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【スペック】GLK350 4MATICブルーエフィシェンシー:全長×全幅×全高=4536×1840×1669mm/ホイールベース=2755mm/車重=1845kg/駆動方式=4WD/3.5リッターV6DOHC24バルブ(306ps/6500rpm、37.7kgm/3500-5250rpm)(欧州仕様車)

メルセデス・ベンツGLK350 4MATICブルーエフィシェンシー/G63 AMG【海外試乗記】

メルセデス・ベンツの本流 2012.06.17 試乗記 渡辺 敏史 メルセデス・ベンツGLK350 4MATICブルーエフィシェンシー(4WD/7AT)/G63 AMG(4WD/7AT)

コンパクトで新しい「GLKクラス」と伝統のフラッグシップモデル「Gクラス」、内外装がリファインされた2台のSUVに試乗。その概要と走りをドイツからリポートする。

上質な道具……GLK350 4MATICブルーエフィシェンシー

メルセデスにとっては最もコンパクトなSUVとなる「GLKクラス」。いかにも日本でウケそうなパッケージながらライバルの後塵(こうじん)を拝している感が否めない、その最大の理由は、設定が左ハンドルのみというところにある。

4MATICのドライブトレインのレイアウト上、右側にステアリングユニットを取り回すことができない。つまりそれは構造上の問題であって、インポーターの意向はまったく含まれていない。ちなみに、日本と同じ左側通行のイギリス市場では右ハンドル化された廉価版のFRモデルを投入し、一気に販売を伸ばしたという。さらに生産を開始した中国での売れ行きも上々……と、メルセデスにとってGLKクラスは、なくてはならない販売の柱として着々と成長しているようなのだ。

とはいえ、現状のラインナップやライバルの動向を鑑みると、日本市場においてGLKにFRの右ハンドルモデルを追加するというシナリオはどうにも描きにくいわけで、日本におけるGLKクラスはドライブトレインが次世代以降へと進化しない限り、左ハンドル一択のまま頑張らざるを得ないことになる。みすみす商機を逃しているインポーターとしてはじくじたる思いもあるはずだ。
というのも、僕が見るにGLKクラスには、日常プラスαを賄うコンパクトSUVとして他にはない美点がある。ひとつは見切りの良さや小回り性能からくる取り回し。もうひとつは過度にアジリティーを追求することなく、地に根を張った落ち着いたライドフィール。いずれも派手さはなくも永きを共にするクルマとしては重要な性能といえよう。

マイナーチェンジを受けたGLKクラスは、最新のメルセデスのモードに沿って内外装がアップデートされた。特に全面的に手が加えられたインテリアは質感も大きく向上し、直近にフルモデルチェンジしたライバルに対しても、静的な商品力を互角としている。

ダッシュパネルにはアルミニウムトリムを採用、シルバーのエアコン吹き出し口が配される。
ダッシュパネルにはアルミニウムトリムを採用、シルバーのエアコン吹き出し口が配される。 拡大
 
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リアコンビネーションランプには光ファイバーとLEDを採用、デザインも変更された。またアンダーガード(クロム仕様はオプション)とクロムメッキのエグゾーストエンドも新しくなった。
リアコンビネーションランプには光ファイバーとLEDを採用、デザインも変更された。またアンダーガード(クロム仕様はオプション)とクロムメッキのエグゾーストエンドも新しくなった。 拡大
メルセデス・ベンツ Gクラス の中古車

美点は走りの基本の高さ

設定されるエンジンとしては唯一のガソリン仕様であり、日本導入モデルともなる「GLK350」のエンジンは、グレード名が示す通りこれまでの3リッターから最新の3.5リッター直噴ユニットへと変更され、一気に70ps以上のパワーアップを得ることとなった。日本仕様での燃費は不明ながら、欧州仕様でのCO2排出量は199g/kmと優れた数値を示している。アイドルストップ機構も加えられるなど日本での実効性も高いことを織り込むと、恐らく従来比で2割程度は実用燃費を向上させていることだろう。

それでも新しいGLKクラスに乗ってみて、もっとも際立つ美点として感心させられるのは、走らせることにかかわるユーザビリティーの高さだ。走りだしから速度のコントロールが自在なアクセル開度のセッティングやペダルの操作力。切り始めにはじわりと反応し、切り込むほどに“かじ感”の増していく操舵(そうだ)ゲインの設定。無意識のうちにコーナーのRにピタリと決まる舵角や、旋回中の深い回り込みにも素直に反応する切り増しの自在さ。乗員に負担を掛けずしっかり止められる減速Gのコントロール性……。すべてのチューニングには乗員との穏やかな協調が最優先されている。デザインは変われど、素直に四隅を認識できる見切りの良さももちろんそのままだ。

ビッグマイナーで2000カ所以上ものリファインを受けた「Cクラス」のアーキテクチャがベースとなる新しいGLKクラスは、市場性を鑑みてベースラインの車高を20mm落とし、運動性と快適性を高めている。よりスポーティーさを強調したい向きにはスポーツパッケージ、悪路走行を想定して地上高を稼ぎたい向きにはオフロードパッケージを選ぶことで用途にあったアシが与えられる仕組みだ。しかしノーマルのセットアップは走り込んでも流しても絶妙のポイントに落とし込まれているから、ほとんどのユーザーにとってはオプションを選択する必要はないだろう。
時にCクラスをも上回るのではと思わせる走行時の静粛性は、音源となる路面との距離が遠いSUVゆえの特性もさることながら、フリクション低減が図られたという4MATICドライブトレインのリファインも効いているかもしれない。

さまざまなアプローチが乱舞するセグメントにあって、わかりやすさに踊らされることなくしっかりと基本を押さえた作り込みこそがその個性であり長所。百花繚乱(りょうらん)の中にあって、GLKクラスは上質な道具というメルセデスの本流を揺るがすことなく守り続けている。商機が限られている点は返す返すも残念だが、真っすぐなクルマであることは間違いない。

 
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ボリューム感を強調したフロントマスク。
ボリューム感を強調したフロントマスク。 拡大
前後の短いオーバーハング、垂直なフロントエンド、細いルーフピラーなどが、新しい「GLKクラス」の特徴。
前後の短いオーバーハング、垂直なフロントエンド、細いルーフピラーなどが、新しい「GLKクラス」の特徴。 拡大
 
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味わいの濃さが魅力……G63 AMG

そもそもはミリタリースペックの高機動車として開発され、民生用としての登場から数えても33年の月日がたつという「Gクラス」は、昨今の市場において、ライフスタイルカーとしての側面を強めてきた。
その流れはなにも日本の大都市に限ったものではなく世界的に認められる兆候だという分析をもとに、Gクラスは少なくとも2015年までの継続生産が決定している。血道をあげてCO2を削(そ)ぎ落とす一方でこのクルマを残すという決断は、メルセデスにとってもこのクルマがアイコニックな存在であることを意味しているのだろう。

それでもGクラスのマイナーチェンジに織り込まれたのは環境性能の向上だ。試乗した「G63 AMG」はレギュラーラインも含めた全てのGクラスにおいて、約4割の販売台数を担うという主力モデルとなるわけだが、そのパワートレインはスタート&ストップシステムが組み込まれた最新のジェネレーションに刷新され、パワーとトルクは前型比で1割近い向上となった一方で、CO2排出量は13%の低減となっている。

Gクラスの魅力のキーである武骨で事務的なエクステリアデザインに関しては、当然ながら大きな変更は受けていない。ライト下にはLEDデイライトが配されるほか、ルーバーの意匠がレギュラーラインとAMGモデルとで分けられ、AMGモデルはバンパーが冷却グリルの設けられた専用デザインとなり……、という程度である。
対して商品性を高めるべく大きく手が入れられたのがインテリアで、完全にデザインが改められたダッシュボードやセンターコンソールには、新型「MLクラス」で用いられた上質なフィニッシュのエレメントが随所にちりばめられる。インフォテイメントはコマンドシステムでコントロールする最新の世代へと刷新され、加えてディストロニックプラスやサイドブラインドアシストなどの先進安全装備もふんだんに採用された。

一方で前・中・後で任意設定が可能なトリプルデフロックを含む、フルタイム4WDのドライブトレインに変更はない。メルセデスが言うところの「ロバストネス&ユニークネス」、つまり破格の堅牢(けんろう)さがもたらす個性というGクラスの人気をつかさどるキーファクターには一切の手を加えていないというわけだ。
Gクラスはもはや静止時の感触からしてすべてのメルセデス……というよりも、すべてのクルマと印象を異にしている。カチャリと硬質なリアクションをもつドアの開閉感ひとつでウットリと酔わされるクルマも今どきはないだろう。室内から見渡す景色も定規でひいたように真四角に切り取られ、短いダッシュボード越しにも真っすぐなボンネットが広がりと、座っただけでも非日常的な気分が味わえる。

圧倒的な重厚感

有り余るほどの馬力をフレームシャシーに支えさせるだけあって、G63 AMGの乗り心地はサルーンのように洗練されているとは言い難い。ピッチングは自重も使いながらなんとか収めるも、細かな横揺れ感が常につきまとい、総じて普段遣いにギリギリで許容できるという感じだろうか。コーナーもその名に恥じない程度の振る舞いはみせるが、常にアクセルを踏んで駆動力を掛けていないとアンダーステア的な傾向をみせるなど、癖もそれなりには残っている。

が、それらはあくまで今日的な高級車と比べての印象。逆に言えばこれ以上の洗練を望むことで、このテイストが和らぐ方がGクラスにとって損失であることは言うまでもない。ともあれフィードバックの全体を支配するのはすさまじい物量が織りなす剛性感というか、重厚感である。ちょっとした重機でも動かしているようなドライブフィールは濃密の極みで、これに慣れるとあまたのプレミアムSUVがはかなげにすら見えてくる。

Gクラスに乗るという意味合いの多くは、洗練されたハイライフの中にミスマッチを取り込むような感覚なのだと思う。しかしこのクルマの魅力の芯は当然ながら一過性のものではない。むしろそんなブームにもまるで動じない味わいの濃さにこそ、クルマ好きは普遍的な魅力を見いだせるはずだ。なんにせよ、こんなぜいたくな選択肢が残ってくれていること自体、今の時世には貴重な話である。セレブさまの気まぐれとメルセデスの粋な計らいに感謝しよう。

(文=渡辺敏史/写真=メルセデス・ベンツ日本)

 
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【スペック】G63 AMG:全長×全幅×全高=4769×1855×1938mm/ホイールベース=2850mm/車重=2550kg/駆動方式=4WD/5.5リッターV8DOHC32バルブ(544ps/5500rpm、77.5kgm/2000-5000rpm)(欧州仕様車)
【スペック】G63 AMG:全長×全幅×全高=4769×1855×1938mm/ホイールベース=2850mm/車重=2550kg/駆動方式=4WD/5.5リッターV8DOHC32バルブ(544ps/5500rpm、77.5kgm/2000-5000rpm)(欧州仕様車) 拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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