プジョー307フェリーヌ2.0(FF/4AT)【ブリーフテスト】
プジョー307フェリーヌ2.0(FF/4AT) 2006.02.13 試乗記 ……266.0万円 総合評価……★★★★ 2005年秋にマイナーチェンジを受け、内外装がリフレッシュされた「プジョー307」シリーズ。「フェリーヌ」の名に改められたハッチバックの2リッターベーシックモデルに試乗した。
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受け継がれたプジョーらしさ
2005年マイナーチェンジを受けた「プジョー307」は、ハッチバックが「フェリーヌ」と呼ばれるようになった。そのフェリーヌには、4つのグレードが用意されている。試乗会と、その後個別に借りた広報車を合わせて、僕は4グレードすべてに乗った。その結果をひとことでいえば、ここで紹介する「フェリーヌ2.0」は4台中4番目という印象だった。
フランス車は、日本車や一部のドイツ車のように、上のグレードになるほどすべてが良くなるという乗り物ではない。ベーシックグレードがいちばんバランスがとれていたり、スポーツグレードなのに快適だったりすることが多い。307フェリーヌにも、同じことが当てはまる。
個人的な印象では、1.6リッターエンジンを積むエントリーグレードの「フェリーヌ」と、177psの最高性能版「フェリーヌ・スポーツ」のバランスが抜きんでていた。フェリーヌ2.0と同じエンジン、トランスミッションを積む「2.0S」の乗り味も悪くない。今回乗った2.0の印象だけがイマイチだった。
クルマの個体差があったのかもしれないが、サスペンションとタイヤ(2.0は16、2.0Sは17インチで銘柄も異なる)のマッチングが良くないせいかもしれない。
ただ、新型307全体で見れば、プジョーらしさがかなりアップした。このクルマがデビューした当初は、ドイツ車のような乗り心地に戸惑ったものだが、新型は独特のしなやかさを味わえるようになった。それでいて、背の高いボディが生み出す開放的で使いやすいキャビン、安定感と楽しさを両立させたハンドリングは、新型にも受け継がれている。
強力なライバルがひしめくこのクラスの輸入車の中でも、トータルバランスの高さではトップに位置するのではないかと思えた。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2005年11月にマイナーチェンジを受けて内外観が一新された「307」シリーズ。エクステリアは、「407」に代表される新世代プジョーのアイデンティティと、猫科動物の精悍さをテーマにしたというもの。ハッチバックモデルには「フェリーヌ」(猫科の動物という意味)という名称が与えられた。
フェリーヌのエンジンは、1.6リッターと2リッターの直4。1.6リッターのベーシックモデル「フェリーヌ」にはじまり、2リッターは、「フェリーヌ2.0」とスポーティな「フェリーヌ2.0S」そして、177psのハイパフォーマンスエンジンを搭載する「フェリーヌスポーツ」がある。
トランスミッションは、5段MTのみとなるスポーツ以外は4段ATが設定され、フェリーヌとフェリーヌ2.0Sには5段MTも用意される。
(グレード概要)
テスト車は2リッターのベーシック版。エントリーグレードたる1.6リッターのフェリーヌに紫外線&熱線カットフロントガラスや革巻きステアリングホイール&シフトノブ、16インチホイールなどが追加装備される。
一方、2リッター上級モデルに設定されるEPS、キセノンヘッドランプ、ヘッドランプウォッシャーなどがない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
とくに豪華でも個性的でもないが、シンプルでクリーンなデザインは好ましく、あるべきものがあるべき場所にあるレイアウトは使いやすい。インパネの高さが低く抑えられているので、開放感もある。マイナーチェンジで大きく変わったのはオートエアコンで、このクラスではめずらしく、全グレードともに左右独立制御となった。センターコンソール周辺に収納スペースが多いのはプジョーの長所のひとつ。
(前席)……★★★★★
フェリーヌとこのフェリーヌ2.0は、ファブリックシートになる。見かけはオーソドックスだが、クッションには厚みがあってやさしく身体を受け止め、ピシッと張ったシートバックは上半身をしっかり受け止めてくれる。何時間乗っても疲れないどころか、いつまでも心地よい。コーナーでのサポート性能も不満なかった。
(後席)……★★★★★
デビュー直後はこのクラスでトップだったレッグスペースは、いまでは平均レベルになったが、ルーフの高さを活かしたヘッドスペースの余裕は、依然として群を抜いている。しかも前席に負けず劣らず、シートのデキがすばらしい。角度、高さ、クッションの固さやシートバックの張りなど、どこをとっても申しぶんない。ドアの開口部が大きいことも評価できる。
(荷室)……★★★★★
インパネ同様、とくに上質な仕立てでも特別な仕掛けがあるわけでもないが、シンプルなぶん使いやすい。フロアは低く、左右のサスペンションの出っ張りは最小限で、全高の高さを活かして深さがたっぷり取られているなど、容量はしっかり確保されている。6:4分割のリアシートが低くフラットに畳めるダブルフォールディング方式なのも、長所といえる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
エンジンは吸気側にVVT(可変バルブタイミング機構)を装備して、トルクアップを図った。おかげでいままでと同じ4段ATとの組み合わせでも、発進や追い越しの際の力強さがアップしており、1名乗車では不満のない加速が手に入った。2リッター4気筒としては吹け上がりはなめらかで、上まで回すのが心地よいエンジンでもある。ATは、試乗車はシフトショックが気になったが、別のクルマではスムーズな変速をこなしてくれた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
マイナーチェンジでプジョーらしいしなやかさを手に入れた307フェリーヌだが、試乗した2.0はやや印象が異なり、とくに6km/h以下では細かい上下動が目立った。高性能グレードのスポーツのほうがまろやかに感じたほどだが、それでも旧型の同等グレード「XS」のような、ガチガチという印象ではない。高速道路ではレールに乗ったような直進安定性をみせながら、ひとたびステアリングを切ればスッとノーズをインに向ける軽快なハンドリングは、プジョーならでは。こちらはマイナーチェンジで切れ味がマイルドになった感じがする。フェリーヌ(1.6)と2.0にはESPが付かないが、基本的なポテンシャルが高いおかげで、それが不満に思えることはなかった。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2005年12月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前) 205/55 R16(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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