より高回転域でのパワーの伸びを重視した170psNA(自然吸気)ユニットは、ときにゴロゴロした感触を残しつつ、常用域では泰然とエステートを走らせ、しかし回すとボルボらしからぬ(?)スポーティなサウンドを響かせる。トランスミッションには、スムーズなアイシン製5段ATが組み合わされる。
V70のリアサスペンションは、850シリーズの特殊な「デルタリンク」から「マルチリンク」に変更されたけれど、「フラットライド」というよりは、やや鈍い平板な乗り心地は現行モデルでも変わらない。しかも、アニバーサリーモデルは「245/45R17」という、かつてのボルボ車では考えにくいスポーティなサイズのタイヤを履きながら。むやみにドライバーをせき立てない、乗員を緊張させないための、スカンディナビアンによる意図的な味付けなのだろう。
「テクノロジーの進歩を取り込みながらも、デザインのみならず、“走り”の面でも、75年間“ボルボらしさ”はあまり変化ないんじゃないか」。そんなことを考えながら、北九州から本州へと向かった。……いや、リポーターは、ここ10年ほどのボルボ車しか知らないんですけどね。
(文=webCGアオキ/写真=難波ケンジ/2002年4月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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