第239回:【Movie】目指せ! 古来の自由の大地 大矢アキオ、捨て身の路上調査員「サンマリノ共和国編」
2012.04.06 マッキナ あらモーダ!第239回:【Movie】目指せ! 古来の自由の大地大矢アキオ、捨て身の路上調査員「サンマリノ共和国編」
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「タックスヘイブンの国」は意外に……
実際に走っているクルマをカウントすることで、本場ムードを味わっていたただく「捨て身の路上調査員」シリーズ、今回はイタリア半島にある小国「サンマリノ共和国編」である。
サンマリノの国土面積は約61平方キロメートル。熱海市とほぼ同じだ。人口3万1887人(2010年)は渋谷区の6分の1以下で、国民全員に号令をかけて甲子園球場に誘導しても1万6000席近い空き席ができる計算になる。
西暦301年に石工職人マリーノがローマ皇帝のキリスト迫害から逃れてきたのをきっかけに、この地に人が集まってきたのが国の始まりとされている。共和国の形成は13世紀中盤である。日本の鎌倉時代にできた国家が、今日まで続いていることになる。
小国が独立を保てた理由は、歴史をひもとけばわかる。
まずは15世紀中盤。近隣にあるリミニの貴族マラテスタ家からの侵略をローマ教皇らと組んで防いだことで、現在の国境が策定できた。
ナポレオンから「領土を拡張してあげる」と提案をもちかけられたときも、サンマリノは「今の領土で十分」と答えたことから彼はひどく感動し、結果として独立が保たれる。さらに19世紀にイタリアで統一運動が起きたときは、運動の志士ガリバルディをオーストリア軍からかくまった。おかげで後年統一イタリア王国が誕生した際は友好条約を締結することができ、近代におけるサンマリノの独立が決定的になった、というわけだ。
今回は首都サンマリノで、往来するクルマのブランドを延べ20分にわたり調べてみた。動画では、年に2度(4月1日と10月1日)行われる執政の交代式の模様とあわせてご覧いただこう。
以下がその結果である。動画内ではイタリアはじめ他国ナンバー車もあわせて声で紹介しているが、カウントはサンマリノナンバーだけとした。
・フォルクスワーゲン:10台
・フィアット:8台
・オペル、フォード、アルファ・ロメオ、トヨタ:各3台
・スズキ、BMW、メルセデス・ベンツ、ランチア、アウディ、ボルボ:各2台
・ルノー、シボレー、クライスラー、セアト、プジョー、シトロエン、ヒュンダイ、キア:各1台
イタリアにやってくるサンマリノナンバーのクルマというと長年高級車が多く、ボクなどは見かけるたび「さすがタックスヘイブン(租税回避地)の国だな」と感じたものだ。
しかし今回あらためてサンマリノナンバーのクルマを数えてみると、コンパクトカーの多さが目立った。
地元の商店主たちが異口同音に証言するように、主要産業のひとつである観光の落ち込みや、EU諸国による金融体制への締めつけによる経済悪化がクルマにも反映されていることは間違いない。加えて地形上、山が多く、結局のところ少なくとも日頃使うクルマはコンパクトカーのほうが機動性に優れていることは事実なのだろう。
それはともかくサンマリノは、警察組織はもとより郵便、電話から自動車の登録まで自国の機関による。携帯電話もしかりだ。たとえボクのようにイタリアの携帯を持っていても、サンマリノの通信事業者の電波をうっかり拾ってメールなどやりとりしてしまうと、ちゃんとローミング料金が適用されてしまう。現代のテクノロジーにおいても、しっかりと「独立国」なのである。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
大矢アキオ、捨て身の路上調査員「サンマリノ共和国篇」(前編)
大矢アキオ、捨て身の路上調査員「サンマリノ共和国篇」(後編)
(撮影と編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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