プジョー206XT Premium(4AT)【試乗記】
『ハッピー、ハッピー、プジョー』 2001.03.14 試乗記 プジョー206XT Premium(4AT) ……199.5万円 プジョー206の1.6リッターモデルに、4段AT車が加わった。いままでは、1.4リッターにしかオートマはなかったのである。そのうえ、1.6リッターユニットはツインカムになって、88psから108psにパワーアップ! 「ニューエンジン+4AT」の206「XT Premium」に、『webCG』記者がハコネで乗った。1.6リッター+4ATで200万円以下
平成不況のおり、7年連続で登録台数を延ばしている輸入車メーカーがある。立ち上がったブルーライオンのバッヂも凛々しいフレンチメーカー、プジョーである。2000年の販売台数は、1万767台。1993年に英国の貿易会社「インチケープ」が日本にプジョーを入れはじめて以来、「初の1万台突破!」と、現在はプジョーが100%出資する日本法人「プジョージャポン」の鼻息は荒い。
快進撃の立役者は、1998年の夏にフランスでデビューし、翌99年5月から日本への輸入が始まったハッチバック「206シリーズ」である。2000年にわが国で売られたプジョー車の約6割を占める。さらに2.0、1.6、1.4リッターのエンジンラインナップのなかで、1.4リッターを積む「XT」(165.0から179.0万円)が全体の約70%。これは、「値段が安いから」というより、日本人の友「オートマチックトランスミッション」がXTにしか設定されなかったから、とプジョージャポンは分析する。ちなみに、1.4リッターモデルでATが選ばれた比率は55%と過半数を超える。
2001年3月、1.6リッターモデルにもオートマ仕様が加わった。3ドア「XS」、5ドア「XT Premium」、どちらも5段MTか4段ATを選ぶことができる。「AT車の導入によって、1.4、1.6リッターモデルの比率が逆転するのでは」と、プジョージャパンの期待は高い。価格は、3ドア(5MT/4AT)=187.0/197.0万円、5ドア=189.5/199.5万円である。
ATでもスポーティ
「XT Premium」の、小ぶりだけれど、やんわりお尻と背中が抱かれるベロアシートに座って走り始める。ATシフターのゲイトは、メルセデス調のジグザグゲイトだ。「ノーマル」「スポーツ」「スノー」と3つのモードが用意され、さらに走行状態によって、9つのプログラムから、最適のシフトスケジュールが選ばれる。
ATのギアチェンジはごく自然。ショックも少ない。ただ、リポーターの嗜好を汲み取っていないせいか、意識してスロットルペダル(ややセンター寄り、つまり左寄りだ)を踏みつけないとキックダウンがきかない。登り下りの激しいハコネの道ゆえ、やがてATレバーは「3」もしくは「2」に入れっぱなしになる。
フロントの1.6リッターユニットは、ヘッドメカニズムのカムが1本増えて、ツインカムになった。最近では、エンジンの改良というと、エミッションコントロール(排ガスの浄化)に焦点が当てられることが多く--もちろん、それはそれで社会的正義ではあるのだが、心情的な盛り上がりはいまひとつ--ライオンマークのフレンチハッチの場合、ちゃんと(?)アウトプットが増大して、最高出力108ps/5800rpm、最大トルク15.0kgm/4000rpmとなった。SOHCのときが88psと13.5kgmだから、スペックを見るだけでグッと力強い。実際、オートマモデルでも、ATシフターを駆使すれば十分「スポーティ」を堪能することができる。ワタシはしました。
お熱いままに
2001年度は、「台数増加よりサービス体制の充実を図りたい」というプジョージャポン。それでも、6月には206のオープンモデル「206CC(クーペカブリオレ)」、01年後半には3リッターV6搭載のフラッグシップ「607」、そして翌2002年に306の後継モデル「307」を日本市場に投入する予定だ。
プジョーが日本で勢力を伸ばした背景には、ニッチブランドとの自覚からか、持ち駒の関係か、少数部族「MTトライブ」を保護してきたことがある、と思う。AT車を導入しても、MTモデルを販売しつづける姿勢を、『webCG』記者は断固!支持したい。拍手ぅ!!
さて、比較のため、1.6リッターの3ドア「XS」5MT車のステアリングホイールを握ってみて、嗚呼、やっぱりマニュアルモデルの方が楽しかった。軽合金ヘッドの「TU5JP4」型ユニットは6000rpm超のレブリミットまで快活に歌い、ドライバーは20psのパワーアップをダイレクトに味わえる。ATモデルより1インチアップの185/55R15のタイヤをもてあますことなく、スロットル操作でテイルを左右に振ってコーナーを駆け抜ける「ハッピー、ハッピー、プジョー」。せっかくホットなクルマなのだから、いわゆる「ギア付き」で乗らないと、もったいないと思います。熱い料理はトルコンで薄めず、お熱いままで。
なお、エンジンのアウトプット増大にあわせ、AT、MTともストッピングパワーが強化され、リアブレーキはドラムからディスクに変更された。
(webCGアオキ/撮影=難波ケンジ/2001年3月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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