プジョー307XT(4AT)【試乗記】
クラス以上の質感 2002.04.19 試乗記 プジョー307XT(4AT) ……262.1万円 プジョーが「2BOX・モノスペース」とよぶ307は、2001年のジュネーブショーでデビューした、同社の主力モデル。VWゴルフや、オペル・アストラ、フォード・フォーカスなど、強豪ひしめくM1セグメントに属する意欲作である。そのベーシックモデル「XT」の5ドアに、webCG記者が試乗した。半年で2409台
2001年3月のジュネーブショーで登場した、プジョー「306」の後継にして同社の中核モデル「307」が、翌年10月にわが国でのデビューを果たして約半年。しかし話題満載人気沸騰青獅子歓喜の観があった小粋な妹分「206」と比較すると、どうも影が薄い。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「オペル・アストラ」、「フォード・フォーカス」など、強豪ひしめく「M1セグメント」に殴り込みをかけるため、気合いを入れて開発されたハズなのに……。なぜ?
プジョージャポンは、年間目標販売台数6000台と期待をかけ、価格をゴルフの2リッターモデル「CLi」と同じ、249.0万円と挑戦的な設定とした。ミニバン並に広い室内空間は、ミニバン大流行のニッポンで人気が出そうなのに……。再びナゼ?
プジョージャポンの広報氏によると、販売開始から2002年3月末までの半年間、307は2409台の販売だそうである。このままだと、年間目標の6000台を下まわりませんか? というイジワルな質問に「プジョージャポンとしては、順調という見方をしています」と落ち着いたお答え。上述したようにM1セグメントは強力なライバルが多く、206のように急速な浸透は難しいということだ。「長い目で育てようと考えています」。
お客様からの不平不満はありましたか? との問には「女性のお客様のなかには、乗り始めにサイズが大きく感じて不安だ、とおっしゃる方もいます」。実は私もそう感じました、と勢い込んで同意すると、「でもすぐに慣れるそうですよ」とあっさりフォローされました。
ゴルフよりひとまわり大きめ
試乗車の「XT」は、5ドアのみのベーシックモデル。シート生地はベロア、トリムにウッド調パネルがあしらわれる。ちなみに同価格の「XS」は、ファブリックシート生地と、メタリックシルバーパネルを採用したクール&スポーティなモデル。上級グレード「XSi」は、レザー内装が奢られる豪華版。タイヤも17インチを履く。
ボディサイズは全長×全幅×全高=4210(+55)×1760(+25)×1530(+75)mm(カッコ内はゴルフとの差)、ホイールベースは2610(+95)mmで、ゴルフよりひとまわり大きい。日本に導入される307のエンジンは、2リッター直4DOHC(137ps/6000rpm、19.4kgm/4100rpm)のみ。これは「406」や「106S16」と同じエンジンだ。トランスミッションは、5ドアは全モデルに5MTと4ATが、3ドアには5MTしかない(!)。ATはシフターを前後してシフトできる、マニュアルモード「ティプトロニック」を搭載。ルノーと共同開発した学習機能を備える「AL4」型で、走行状態に応じて9つのプログラムから、最適なシフトプログラムを選択してくれる。
試乗車のインテリアは、ダッシュボードやシート生地がアイボリーカラーの、受注生産仕様。太陽の向きによっては、光が反射して眩しいこともあるが、室内を明るく暖かい雰囲気に演出し、上品でオシャレだ。他に「シーダー」というグリーンのインテリアも、同じく受注生産で用意される。どちらも追加料金はないから、多少待つ余裕さえあれば、気軽にオーダーできるのが嬉しい。
ミニバン風、だけど……
見た目大きいという印象を受けた307は、乗ってみてもクラス以上の大きさを感じるくらい広い。Aピラーの傾斜はきつめだが、大きなグラスエリアのおかげで圧迫感はなく、「ミニバン並」を謳う1530mmの全高おかげで、頭上スペースも広い。信号待ちで周りのクルマを見わたすと、隣のトヨタ「コロナ」より頭半分以上高めのアイポイント。1760mmもある全幅のおかげで、広々“感”でなく、実際広い。ショートノーズのせいでボンネットが見えず、見切りが悪いと感じるけれど、広報氏のいうとおりしばらく乗っていたら慣れた。運転席は50mm動くハイトアジャスターが備わるので、ドライビングポジションを心配することはなさそうだ。
後席も広い。身長176cmのレポーターに前席を合わせて、その後ろに座ってみたが、膝前に拳1つ分以上の余裕がある。ヒップポイントは前席よりやや高く設定され、前席の頭越しに前が見える。頭上にも余裕があるから閉塞感とは無縁。ミディアムクラスのセダン以上に、快適に移動できそうだ。
荷室は341リッター(VDA方式)。床面はフラットだが、ホイールハウスの張り出しで狭まっており、見た目ほど広くはない。後席は2:1のダブルフォールディングができ、倒せば奥行き1400mm以上の荷室になる。
エンジンに不足は感じなかった。低回転から十分なトルクで、しかも静か。広い運転席でユッタリドライブしていると、2リッターハッチバックに乗っていることを忘れるくらい。100km/h巡航時のエンジン回転数は2600rpm前後と平均的なものだが、遮音がよく、乗り心地もいいので、クルージングは快適。追い越し時に目が覚めるような加速を披露する、こともないけれど。
ちょっと気になったのは、トランスミッション。日本車のそれほど巧妙でないから、どうも減速Gがギグシャクしがち。ルノー経由で日産系列の技術を導入するといいんじゃないでしょうか。見た目も乗り味も上質なだけに、もったいないと思う。
結局、3日と160kmほど307と一緒に過ごした、個人的な感想を述べると、いまひとつ好きになれなかった。慣れるとはいえ、絶対的には大きいし、広いのはいいけれど、ミニバンあふれる日本では、むしろセールスポイントにはしにくい、と感じた。
地に足がついた施策でグングン業績を伸ばしているプジョー。ちょっと残酷な言い方だけれど、販売台数1万台余では結局ニッチブランドである。“ファーイースト・マーケット”では、まだまだ便利で広いフランス車より、オシャレなフレンチハッチが求められるということなのだろう。
(文=webCGオオサワ/写真=峰 昌宏/2002年3月)

大澤 俊博
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