プジョー307CCプレミアム(4AT)&S16(5MT)【試乗記】
イメージリーダーにふさわしい 2004.03.30 試乗記 プジョー307CCプレミアム(4AT)&S16(5MT) ……382.0万円/410.0万円 輸入車登録台数4位に上昇した好調プジョーが、新たに日本に導入した「307CC」。電動メタルトップを持つオープンモデルに、『webCG』本諏訪が箱根で試乗した。新たなボディスタイル
日本にオープンカーが増えてきた。様々なクラスで。2003年からわが国に入ったクルマを数えても、「BMW Z4」「サーブ9-3カブリオレ」「MG TF」「フォルクスワーゲン・ニュービートルカブリオレ」「キャディラックXLR」「メルセデスベンツCLK」「スマート・ロードスター」「TVRタモーラ」、国産では「日産フェアレディZロードスター」「マツダ・ロードスターターボ」など。市場ボリュームも大きくなり、購入の選択肢に入ることも自然になっている。かくいうリポーターも、気になるクルマは「BMW Z4」「VWニュービートルカブリオレ」だったりするわけで。
そんななか、プジョーから発表された新しいオープンモデルが「307CC」。スイッチひとつでメタルトップを開閉できる、「206CC」の(体格的に)兄貴分である。プレス試乗会からの帰り道、そのクルマはさっそく私的「気になるクルマリスト」に登録された。
307CCの日本でのラインナップは、「2リッター(137ps)+4AT」の「307CC」と、ハイチューンの2リッター直4(177ps)を5段MTと組み合わせた「307CC S16」に大別される。307シリーズのトップモデルらしく、CCはすべて革シートを装備。販売のメインとなるオートマモデルは、さらにベースグレード「307CC」、ダッシュボードのフェイシア、ドアのアームレストをレザーで覆った「プレミアム」、ナビゲーションシステムが付いた「プレミアムAVN」に細分化される。価格はそれぞれ、360.0万円、382.0万円、412.0万円。「S16」が410.0万円。どれも右ハンドルだが、「フランス車+左ハンドル+MT」信仰者のために、S16のみ左ハンドルモデルの用意もある。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=4380×1760×1435mm。ホイールベースは他の307と変わらないものの、ハッチバックモデルより170mm長く、95mm低くなった。
“CC化”にあたり、フロントバルクヘッドから後ろがまったく新たにデザインされ、ミニバン調の307が、みごとに流麗なクーペスタイルに変身。角度のついたAピラーが自然に丸みを帯びたルーフにつながり、優雅にリアセクションに流れ落ちる。
バスタブにつかって
まずマイルドエンジンの「プレミアム」に試乗することに。すでにハードトップはおろされている。2分割してたたまれるメタルルーフを収納するためと、オープン時にもある程度のラゲッジスペースを確保するため、ボディの延長分は、すべてリアのオーバーハングにあてられた。しかし間延びした印象はなく、最初からデザインされていたようにうまく収まっていると思う。
そのおかげで、クローズド時のトランクルームは広大。350リッター(VDA法)の容量は、なんと307のハッチバック(341リッター)より大きい。カブリオレモードではルーフがラゲッジルーム上半分を占め、204リッターになる。もちろん、荷物は取り出しづらくなる。
ここで気の利いた演出を発見。トランクリッドのオープンボタンはなんとエンブレムの「307」の「0」に組み込まれている。ニクいっ! こういうマネは、ドイツ車には見られない(だろう)。
オープン状態では、乗り込み時にぐぐっと傾斜したAピラーが顔に突き刺さりそうだ。しかし、実は気になるシチュエーションは少ないだろう、とリポーターは思った。なぜならこの日本では、オープン状態で乗り込む(つまり屋根を開けたまま駐車する)ことは稀だと考えるからだ。
となれば、307CCはあくまで全高1435mmのクーペ。ハッチバックより95mm低められたとはいえ、「マツダRX-8」(全高1340mm)、「日産フェアレディZ」(同1315mm)などと比べると断然高い。室内高にも余裕がある。
ルーフが低くされたのにともない、室内高確保のため、座面が40mm低くされた。これが功を奏し、ドライビングポジションは絶妙。ちょうど肩までがキャビンに埋まる。オープンにしていると、露天風呂につかって「いい湯だな〜」の感覚に近い。
フロントガラスの傾斜にあわせて、ちょっとシートも寝かし気味にしたくなる。オープンカーのドライビングポジションは、これぐらいでもいいかもしれない。
フル4シーターを謳う「307CC」のリアシートに座る。ヒザ前はさすがに余裕があるとは言い難いが、左右広々。オープンにすればもちろん頭上も広々だ。ルーフを閉めると、身長176cmのリポーターでは、頭上がギリギリ。これもクーペと考えれば、よくある話だ。気にならない。
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ダイナミックなアクション
プレミアムのインテリアは革張り。目の前のダッシュパネルにもレザーが奢られ、くっきりと見えるステッチが上質感を醸し出す。アルミ素材のトリム、メーターのリング、ペダルや、ホワイトメーターなど、よく「スポーティ」という言葉が続きがちな装備だが、このクルマでは「エレガント」に使われる。ドアを開け、内装が目に入ったときの満足感は格別だ。
ジマンの電動メタルトップルーフを試してみることに。トンネルコンソールに設けられた開閉スイッチを押し続ければ……アレ、閉まらない。
トランク内のトノカバーを閉めていないと動かない仕かけがあった。ルーフ格納時に、荷物をつぶしてしまうのを避けるためだ。
気を取り直して再度試すと、サイドウィンドウが全開になった後、ルーフがトランクルームから出現した。メタルトップの格納動作はダイナミック。約25秒という特に早くないアクションは、外から見ると圧巻である。見ていなくても、動作中の音やボディの揺れが、アクションの大きさを物語る。
ちなみに、ルーフの開閉は10km/h以下なら走行中でも可能。信号待ちで間に合わなくてもとりあえず大丈夫だ。とはいえ、これを走りながらやっていたら、「バカみたい」と笑われるかもしれないが。
再度、メタルトップをおろす。
もう一台の試乗車「S16」もオープンにして、走り出した。前を走る307CCのテールを拝みながら走行。顔がほころぶ。テール部分の造形に目をひかれた。なかでもLEDランプを使ったストップランプのレイアウトが美しい。しかしルーフを閉めたときのリアビューは、ちょっとずんぐりむっくりになってしまい、流麗なフロントデザインとは異質。電動メタルトップの構造を優先すると、こうなってしまうのはしかたがないとはいえ、この後ろ姿は少々残念に思う。オープン時はいいんだが……。
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見られ得
スピードを上げると、Aピラー傾斜角の恩恵で、風の巻き込みがすくないことに気が付く。プレミアムの1490kgのボディを137psで引っ張るのは山道では少々厳しいが、遅いわけではない。ATは各ギア比が離れていて、ここハコネでは、いまひとつうまいギアが見つからないが、まあノンビリ走れということか。ステアリングホイールにティプトロの変速スイッチがないことからも「どうぞ積極的にシフトしてください」というクルマではないことがわかる。
S16に乗りかえると、当たり前だがエンジンパワーの違いは明らか。かつ5段MTという組み合わせは、山道でも楽しい加速が味わえる。可変バルブタイミング機構を持ちコンプレッションを上げたエンジンは、プジョーのホッテストハッチ「206RC」から受け継いだもの。気持ちよくまわるエンジンと排気音に心躍る。
サスペンション形式は、前マクファーソンストラット、後がトーションビーム。307CCの足まわりは、基本的に「307SW」と同じスペック。S16のみ、スポーティチューニングが施される。タイヤは、205/55R16を標準に、スポーティなS16は205/50R17を履く。
ストロークがゆっくりで、バタバタしないあたり、走りの方もエレガントだ。電動の可変パワーアシストステアリングも適度に重く、違和感がない。S16はスポーティとはいえ、リポーターには、さほど足まわりに違いを感じさせなかった。ベーシックバージョンの足まわりのレベルが高かったともいえる。
試乗会の日は気温が低く、箱根の山道は寒かった。307CCには、シートヒーターが(オプションでも)装備されない点がウィークポイント。S16の、それも「左ハンドル」だけ標準装備(価格は同じ)されるのは、右ハンドル化における弊害なのだろう。ここはいずれ改善されるのを期待するしかない。
こんなおしゃれなクルマは見られ得。山道でこそこそ(?)飛ばすより、街なかをどうどうと走っている方がいいと思う。個人的には「プレミアム」以上の革内装をおすすめする。シートヒーターがつかないが、寒さはシャレた上着でまかないたい。
日本でのライオンエンブレム増加の立て役者「206」は、プジョー全体の約半数の売り上げ台数を占めるという。そのうち15%が「CC」だというから、「307」のCCにも期待がかかる。2004年のWRC(世界ラリー選手権)参戦車両は307CCを模して製作されており、露出貢献度も高い。プジョーは、307CCを「プジョーブランドのイメージリーダー」と持ち上げる。リポーターはその言葉に大いにうなずいた。
(文=webCG本諏訪/写真=峰昌宏/2004年3月)

本諏訪 裕幸
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